【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜 作:レッドファイル
雄英ヒーロー科一年合宿所。その裏には緑一面の景色が広がり、避暑地として有名だった。
が、その森は、既に見る影もなかった。
森の一部が焦土と化し、まさに地獄絵図といった森林。ウェイビッグによる消火で多少はマシにはなったが、未だ赤い炎は揺ら揺ら燃えている。
敵の襲来から数十分経った。にもかかわらず、その全貌を雄英側は把握できていない。
その原因は合宿所への遊撃。相澤やブラドキングを含むプロヒーローは、合宿所を守ることに時間を取られ、森の中に進むことを阻まれていた。プロである彼らが、特に相澤がなぜそこまで手こずるのかというと、
蟲やアンドロイドという、相性最悪の戦法で攻め入られていたから。
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暗闇が支配する森の中は、生徒と敵が入り混じった危険区域。各ポイントでは戦闘が開始されていた。当然、麗日達も。肝試しというレクリエーションが、女敵との戦闘に成り代わっていたのは不運と言いようがない。
が、その戦いは打ち切られる。
「おい、集合が入った!行くぞ!」
「なんであんたに命令されなきゃいけないのよ」
身体の各部に赤い装甲を纏う女は、隣の女性敵に撤退を指示する。命令を受けた女性も口では反抗するが、手に持った道具を紫色のポーチに戻す。
「待て!」
「ダメよお茶子ちゃん!ここは相手が引いてくれたと考えるべき。まずは相澤先生達のところに報告よ」
「けど!」
麗日が蛙吹に反論する間に、敵は背中のジェット機、又は不可思議な力で空を飛んでいく。やりきれない顔で麗日が宙を睨むと、銀髪の女性敵が吐き捨てる。
「じゃあね?子猫ちゃんたち。こんなぬるま湯の後進国で楽しいヒーロー生活を♪」
笑顔でひらひらと手を振って
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所変わって断崖周辺。ベンと滉太は地面に埋まったマスキュラーを後目に歩き出す。
よろけながら足を上げるベンを滉太は心配する。肩を貸そうにも、彼はいらないと払いのける。
「お、おい。大丈夫か?」
「は、はん。こんくらいでヒーローが…くたばるかってんだ。僕は宇宙を救う…ベン=テニスン様だぞ?」
軽口を叩いているが、ベンの体は満身創痍。片腕は折れており、右腕はなんとか動かせる程度。昼から続く個性特訓と、フォーアームズを超える敵、そして未知のエイリアンへの変身と、彼の体力は限界に近かった。
(せめてホバーボードがあればなぁ…それか…グウェンに魔術教えてもらえばよかったかな…)
血が頭に回っていないのか、思考にいささか靄がかかる。そんな彼の目に、赤い光が飛び込んでくる。藪の中で、鈍く光る光点。
「…危ない!!」
滉太の手を取りその場に伏せる。
彼らの頭があった場所を光線が通過する。
そして林の中に吸い込まれると、一拍おいて爆ぜる。
BOOMM!!!
林の中で閃光が走ったかと思うと、木々はメラメラと炎を宿す。
急いで顔を挙げ周囲を警戒する。すると、足元にコロコロと泥団子が転がってくる。
何がなんだがわからない滉太。それは、足元の泥団子が、2匹の魔獣へと変貌したから。紫線が何本も入った魔獣は、バウバウと吠えながら彼らを襲う。
不意を突かれたベンは瞬く間にマウントを取られる。彼の視界は魔獣の顔で埋め尽くされ、自身の顔には涎ともいえる土くれが垂れてくる。
「くっそぉ!!どけ!きも泥ペット!」
足を相手の腹に当て、思いっきり蹴り飛ばす。
「グウェンがワイルドマット嫌いな理由ってこれかな!?くっさ!!」
涎代わりの土くれはなぜか異臭を放っている。すぐさま隣の滉太を引きつれて、銃器飛び出す藪とは反対方向へ逃げる。しかし、
BOYONN!!
「ぐえ!」
今度は、柔らかい何かにぶつかる。
それは異様にぬめりを帯びている。滉太が見上げると、そこには目の真っ赤な蛙の顔が。
「うわぁぁぁ!!!」
全長3メートルもの巨大蛙を見て驚かないわけがない。ベンはフリーズする滉太の手を取り走る。なぜベンが冷静なのかというと理由は簡単。
会ったことがあるから。
「はぁ!はぁ!はぁ!」
ベンの頭の中は混乱で渦巻いていた。
なぜ?彼らが?
「いで!」
足がもつれ転んでしまう。すぐに立ち上がろうとするも、足になにかが絡みついて離れない。
足元を確認すると、オレンジ色の縄が彼の足に巻き付いている。
縄は意思を持っているかのように、彼の体を引っ張り上げ、投げ飛ばす。
「うわぁぁ!」
GGON!!
勢いよく背中を打ちつける。
地面に項垂れているベンの目に、黒い影がユラユラと伸びてくる。その数は1つではない。
朱色の縄は滉太を洲巻にする。ギリギリ見える彼の目は、驚愕と恐怖を訴える。
敵を確認して、ベンはいら立ちを口をにする。
「っ…!ったく…ほんと、今日は最悪の日だ…」
予想外。本当に予想外だった。ケビンの襲来。マスキュラーという、エイリアンDNAを駆使した敵。そして、
いつか自身が倒した敵たち。
無様に倒れ込むベンの前に現れたのは幾人の敵。
真ん中に陣取っているのは鋼鉄の鎧を着飾った男性だった。なびく赤いマントは正に騎士といった風貌。プラチナの仮面のせいで、表情を伺うことはできない。だが、その声色はどこか嬉しそうだ
「やあ、初めましてベン=テニスン」
「ああ…出来れば会いたくなかったね。イカレタ中世の騎士ごっこ集団には!」
「ずいぶんな言い草だ。
ふふふ。既にボロボロの君に対して、これ以上何かするつもりはないんだがね。私の仲間たちはそうではないようだ」
大げさに腕を振り、両側に並ぶ仲間を見せつける。
囚人服を着ている巨漢。
その彼と同じ肌色でありながら、オレンジ色髪の毛を携える女。
未知の技術が垣間見えるアーマーを身にまとう女性強盗。
巨大な牛蛙に乗ったマッドサイエンティスト。
紫色のローブに、鈍く光る銀髪の魔女。
騎士は諸手を上げ、高らかに紹介する。
「見るがいい!ネガティブ10だ!!」
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数か月前、ベンはアメリカで職場体験を経た。祖父のマックス、従妹のグウェンともに、敵と戦い、悪事を働いた者たちに裁きを与えた。
サーカスで観衆の幸福感情を吸い取り、人々を鬱へと誘い金儲けをするもの。
偶然手にしたエイリアンテクノロジーを利用し、警察やヒーローに復讐していたもの。
狂気の実験の末、遺伝子改造動物たちで世に自分の有能さを理解させようとしたもの。
催眠術で民間人に盗みを働かせたもの。
“魔術”といわれる、個性とは異なる能力で永遠を手にしようとしたもの。
蟲を操る個性で、不法に土地を占拠していたもの。
多くの敵を一週間で退治した。その中で、最も異質だったのが永遠の騎士団と呼ばれるマフィアだった。
エイリアンテクノロジーの存在を知り、それらのために犠牲を惜しまない犯罪組織。元々マックスが捜査していたのだが、ベンの助力の元、その組織は反壊滅状態まで追い詰められた。
その復讐のため、彼らの長は海を渡った。ベンの破滅を願う者達を、監獄から引き連れて。
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ネガティブ10という名前を聞き、すぐさまベンは噛みつく。
「なにがネガティブ10だよ!ボクらに負けたやつを並べてさ!それに、10人いないじゃないか!」
最もなツッコミだが、騎士は肩を揺らしながら答える。
「おっと。それは短絡的な言葉だ、テニスン。君の先生たちはなぜ助けてくれないと思う?」
「…!?そんな…まさか!」
「ああ。君の思う通りさ。今君たちの宿には、私の部下ともう一人が向かっている。それに、この森の要所にも幾人かね」
低く重厚な声が仮面の中から聞こえてくる。
ウォッチを見るが、当然赤いまま。時間を稼ごうにも、滉太と逃げることは不可能だろう。
「…」
「さあ、オムニトリックスを渡せ、ベン=テニスン」
滉太を人質に取られて、身動きが取れないベン。そんな彼に対し、巨漢は近づいて容赦なく拳を振るう。
「ぐう‥!」
いささか血色の悪い巨漢の名はサムスカル。“怪力”の個性の持ち主で、あっという間にベンを制圧。ベンの背中に自分の尻を乗せ、のしかかる。
「お前のせいで稼げなくなっちまった…ゾンボーゾのボスはまだ豚箱だ!お前には借りしかねぇ!」
「あ…そう?じゃあそのまま貸したまんまにしたげるからさ。とりあえずどけてくれない?」
「ムギ―!利子付きで…お返しだ!!」
怒りをあらわにし、厳つい拳を振り上げる。
余計なことを言ってしまった。さすものベンも後悔。思わず目をつぶる。
が、つぶる瞬間、敵の頭に影が降りる。それに気づいたサムスカルは顔を上げる。見上げた彼の頬には、2人の男女の靴がめり込んでいった。
そして、瞬きする間も無く、蹴り飛ばされる。
DSSIINN!
土埃がもうもうと立つ。けほけほとせき込むベン。
視界が晴れてきたとき目に見えたのは、半分白目をむいた緑髪の男の子と風圧で橙髪がぼさぼさになった女の子。
彼らは口を揃える。
「「ベン(君)!!救けに…来たよ!!」」
「イズク!イツカ!!…角度ミスったらボク死んでたよ!?」
出すか悩みました!無印ラストの敵たち!
最もおもしろかった章
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(A)雄英受験、入学
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(B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
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(C)GW
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(D)USJ(ケビン戦)
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(E)体育祭(ウォッチの故障)
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(F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
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(G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
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(H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
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(I)神野編(エイリアンフォース)
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(J)終章