【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜 作:レッドファイル
逆光のせいかサムスカルには、なにが眼前に迫ってきているのかわからなかった。頬の肉がえぐれ始めた時、初めて蹴られていることを認識。対応するまもなく、彼の巨体は吹き飛ばされる。
体の大きさが仇となったか、滉太を捕まえていた長髪の女性敵を巻き込みながら壁に激突する。
急いで滉太を保護するベン。彼の手をとりつつ、派手に登場した友人へと目を向ける。
「イズク、ありが…!?」
礼を言い終える前に、緑谷の体を見て驚き、
「大丈夫!?」
案じる。
千姿万態のオムニトリックスとは対極の、超パワーのみに頼る戦闘スタイル。そして傷を厭わぬ自己犠牲精神。
それらは容赦なく、彼に血を流させ、傷を負わせ、泥を纏わせる。
事実、今の緑谷は満身創痍。
ボロボロの袖から覗くのは痛々しい右腕。内部から破裂したようにプスプスと焦げる左足。そして外傷はないが常に痙攣している左腕。
その震えに合わせるように、腕からは黒いエネルギーが漏れ出ていた。
「イズク…!それ!」
マスキュラーを襲撃した謎のブラックエネルギー。その大元が緑谷であると知り言葉を失う。個性の複数もちなど、それこそオムニトリックスの様な規格外の道具が無い限り有り得ないのだ。
不安がるベンに対し、緑谷は息を切らしながら答える。
「大…丈夫。これは…問題ない…この力は…味方なんだ…」
自分に言い聞かせるように、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
とはいえ、黒鞭の反動は大きい。痺れが両腕を駆けめぐる。それだけでない。頭痛が。頭を刺すような痛みが絶え間なく響く。
長期戦闘は耐えきれないと判断し、迅速に指示を出す。
「拳藤さんは巨大蛙と紫ローブを…!残りは僕がやる…!
「やるって…!緑谷!あんた足が…」
「いいから!」
「…でも!」
彼の右腕はぶらりと垂れている。もう上げることすらままならない。しかし、新たな力は、そんな彼でも戦闘を可能にさせてしまう。
「…黒鞭ぃ!!!」
緑谷の叫びとともに、闇に紛れる鞭がうねりを上げる。そして、前方に構える敵めがけて射出されていく。
リーダー格である騎士はなんなく避ける。が、武装した女性敵アンドロイド=ロジョと、復帰したばかりのサムスカル達は木の幹に磔られる。
多数人を一瞬で封じた緑谷を信じ、拳藤はベン達の元へ。
「ベン…!こいつらなんなの!?もしかしてさっきの金髪チビ爺さんもこいつらの仲間!?」
「金髪爺さん…っ!サブリミノもいたのか!?こいつらは‥アメリカの敵だ!ボクに復讐するために脱獄してきたんだよ!」
「アメリカ…!?そういえば、向こうのニュースで見た気が…」
「その通り!久々にあったなぁ!テニスゥン。寂しかっただろう!?」
彼らの会話を遮るように、巨大な蛙が前に佇む。3メートルは下らないその体躯は、自然に生まれたとは到底思えない。
声の発信源はその背中から。ベン達が見上げると、薄緑色の肌をした老人が乗っている。緑赤の角が特徴的なヘルメットを装着しており、バチバチとプラズマが見える。
「この光を浴びれば貴様もこの子のように大きくなれるぞ!」
「ゲコォ!」
飛び出た赤い目をギラギラさせ、ジャイアントフロッグは元気よく返事をする。
「アニモ博士!!…身長が伸びるはいいけど…そいつみたいに不細工になるのはごめんだね!」
「減らず愚痴を叩けるのも今のうちだぞぉ?なぜならこのトランスモジュレーターは貴様のっ…」
BANN!!
「ッ!」
力説するアニモを無視し、拳藤は掌底を蛙に叩きこむ。しかし、腹がブヨンと揺れただけで、蛙はじっと彼女を見つめるのみ。
「ふははは!!残念だな小娘よ!この子にはどんな物理攻撃も」DGAA!
発現の途中で、束になった黒鞭は彼らを飲み込んだかと思うと、すぐ背後の岩盤に叩きつける。
「緑谷!!サンキュ!!…確か…」
礼を言いつつ、口元に手を当てる拳藤。現状を冷静に分析する。前方の3人とアニモ博士は緑谷が抑えている。なぜか騎士風の男は攻撃してこない。
ベンと同様にアメリカでの職場体験を受けた拳藤。朧気ではあるが、目の前にいる敵の何人かは知っている。
「緑谷!今捕まえている奴!右から【操髪】【怪力】の個性!左端の短髪の武装女はレーザー系に注意!それとっ!?」
緑谷への助言は紫色の波動に阻まれる。
避けようにも後ろにはベン達がいるため避けられない。大拳でベン達を囲い、背中で攻撃を受ける拳藤。意識を刈り取るほどではないが、一瞬呼吸が止まる。
そんな彼女へ歩み寄るのは銀髪の魔女。
「あら。思ったより効いてないわね。やるじゃない!」
「かはっ…あんたは確か…パープ=ウィチル…敵名【チャームキャスター】!」
「なんだよ!ボクがヘックスをやっつけたから復讐に来たのか!」
アメリカ滞在での一週間で、ベンは二度、目の前の女と戦った。その際、彼女はヘックスという魔術師に仕えており、単独で相まみえるのは初めてだった。
菫色のローブをたなびかせるチャームキャスター。彼女の長い銀髪は月明かりに照らされ鈍く光っている。
「ああ…おじ様は関係ないわ。むしろ好都合って感じ。それにあなたへの恨みもそんなに強くないわ。どちらかといえば、隣の
動じることもなく、淡々と話していたチャームキャスターだが、言葉の終わりに拳藤を睨む。
殺意を発する敵に危機を感じたのか、拳藤は駆けだす。
魔術という、個性とは異なる力を扱う敵。多様な術に対し彼女が対処することは難しい。
距離を詰める彼女に対し、魔女は手をかざしながら優雅に呪文を唱える。
「ブロウ=アイド=ウィンドリア!」
詠唱が終わると、掌から小さな竜巻が生まれる。それは彼女の手から離れたと思うと、土埃を巻き込みながら暴風へと成る。
グルグルと渦を巻きながら突き進む風に、拳藤はなすすべなく捕らえられる。
風の刃に閉じ込められた彼女は、そのまま梢枝を折りながら林の奥へ。バキバキと折れた小枝は彼女の身を削り、刺さる。
DGOO!!
「がっ…!?」
そんな彼女を後目に、チャームキャスターはベンへと近づいていく。
「なんだ!やる気か!?所詮グウェンに負けた魔法使いじゃないか!」
「っ!!うるさい!私を侮辱するな!!」
激昂したチャームキャスターに気圧されるベン。動きを止めた彼を見て、深呼吸する。
「…ふう…テニスン。実は私にはやることがあってね」
スラリと伸びた足は一歩、一歩とまた踏み出される。
「トランスカ=アイデンティカ。トランスカ=アイデンティカ…トランスカ」
呪文が唱えられ始め、シャボン玉のような巨大な球体がベンへと向かい始める。
トランスカ=アイデンティカ。一生に3度しか使えない禁断の魔術。その効果は肉体の入れ替え。
チャームキャスターは、ベンの力を奪うのではなく、自分がベンに成り代わり、力を得ようとしていた。
半透明の球体がベンを包みこんでいく。
「なんだよこれ!!くそっ!出せよ!!」
内部からはガムのような質感で、押しても叩いても弾けない。
エイリアンの力を目前にし、彼女はチラリと雑木林を見る。
林は先ほど放った竜巻でボロボロ。木枝が折り重なっており、抜け出すのは困難だろう。その奥にいるはずの拳藤もこちらに来る様子もない。
個性を見る限り近接系。もう成すすべはないだろう。
再びベンへと視線を向ける。
「あんたの力と私の魔術が合わされば無敵よ!!トランスカ=アイデンティ」
最後の詠唱を終える時、林奥から誰かの叫びが聞こえた。
何と言ったのかは聞こえなかった。
だが
何と詠唱したのかは分かった。
慣れ親しんだ力が、
「ブロウ=アイド=ウィンドリア!」
彼女以外の口から、この呪文が唱えられる。
すると、先ほど開けた林の穴から、自分が放ったものと同等、もしくはそれ以上の暴風が樹木を意に介さず突き進んでくる。
間一髪で避けきるも、呪文の効果は途切れる。球体がはじけ、しりもちをつくベン。そんな彼に目もくれず、チャームキャスターは声を荒げる。
(有り得ない!有り得ない!?なんで日本の小娘が!!)
彼女のプライドは、今この瞬間に砕けた。これで、2度目だ。
「私の術を!!」
両腕から、頭髪の同じ、橙色のオーラを出しながら、彼女は戻ってくる。
「身に覚えがない?初心者に負ける魔女さん?」
オレンジ色の髪を靡かせ、ビロードのような瞳を輝かせる拳藤。そのセリフは誰かを彷彿とさせた。
(性格まで似てきたよ)
こんな状況にも拘わらず、ベンは今度を憂いた。
ネガティブ10の動向!長いので飛ばしてもらっても大丈夫です!
・緑谷の目の前に
①【怪力】のサムスカル
②【操髪】のフライトウィッグ
③【武装】のアンドロイド=ロジョ
・拳藤たちの近くに
④アニモ博士
⑤チャームキャスター。
・⑥騎士風の男は静観。
・合宿所に
⑦【隷蟲】のクランシー
⑧騎士風の男の部下
森の中で気絶中
⑨【催眠】のサブリミノ
⑩【腐酸】のアシッドブレス
最もおもしろかった章
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(A)雄英受験、入学
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(B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
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(C)GW
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(D)USJ(ケビン戦)
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(E)体育祭(ウォッチの故障)
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(F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
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(G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
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(H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
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(I)神野編(エイリアンフォース)
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(J)終章