【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜   作:レッドファイル

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・これにて林間合宿編終了!


83話 目的

時は梅雨が明け始めた7月。

 

体育祭や海外職場体験で顔見知りとなった拳藤とグウェンは、すっかりテレフォンフレンドとなっていた。

 

「つまり…【タイムマシンというのは個々人に内蔵されるものであり、誰しもが時間旅行を楽しめる可能性を持つ。宇宙には既に、タイムトラベルを自由に行える生物が存在するかもしれない】ここまでがパラドクス博士の見解ね!」

 

電話口からはグウェンの声。拳藤にとって彼女との会話は非常に有意義なものであった。日本ではあまり聞けない個性の話や個性歴史学など、自分も興味のある分野なので飽きることは無い。

 

とはいえ、もう生き物は寝静まる時間。そろそろ切り上げねば。

 

「グウェンってそのパラドクス博士好きだねぇ」

 

「当然!噂じゃ時間操作系の個性を持ってるんじゃないかって!」

 

「ふーん…とりあえず今日はこのくらいにしてもらおっかな。明日はベンと勉強会なんだ」

 

「イツカ…あなたベンに勉強教えているの?まだ猿に芸覚えさせた方が簡単だって」

 

「あはは…まあ確かに…今回の勉強会も無理やりだし…」

 

ポリポリと頬を掻く彼女を察したのか、グウェンは仕方なしに提案する。

 

「…ま、どーしても困ったら連絡して!あのおバカさんでもお尻ひっぱたかれたらやる気出すでしょ!」

 

「…なんだかんだ言って、グウェンもベンのことほっとけないんだね」

 

「はぁっ!?冗談辞めてよ!いい?あいつか敵、どっちか助けろって言われたら即決で敵を助けるわ!?もちろん、ベンに散々文句言ってからね!」

 

強い口調で否定するグウェン。

 

そんな彼女に対し、拳藤はなんも返さない。その間はまるで、彼女の本当の言葉を待っているようだった。

 

ついに観念してか、グウェンはため息をつきながら本音を吐露する。

 

「…けど…そうね。家族だもの。なにかあった時に頼れるのが、家族でしょ?あんなちんちくりんでもね。」

 

従弟ではあるが、小さいころからの付き合い。そんな彼女の言葉には、自分にはない重みと説得力があった。

 

グウェンと返答を聞いて、顔が曇る拳藤。力なく言葉を返す。

 

「うん…そうだね…」

 

「何よ、イツカ、暗いわね。」

 

「あのさ…あたしは…ベンが好きなんだ。まだ出会って数か月だけど、ベンが傷つくのは耐えられない。でも、あのとき…あたしはなにもできなかった。結局ベンが戦って、なんとかした」

 

ヴィルガクスとの闘いを思い出すと、胸の奥から悔しさと不甲斐なさがフツフツと湧き上がる。

 

守ると決めた。そのためには力が必要。オムニトリックスを有するベンを守る力。それは途方もないほどの努力が求められるだろう。だが、心に刻むため、彼女は言葉にする。

 

「あたしは、ベンを守りたい。そのために、強くならなきゃいけない。」

 

その想いが恋愛感情なのか親愛感情なのかはわからない。だが、彼女の想いの丈はグウェンにも感じ取れた。

 

「…誓いなのか告白なのか…恥ずかしげもなく、よく言えるわね…」

 

「あ、ごめん!なんか…その…グウェンに言ったって仕方ないよね!個性だって全然違うし!」

 

「あのね、イツカ。確証はないんだけど、あなたが強くなる方法は一つあるわ」

 

「え?」

 

「とりあえず、あたしの言葉を繰り替えして」

 

「言葉?」

 

「そう。あ、念のため外でね…これは、個性とは違うなにか。そいつ曰はく、センスがあるか無いからしいわ」

 

「…えっと…」

 

「ものは試しよ!よく聞いてね。頭の中で風をイメージして。えっと…竜巻が良いわ。それが自分の掌から出るイメージ。呪文は…」

 

「ブロウ=アイド=ウィンドリア!!」

 

オレンジ色の闘気とともに、彼女の掌からは小型の竜巻が放たれる。

 

荒れ狂う竜巻は、チャームキャスターめがけて地面をえぐり進む

 

すんでのところで回避するも、とらえていたベンにはまんまと逃げられてしまう。

 

「っなんであんたが!?」

 

「思い当たることはない!?」

 

彼女の言葉で記憶をたどる。

 

(この女とは会ったことは無い。一族にもいなかった!魔法は…あたしたちの血と呪文がないと…っ!!まさか!)

 

「あんた‥‥あの小娘にぃぃぃぃ!!!!」

 

「イツカ!どうしてお前も!」

 

「教えてもらった!!」

 

魔術を使える条件は、脳の神経系にとあるエイリアンのDNAがあるかないか。ただそれだけ。

 

魔術の本をチャームキャスターから奪い取ったグウェンと、彼女を師事する拳藤には、そのDNAに適合していた。

 

グウェンよりも出力は弱いが。それでも状況を変えるには十分な威力の竜巻。

小枝や砂利が吹き荒れ、かすり傷が絶え間なくできる。

 

たまらずチャームキャスターは腕で顔を防護。その隙が命取りだった。

 

DOMM!!

 

拳藤は右手を巨大化し、背中の樹木を思いっきり叩く。その反作用で、彼女の体は前へと弾かれる。

 

敵が呪文を唱える。だが彼女は怯まない。

 

爆発物が頬を霞める。だが、相手の懐に入ることはできた。

 

見上げるとそこには魔女の顔。額には汗をかき、その目じりには涙が溜まっている。

 

拳を目の前にした彼女の顔は、ひどく歪んでいた。

 

「双大拳!」

 

ただのアッパー気味の掌底。上げ切る寸前まで、拳は普通サイズ。しかし、インパクトの瞬間に巨大化することで、その威力を倍増させる。

 

TTAAANN!!

 

彼女の編み出した必殺技は、悪の魔女を宙へと舞わせる。月明かりが、彼女の銀髪に反射され、ベン達を照らした。

拳藤の奮闘の横では、別の戦いが終わろうとしていた。

 

「あああああああ!!!」

 

SMASHH!!

 

かろうじて動く右腕でのSMASH。拳を握ることもできないので、ゆらりと腕を横薙ぎに振っただけ。しかしリスク度外視の100%は、海を渡った敵を地に着かせる。

 

「こんなところで…私の研究が…ありえ…ん」

 

巨大化した蛙とともに、地に伏せるのはアニモ博士。

 

(これで…4人目…拳藤さんも…勝ってる…あとは…あいつだけだ…!)

 

息切れする緑谷。その体はここに到着した時よりもボロボロ。だが、その甲斐あってか状況は好転していた。

 

残るのは鎧を着た仮面の男のみ。

 

「イズク!大丈夫か!」

「緑谷!!」

 

林近くで戦っていた拳藤たちが戻ってくる。

 

「平気…だよ。ベン君はそのまま滉太君を…」

 

そして、笑顔を作る余裕もない彼は、キッと目を細める。

 

「…お前たちの…目的は…なんだ…!」

 

霞む目をこする力もない緑谷。気迫だけで立っているが、それももう限界。教師陣が来るまで時間を稼ごうと策を弄す。

 

足がおぼつく緑谷に対し、目の前の騎士は答える。

 

「彼らの目的は憎きベン=テニスンを倒すことだ」

 

指し示す方向には倒れている敵。

 

「しかし…私の目的は違う」

 

仮面の奥で笑みを浮かべる。緑谷からは見えないが、少なくとも彼はそう感じた。そして、優雅ともいえるその立ち振る舞いから、途方もない憎悪を感じ取る。

 

 

瞬間、こめかみに、刺すような痛みが走る。

 

「…!」

 

指示を出そうとする。が、間に合わないと判断。

 

一瞬、闇の中に一本の光筋が見える。かと思うと、その軌跡をたどるように仮面から薄紅色のレーザー射出。

 

光線は、一直線にベンに向かう。

 

SSMAASHH!!

 

ベンとレーザーの間に割って入った緑谷。残る力を振り絞った最後の一振り。しかし、レーザーは風圧をものともせず、彼の体を貫く。

 

「うがぁぁぁ!!」

 

骨をも溶かす熱帯びたレーザー。それは彼の上腕をいともたやすく焼き貫く。

 

膝から崩れ落ちてしまう緑谷。が、その思考は途切れない。

 

(がっ…今の…特徴的なピンクの光と…アメリカ…)

(5年前の…アメリカHBTで一位)

「「…フォーエバーキング…!?」」

 

「おや、私のことを知っているとは‥さすが日本人、勤勉だね」

 

緑谷と同時に答えたベン。困惑しながらも彼の情報を思い出す。

 

「なんでお前が…確か…捕まえた敵の武器とかを内緒で盗んでて…それでヒーローをクビになって…」

 

「違う!私は配管工の隊員だったのだ!表ではヒーロー活動を、裏ではエイリアンの駆除を。国からの要請を受け、私は多くの仲間とともに国に尽くした!」

 

配管工とは対地球外生命体ヒーロー部隊のことである。エイリアンの存在にいち早く気づいたアメリカは、その対応を一部のヒーローに任せていたのだ。

 

「しかし、私がとあるエイリアンテクノロジーを利用しようとしたとき、私は排斥された。“これは国が管理しなければ混乱を招く”とな」

 

エイリアンテクノロジー。その際たる例がオムニトリックス。人類の到達していない未知の領域。もしそれが国民に知られたら、間違いなく社会は混乱する。その事態を恐れたアメリカは、エイリアンの存在を隠すことにしていたのだ。

 

「私の様な優秀な人間にしか、エイリアンテクノロジーは扱えない。私が手にすることが!人類の進化に最も近づく手段なのだ!だがやつらは、“君は不安定すぎる”と一蹴した」

 

「だから…永遠の騎士団に入ったのか」

 

「ああ。この組織は私の思うように、願うままに動く。今度は、誰にも邪魔させない」

 

「そんなことさせるもんか!!」

 

敵の陰謀を阻止しようと意気込むベン。だが。前に出る彼に拳藤の制止が入る。

 

「駄目だよ、ベン。せめて、変身できるようになってからじゃないと…!」

 

「大丈夫だよ!ボクだってやれる!」

 

「駄目だって言ってんでしょ!!」

 

彼女の迫力がビリビリと伝わってくる。いつもと違い本気で怒りを露わにする彼女にベンは思わず息を飲む。

 

その様子を仲間割れだと思ったのか、フォーエバーキングは笑いながら拍手する。

 

「ははは、面白いじゃないかテニスン。最強の君も、それが機能しなければただの子どもというわけか」

 

「なんだと!?」

 

「挑発だよ、ベン。もう少し待てば先生も来るし、あんたも変身できる。だから、今は下がってて」

 

無理やりベンを後退させ、彼とフォーエバーキングの間に身を置く。

 

「ふむ…さすが雄英スクールの生徒だ。実に妥当な判断だ」

 

言い知れぬ不安感から、警戒心を高める拳藤。

含みのある言い方にある言い方。敵の余裕はどこから来るのか

彼女の疑問はすぐに解決された。

 

WHHOONN!!

 

敵の背中側は断崖。何もなかった。のに、背後に黒だか紫だかが混じった靄が発現していく。

瞬く間にその靄は人型となり、手から等身大のワープゲートを形成する。

 

(…これは‥A組から聞いた、ワープ機能を持つ黒い霧!てことは…!)

 

「敵連合!!」

 

叫ぶ彼女を一瞥するも、黒霧は任務へと意識を戻す。

 

「フォーエバーキング。時間が来ました」

 

「ああ、ありがとう。後は頼んだよ」

 

「わかりました。…彼らは?」

 

黒霧は寝転がり憔悴しているネガティブ10を伺う。一応、全員が敵連合に顔を出したため、仲間という認識が彼にはあった。

 

「そのままでいい。最初からこの予定だった」

 

しかし、敵の大将は何の気なしに彼らを捨て駒と評する

ひらりとマントを翻し、拳藤と正対する。

 

「先ほどの質問にまだ答えていなかったね」

 

「あら、教えてもらえるの?じゃあぜひご教授願いたいな!」

 

地べたに転がる緑谷をかばう為、前に勇出る拳藤。

嫌味を入れながらも、緑谷から視線を外さない。そんな彼女に対し、フォーエバーキングは勝ち誇る。

 

「私の目的は」

 

もったいぶるように口を閉ざす。まるで何かを仕掛けているように。

 

いつレーザーを打たれてもいいように気を張り詰める拳藤。目の前の騎士を穴が開くように観察する。

 

(仮面からのレーザーに注意…待って?なんで…逃走用の黒い靄の中に入らない…?なんで…片手だけ)

 

その違和感に気づいたときには、もう遅かった。

 

「うわっ!!」

 

後ろから悲鳴。振り返ると、ベンのすぐ後ろには黒い靄が完成していた。漆黒へと変わった靄からは、腕だけが伸びている。

 

すぐに事態に気づき、身を翻す。そして、地に伏せていた緑谷も、【最悪の事態】を目の前にして跳びあがる。

 

「「っっっ!!やめろ!!」」

 

闇の中の腕はベンの首を掴む。抵抗しようにも、素のベンの力では元ヒーローに敵うはずもない。じたばた暴れるほど、彼の体は闇に飲まれていく。

 

ゆっくりと引きずられるようにベンの半身は靄の中に。

 

「ベン(君)!!!」

 

無理を押す緑谷と拳藤。渾身の一撃を靄へと放つ。

顔が見えなくなりつつあるベン。彼の最後の一言は

 

「来ちゃ…駄目だ…イ」

 

SSMAASHH!!

BAASSINNN!!

 

2人の全力の攻撃で、周囲に砂ぼこりが立つ。その風圧は地に付す敵たちを吹き飛ばすほど。

 

視界が開けてきたとき、彼らの目に入ったのは大きなクレーター。ぽっかりと空いた大穴には彼らしかいなかった。

 

「くっそぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「ああああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 




・雄英1年林間合宿

軽症者 12名
重傷者 4名(プロヒーロー含む)
行方不明者 2名


最もおもしろかった章

  • (A)雄英受験、入学
  • (B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
  • (C)GW
  • (D)USJ(ケビン戦)
  • (E)体育祭(ウォッチの故障)
  • (F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
  • (G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
  • (H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
  • (I)神野編(エイリアンフォース)
  • (J)終章
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