【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜 作:レッドファイル
84話 人外
雄英高校1年林間合宿は、敵連合の襲撃により、雄英史上最悪の事件となった。ただでさえ、5月に侵入を許し、生徒に戦闘許可を出した前例のある雄英。当然、マスコミらの矛先は学校に向かう。
そして、そのネタを仕入れるために、報道陣は我先にと病院へと押し寄せる。当然、その騒ぎは入院している生徒らへと伝わる。
「…」
が、しかし、緑谷出久にとって、その騒音は思考の妨げとなるものではなかった。彼の頭の中は、この2日間の夢のことで一杯だった。
「僕が…」
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覚えているのは、ベンが攫われたこと。それ以降の記憶がない。
一面に暗黒の暴風が荒れ狂う世界。現実ではあり得ない光景だが、緑谷は落ち着いている。なぜなら、この景色は、既に見た景色だったから。
自分の手足を見ると、うっすらと影が覆っており、感覚が無い。発声しようとすると、どもった声にしかならない。
現状を確認していると、背後から声を掛けられる。
「やあ」
振り返ると、そこには線の細い、白髪の男性。歳の割に、高く、とても印象的な声。合宿前に、夢で見た人だった。
「…あ、ああたは?」
誰か?と質問しようにも、言葉にならない。そんな彼を気遣うように、男は微笑む。
「大丈夫。心の中で話しかけて…」
その言葉の通り、緑谷は質問する。
(あ、あなたは?)
ゆっくりと、なだめるような声で青年は答える。
「僕は死柄木与一、初代ワンフォーオールだよ」
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予想外の一言にたじろぐ緑谷。思わず後ずさると、ドンと誰かにぶつかる。
「大丈夫かい?」
これまた白髪の男性。端正な顔立ちだが、その額から頬にかけて、ヒビのような傷跡。
その男性の登場を皮切りに、次々とコスチュームを着たヒーローが現れ、いや、見えてくる。
その中には、いつかグラントリノが話していた、オールマイトの師匠と思わしき女性もいた。
与一と名乗る初代OFA、そしてオールマイトの師匠の姿から、彼らが誰なのかを察する緑谷。
(皆さんは…先代の、OFA継承者…ですか?)
「その通りさぁ!!さすが坊主!察しが良くて助かるぜぇ!!」
「先輩、声が大きすぎますって」
緑谷の問いに答えたのは、【黒鞭】の持主、OFA五代目 万縄大悟郎。ツッコミを入れたのは口元を襟で隠した少年だった。
「少年、先の戦いで、激しい頭痛に襲われなかったかい?」
万縄を後目に、白髪の男性が質問する。
フォーエバーキングが光線を打つ前の、刺すような痛みを思い出す。
その思考を汲み、男性は続ける。
「あれは私の個性だ。【危険感知】。害意や危機を捉え、知らせてくれる」
「びっくりしたぜぇ!確かに、これから坊主には俺たちの個性が発現する、とは言ったが、こんなに早く使えるとはよぉ!!」
「うん、それについての説明も、僕からしよう」
矢継ぎ早に継承者から話しかけられ、混乱していた緑谷。見かねた与一は、すッと前に出て、
「座ってくれ」
気づけば、彼らと自分の後ろに椅子が備わっていた。
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「君は、万縄君から、OFAの覚醒について聞いているね?」
黒鞭の発現時、五代目から聞いたことを思い出す。
(は、はい。OFA継承者の個性がこれから発現していくって…)
「そう。あの時は時間が無くて万縄君も話せなかったんだけど、
本来なら有り得ないんだ。歴代の個性が発現するなんて。
八木君からも聞いている通り、この個性は【力をストックして個性ごと他人に渡す】個性。あくまで、その身体能力しか継承されないんだ」
両肘を膝につき、組んだ手で口元を隠しながら与一は説明する。心無しか、語気が強くなるのを感じた。
「確かに、ワンフォーオールの継承方法はDNAの摂取。各々の個性因子がつながっている可能性はある。だけど、それと個性が使えるかは関係無い。いや、無かったんだ」
(「だった」…?)
過去形に疑問を抱く緑谷。その顔を確認すると、与一は立ち上がる。
「ところが、ある日、OFAという個性
(…個性の変容‥?)
「君は、体育祭で、ベン=テニスンと戦ったときのことを覚えているかい?」
(は、はい)
彼らの頭上に、映像が浮かぶ。荒れた画面を見てみると、体育祭の決勝戦が流れていた。
「君や八木君を通じて大まかな事情は知っている。彼の力の源はオムニトリックスと呼ばれる時計。無数の宇宙生物に変身させる、コミックみたいな道具さ」
映像の中のベンを指さす与一。他の継承者も、口には出さないが、ベンの戦いぶりに感心している。
(た、確かに、改めて考えると有り得ない話というか…でも、どうして急に…)
首を傾け、再び映像に目線を移す。つられて緑谷も映像をみると、そこでは緑谷がベンの手首を掴んで投げ飛ばしていた。
「このとき、君の血液があの時計に混入したんだ」
(…!?そういえば!その後、少しだけだけど、ベン君はものすごい力を発揮して…まさか、ベン君にワンフォーオールが継承されて…!?)
「いいや、それは無い。現に今、彼からはOFAを感じないだろう。
でも、あの時、彼の中にOFAが芽生えたのも事実だ。あの瞬間、OFAという個性と、オムニトリックスという変身装置はつながった」
驚愕の事実に緑谷は振り返る。ロングヘア―の女性を始め、ほとんどの継承者ははっきりとした面持ちではない。
「皆、その時は意識が確立されていなかったからね。僕もほとんど存在しないものだった。
けど、朧げに覚えている。あの時計の中のことをね。
彼の中には、正確にはオムニトリックスの中には、何十、何百、いや、何千ものエイリアンがいた」
何千という数字に言葉を失う緑谷。変身できる数が増えているとは思っていた。しかし、まさか千を超えるとは。
与一は続ける。
「数えきれないほどのエイリアン。それらを制御するオムニトリックスに、ほんの一瞬、僕、つまりOFAが触れたんだ。」
(もしかして…)
「ああ。あくまで、【力をストックして渡す】個性であるOFAが、彼のオムニトリックスとつながったことで、変わってしまったんだ。」
(【継承者の個性を顕現する】個性へと…でも、どうして急に今)
「先日のケビン11との戦闘だよ」
(!)
「個性が変容したと言っても、君ではOFA自体の練度が足りなかった。だけど、オムニトリックスと密接な関係を持つケビン11と戦ったことで、ついに個性が解放されてしまったんだ。」
(確か、オムニトリックスの力を吸収したのがケビン11。OFAが変容した原因もオムニトリックス…)
ブツブツと独り言を始める緑谷。そんな彼を誰一人として留めなかった。それは、この後に続く彼への言葉を考えていたからだろう。
(そうか…これまで情報として継承者の個性因子がOFAに備わっていた。だけど、ベン君のオムニトリックスとつながったことで、【複数の能力が併存する、顕現する】ということを学習、もしくは影響されたんだ…)
ひとしきり考察した緑谷だったが、納得できたのか、与一を真正面から見る。
(…そういうことだったんですね。確かに、急に個性が発現したことには驚きました…)
手を握りしめ、傷だらけの腕を見つめる。そして、一拍おいた後、顔を上げて意気込む。
(でも、これまでの継承者さんたちの力と、
OFAの力が合わされば、どんな人だって救けられます!)
笑顔で人々を救う最高のヒーロー。その夢にまた一歩近づける。
そう思い、自らの志を示す緑谷。
だが、その発言を受けた与一の顔は暗い。
黙り込んだ与一を見かねたように、後ろから男性が彼に歩み寄る。鋭い目つきと、痛々しい傷跡がその空気を更に緊張させる。緑谷だけが、誰かに似ている、と思った。
「これで、俺たちの悲願、オールフォーワンを討つことだってかなうはずだ。与一。だから、これは悪いことじゃない。OFAを
後ろから与一の肩に手を置く。
励ましなのか、慰めなのか、諭しているのか。
彼の言葉で意を決した与一は、緑谷を見据える。
「…緑谷君。君に言わなきゃならないことがある」
(?はい)
「君は今、複数の個性を顕現し、しかも同時に使用することができる」
頷く緑谷。
「本来、個性を複数持つこともありえない。そして、個性を複数持ったとしても、同時に使用することは普通の人間には不可能なんだ。」
(え?)
「なのに君は、黒鞭、OFA、危険感知を何度も同時に使用した。」
続けざまの事実に再び困惑する。だが、与一は、つづけた。
「君の体は、君の個性因子は、もう個性の枠を超えているんだ」
緑谷の額に汗がにじむ。与一も、苦虫を潰したような顔つきとなっている。しかし、振り返り、2代目と目を合わせた後、息を吸い、
「君は、
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その言葉で、緑谷の夢は終わった。おそらく、彼らが伝えるべきことは伝えたということなのだろう。
未だ、晩期のオールマイトにも及ばない自分が、複数個性を操れる人外となった。つまりOFAは、まるで宿敵AFOと同様の力であると。
人間であることを辞めてなお、OFAの使命を果たすことができるか。
初代、そして、歴代の継承者は、そう問いたかったんだと推測する。
「エイリアン…」
OFAがオムニトリックスと交わり、いわば個性の先祖がえりを起こしたことで、自身の体はエイリアンに近づいた。
【人間】から遠ざかることは普通耐えきれるものでもない。その重圧と嫌悪感をはねのけることができるのか。初代が心配していたのはそんなところであろう。
だが、
9代目 OFA継承者 緑谷出久には、関係の無いことだった。
「救けられるんだ…この力があれば」
緑谷にとって、自分の体のことなど、どうでもよかった。母を苦しめることになるかもしれない。だが、それでも、果たすべき使命と、救けたいという想いを否定することは出来なかった。
「なんとしても、ベン君とかっちゃんを取り戻さなきゃ…!」
力を発揮できていればベンを奪われることは無かった。責任は自分にある。だからこそ、身を滅ぼそうとも彼らを助けなければならない。
ベッドの背もたれから体を起こし、1人拳を握る。
そんな彼に、お誂え向きの来訪者が現れる。
「緑谷…話があるんだ」
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病院の洗面所で、1人の少女が鏡を見ている。
(ああ…まただ…また、あたしは無力だった…)
拳藤一佳もまた、病院での治療を受けていた。リカバリーガールの治療により意識ははっきりしていた。ゆえに、その残痕もはっきりと彼女を襲う。
「おえぇぇ…」
もう出るものはない。にも拘らず、むかむかとした吐き気が収まらない。口元に垂れている涎を拭い、鏡を見る。
(ひっどい顔…)
丸二日は寝ていたはずだが、目元には隈。
二日間の夢の中に出てくるのはベンの最後の表情。
怖がっていることを隠し、強がる表情。彼女にはそう見えていた。そんな顔をさせた自分が情けなく感じる。
フォーエバーキングと名乗る敵。奴はエイリアンテクノロジーを知っていた。そしてケビン11の属する敵連合。
つまり、敵はベンがオムニトリックスで変身することを把握している。もしかするとベンには興味が無いのかもしれない。
用があるのはウォッチ。もし取り外しが可能となれば、敵にとってベンの価値は無くなる。悪の組織に用済みとされた人間の末路は容易に想像できた。
「くっそ…!絶対に…絶対に取り返す…!」
命に代えても。どんな手を使っても。
そう決意した時、先ほどの気持ち悪さは無くなっていた。
GANN!!
拳を壁に叩きつける。ポタリと床に染みが出来た。鏡には見たこともないような、鋭い目つきの自分がいた。
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最低限、体を治す為に彼女はベッドに戻る。自分の企みを悟られないため、カーテンを閉める。
あれやこれやと、奪還作戦を考える。が、そもそも敵のアジトさえ知らない。
思いついたアイデアが、理性的な自分によって否定される。
何十分もその行為を繰り返していたとき、ふと気づくとカーテンの裏から声がした。
耳を澄ますと、同室の緑谷と、A組の声。
「だから…救けに行こうぜ…!爆豪もテニスンも、同じ仲間だ!確かに俺たちの出る幕じゃないかもしれないけど…でも、なにかできると思うんだよ!!」
病院内にしては大きな声を上げるのは切島。
「八百万が敵に追跡装置を付けてて、どこにいるかはわかるんだ。そこに爆豪達がいるとは限らねぇけど…」
八百万。創造の個性もちであることは知っているが、あまり交流はない。体育祭でも振るわなかった生徒だ。だが、この緊急時に、最善といえる行動をとれたことに、同学年の拳藤は感服する。
敵のアジトさえわかれば、なんとか子ども1人助けることはできるかもしれない。いや、可能性が低くてもやるしかない。
彼女の考えを読んだかのように、カーテンの向かうで緑谷が提案を受ける。
「うん、いこう。なにかできるなら、僕はやるべきだと思うんだ。今度こそ、」
そういうと思った。あのとき一緒にいたあんたなら。
シャっとカーテンを開ける。
予想外の登場に、切島は顔を引きつらせる。
「っ!拳藤!?い、今の話…」
発案者の切島は、止められると思ったのかあたふたしている。そんな彼に、拳藤は答える。
「あたしも連れて行ってくれ」
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所変わって、とある地下の研究室。
電球は無く、ほのかに光る赤ランプや紫色に発光する液体で、その部屋は照らされている。
「ほっほっほ!!始めましてじゃなぁベン=テニスン!」
眼前に迫るのは、奇怪な眼鏡を付けた老人。その両隣には、フォーエバーキングと、よく見知った顔、ケビン11。
ベッドに胴体と左腕を固定されたベンは答える。
「…胡散臭い爺さんと、全身鉄仮面と…化け物…全く、全然、本っ当に!センスがないね…!!」
緑谷の件はわかりにくかったかもしれません。完全に独自設定です。もし質問があれば感想欄でお願いします!
最もおもしろかった章
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(A)雄英受験、入学
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(B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
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(C)GW
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(D)USJ(ケビン戦)
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(E)体育祭(ウォッチの故障)
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(F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
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(G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
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(H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
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(I)神野編(エイリアンフォース)
-
(J)終章