【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜 作:レッドファイル
背中には鉄の感触。おそらく安物のベッドなのだろう。身を捩るが、胴体と左手に固定ベルトが装着されているため、上手く体が動かせない。
ガチャガチャと音を鳴らし、手首を自由にしようとするが、
「無駄じゃよ。君の力じゃ、ボルト一本緩まん」
「うるっさいなぁ。胡散臭いじーさんはアニモ博士で間に合ってるんだよ!」
「胡散臭いとはご挨拶じゃな!まあ間違ってもおらんが!わっほっほ!」
丸々と太った老人は一見すると無害そうだ。髭を撫でつけながらベンを見下ろす。
「儂の名前は殻木球大!まあ覚えても覚えなくともよい」
「あっそ。じゃあ覚えないよ。ボクはどうでもいいことは3秒で忘れる性質なんでね。そういや名前なんだっけ?!」
周囲にはケビン11とフォーエバーキング。不気味な研究施設で、敵に囲まれているにも拘わらず、ベンは減らず口を叩く。
「さすがじゃのう!極悪敵を前にそこまで勇めるとは!15歳とは思えぬその胆力!それともただお子様なだけかのぅ?」
部屋の広さは教室一個分ほど。至る所にパイプが繋がれており、シュウシュウと怪しげな気体が放出されている。
首を少し上げると、鋼鉄と電子盤で構成された扉が見える。その下部には、まるでペットが通る様な小穴。
「なんでもいいけどさ!これ解いてくんない?」
なんにせよ、時間を稼ぐほかない。そう考え話しかけるベン。
虚空に放たれた言葉に反応したのは、ケビンでも、フォーエバーキングでも、殻木でも無かった。
「そうはいかないよ。ベン=テニスン君」
コツンコツンと足音が響く。声からして男性だと推測される。
敵とは思えないほど穏やかな口調。渋く、それでいて老いを感じさせない声。
足元から徐々に照らされていく。革靴とスーツパンツという、大人な服装。中肉中背。特に評するような個性はない。
が、首から上が視界に入ったときに、その評価は反転する。目や口、耳すべてを覆い隠すような、真っ黒なマスクをかぶっていたからだ。
「そ、そのマスク…趣味わっる…」
「あはは。そう思うかい。僕は良いと思うんだがねぇ。こう、悪の帝王…魔王のような雰囲気が出ていないかい?」
パイプの繋がれたマスクの奥から、落ち着いた、優しくなでるような声。思わず警戒が緩む。
「じっくり君とお話しをしたいのだけれど、時間があまり無くてね。」
油断したベンの頭部をわしづかみするその男。
「わぷっ!何すんだよ!」
首を振り抵抗するベンだが、男は気に留めない。そのまま彼を押さえ、ひとつ頷く。
「ふむ…少なくともこの子から奪える個性はないね…」
「そうか。やはり奴のいうことは…」
再確認するかのような殻木に対して、両手を組んで佇むフォーエバーキングが声をかける。
「だから言っただろう。彼の力はすべてその時計のおかげだ。オムニトリックスという宇宙最強の武器。子供でもここまでのパワーを発揮できることから、その偉大さがわかるだろう」
「そうだね。彼の実験も一人は上手くいっていたし、真実であることに間違いはなさそうだねぇ。」
「ふむむ!これは研究し甲斐がありそうじゃのう!」
「これで研究は最終段階に入れるね。じゃあドクター。僕は行ってくる」
スーツ男が踵を返す。すると彼の周囲には黒いヘドロが出現する。グルグルと彼を包んだかと思うと、工場マスクの男を跡形もなく消す。
殻木は少し悲しそうな顔を見せる。
が、すぐに振りかえる。
「さあ、ワクワク実験タイムじゃ!!」
・
・
・
「これは…すごい…個性因子を何十倍にも濃縮したようなDNAが、体中に点在しとる!」
床に滴るのは暖かい液体。
手首から血を流すベンを放置し、殻木は興奮する。
顕微鏡に目を押し当てながら、ベンの血細胞を凝視。その様子に痺れを切らしたのか、ケビンは結論を求める。
「…つまりどういうことだよ!」
「ある種、お主と一緒ということじゃ。エイリアンDNAと完全に結合しとる。違うのはただ、DNAが暴走しているか否か。ケビン、お主も【個性】の範疇を超えているからの」
嬉々として解説する殻木に対し、フォーエバーキングが続ける。
「彼の体を利用すれば、最強の兵隊が出来上がるだろう」
「いったたた…ど、どういう意味だよ!」
痛む手首を摩ることもできないベン。なすすべもない彼の言葉に殻木は答える。
「ふむ…せっかくじゃ!教えてやろう!!」
研究者としての性か、学会を追い出された反動か。殻木は説明したがりなようだ。
「この世界を変革させた個性。この正体は」
「エイリアンのDNAだろ!?知ってるよ!」
頭に気が上っているベン。殻木がなぜ知っているか、ということに気づかない。
「なんじゃ…説明を受けていたのか…まあいい。君の知るように、個性の元はエイリアンDNA。儂もそれを知った時は驚いた。そして高揚した。人類が誰もたどり着けなかった領域に儂は足を踏み入れたのだから」
「はあ?」
「血狂いのマスキュラー。君は戦ったのだろう?」
「それがなんだよ」
「あれが一つの到達点じゃ。元々の個性持ちに、エイリアンDNAを融合させ、その力を飛躍的に伸ばす。事実、マスキュラーはオールマイトをも超える逸材となった。まあ、お主がそれを無に帰したのじゃが…」
人差し指をくるくると回しながら、ベンに背を向ける。
「この方法は彼が提案したもの。儂の個性研究と彼のエイリアンDNA情報によって到達した極地なんじゃ」
「彼…?」
「ああ…アルビード君じゃよ」
「…アルビー…あっ!!」
どこかで聞いたことのある名。其の5文字を必死に脳内で検索すると、ある一場面が思い浮かぶ。
それは、ベンの人生の転機となった、宇宙でのこと。
「ガルヴァン星人の…!!アズマスの部下か!!」
オムニトリックスの開発者、アズマスの弟子 アルビード。小型だが、宇宙でもトップクラスの頭脳であるガルヴァン星人。その特性ゆえか、宇宙船ではひどく地球人を見下した発言をしていた。
しかし、なぜそんな彼が地球に。
「あいつ、なにが目的なんだよ!」
「…彼にも色々と目的があるが…【ベン=テニスンへの復讐】は目下の目標らしいのう」
「はぁ!?なんで!?ヴィルガクスとの戦いでもあいついなかったのに…あんな小さい奴になにができるかってんだ!」
「…っふ」
「なにがおかしいんだ!」
「いや…うむ…その通りじゃな…ぐふっ、ははっは!」
笑いを押さえきれない殻木。おかしなことに他のものも同様に笑っている。一体何がおかしいのか。
少し間をおいた殻木。フーと息を吐き、再び拘束台の方を向いて話し出す。
「どこまで話したかの…ああ、そうだ。個性とエイリアンDNAの融合。これがアルビード君の考えた案。じゃが天才の儂は、もう二つ上の発想をしたのじゃ」
殻木の発言に首を傾げるケビン。
「なんだじーさん。俺らはそれを聞いてねーぞ」
「おお、そうじゃったのか?まあ最近思いついたことじゃしの。ちょうどいい。お主にも関係はある。」
大げさに腕を広げ、正規の大発明でも披露するかのような態度をとる。
「わしは個性の研究を重ねに重ね、個性終末論を導きだした。複雑怪奇に混合していく【個性】は、やがてその身を亡ぼすとな。じゃが、個性の原点、エイリアンDNAの知識まで手に入れた儂は、次のフェーズに至った。もはや地球に儂以上の個性研究者はおらん!!」
「地球で最も優れた研究者である儂は…【個性の先祖返り】を起こす!!」
「…?」
聞いたことの無い単語を聞かされ、理解が追い付かないベン。そもそも個性終末論自体も知らないベンに、殻木の話が通じるはずもなかった。不可解な顔をしているベンに、少々肩を落とす殻木。
「まあ…やはりわからんか。よし!じゃあじっくりと説」
「ドクターガラキ。その話もいいが、もっとなすべきことがあるのではないか?彼の腕時計はまだ未知の道具。用心に越したことは無い」
冷静沈着にドクターを諭すフォーエバーキング。その指摘にカチンとくるが、すぐに納得する殻木。
「ここからが面白いのにのぉ…まあ、そうじゃの。早速取り掛かるか」
スタスタと、寝そべるベンに近づく。
「ベン=テニスン君。知っての通り、わしらが興味あるのは君の体とその時計じゃ。君の心はいらん」
急な処刑宣告にさすがに肝を冷やすベン。唯一動く口を動かし反抗する。
「へ、へん!外そうとしても無駄だよ!どんなに頑張っても取れなかったんだ!!」
「らしいの。例え君の腕をちぎっても、その時計は離れない。アルビード君も言っておった。じゃ!か!ら!これを儂らに授けてくれた!!」
大きく右手を振り回し、後ろに待機しているケビンへと視線を誘導する。
彼の肩には、3メートルほどの筒が担がれていた。材質不明な円柱は、遠目からでも複雑精密だと思える様相。
青白い電線が側面に走っており、ほのかに光り、また消えていた。筒の先端には4つの爪がくの字になっている。
「U、UFOキャッチャーみたい…」
空気に似合わないベンの一言に、殻木は声を震わせて笑った。
もうすぐ最終章ですが、読者の皆さん的に、
・しばらく投稿が無くて、書き溜めが出来たら毎日投稿
・今のまま週一投稿
どちらが良いでしょうか。アンケートで回答して頂けたら幸いです。
最もおもしろかった章
-
(A)雄英受験、入学
-
(B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
-
(C)GW
-
(D)USJ(ケビン戦)
-
(E)体育祭(ウォッチの故障)
-
(F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
-
(G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
-
(H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
-
(I)神野編(エイリアンフォース)
-
(J)終章