【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜 作:レッドファイル
ゆっくりと渦を巻く正体不明のエネルギー。謎の現象を目の前にして、この場のほとんどの者が動けないでいた。
だが、ベンだけは違う。その渦を見たことがあった。数か月前、宇宙へ行く際に潜ったワープゲート。
「じーちゃん!グウェン!!」
ゲートから出てきたのは2人のヒーロー。彼らを見て思わず涙腺が緩む。そんな情けない顔を見せまいと少し顔をそらすベン。
1人はエイリアン工学をふんだんに取り入れたパワードスーツを。もう1人は暗闇に溶けるスーツとマスクを装着している。
思わぬ登場に感激しながらもベンは尋ねる。
「けど、なんでここが?ここがどこかもわからないのに…」
常に両アームから駆動音が漏れ出るマックス。その音に負けないよう、声を張る。
「わしも知らん!ナルボイドプロジェクターの設定を、オムニトリックスの在処にしたらしい!」
ナルボイドプロジェクターとは、アズマスが開発した、異世界への繋続機。それを応用することで現実世界でのワープも可能になる。
そして、オムニトリックスのDNA波を感知することで、ここへたどり着いたのだ。
最も、
「あんた、ウォッチはどうしたの!?」
グウェンが指摘したことでマックスも気づく。ベンの左手首からオムニトリックスが消えているのだ。その取り外しをアズマス以外ができたことに驚く。
「あのカプセルの中にある!」
ベンが指で示した先にはフォーエバーキング。彼の腕元にはバスケットボールサイズのカプセル。初めてベンがウォッチと出会ったときと同じカプセルのようだ。
そんな彼に託すように、殻木は告げる。
「フォーエバーキング!逃げるぞ!」
「逃げる?馬鹿を言うな。テニスン一家が揃っているんだぞ?」
予想外の一言に憤慨する殻木。悪趣味な眼鏡には並々と涙が溜まっている。
「んぬぅぅぅ!!どいつもこいつも!!だから人間は信じられんのじゃ!!ジョンちゃん!!」
その声とともに、どこからともなく現れた小さな脳無。小型犬ほどの大きさの脳に、足がくっついているだけ。
非常に不気味な出で立ちの彼は、口からヘドロを出し殻木を包んでいく。
ヘドロが全て床に撒きちる頃には、殻木と脳無の姿は跡形もなく消え去っていた。
奇妙な生物と異常な科学者。彼らの行動に呆気に取られたグウェンとマックスだったが、すぐに切り替えフォーエバーキングへと標的を決める。
「グウェン、援…」
が、その時
「どぉっりゃ!!!」
グウェンをめがけてケビンが猛突進。その巨体に似合わない速度でパンチを放つ。
「ふっ!!」
すんでのところで回避に成功。その身軽さを活かし、バク転を決め後方に下がる。
GUWANNN!!
彼女の立っていた場所には大きなクレーターが。少しばかりだが、プスプスと焦げ臭い匂いも残っている。
「お前…ベンの従妹か!はっ!面が似てるだけあって虫唾が走るぜ!」
「…次同じこといったら、そのおでこの提灯引きちぎるわよ!!ベン!下がってて!!」
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10代の少年少女が戦闘を開始するのを眺めるフォーエバーキング。そんな彼にマックスは挑発ともとれる言葉をかける。もしかすると、かつての先輩への哀れみかもしれない。
「やあドリスコル。会えて嬉しい、といいたいところだが、それは嘘になってしまう」
「そうか、マックス。私は…嬉しいがな!」
右手を掲げ、胸のコアからエネルギーを集中。ボディの中心からあふれ出るエネルギーは、煌々と光る薄紅色の光線へと変化し、マックスへと向かう。
PYUUNN!!
抱えていた電磁巨砲でガードするも、銃は真っ二つ。電子回路がやられたのか、銃身からはモクモクと白煙が立つ。
視界が遮られるも、その奥からガチャンと銃を落とす音を聞くフォーエバーキング。
ふっ、と仮面の奥で笑う。しかし、すぐに彼の表情はこわばる。
煙の中から、小型のレーザーガンを抱えてマックスが突っ込んできたからだ。
「忘れたか!この銃を!」
配管工部隊でトップクラスの使用頻度を誇る電磁巨砲。その最大の特徴は銃の構造にあった。2つのレーザー銃を電磁力でつなぐことで威力を増強。
さらに、場面に応じて分解し、2丁拳銃にもなるのは、ドリスコル考案の武器であった。
(片方を落として油断を誘ったのか!?)
「忘れていたよ!過去の忌まわしき記憶など!」
マックスは鍔迫り合いに持ち込む。
パワードスーツを着たマックスと、全身を鎧で覆うフォーエバーキング。押されているのはマックス。
敵の力の源を悟ったマックスは驚愕する。
「ドリスコル。さっきのレーザー…まさか、サブエネルギーを!」
「ああそうだ。そして、私の名はフォーエバーキング。その名は捨てた!!」
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人類とエイリアンの技術を限界まで折り合わせた配管工たち。その隣では、彼らの肉弾戦とはまた違った戦いが繰り広げられていた。
「チョコマカとうぜぇぞ!!」
ケビンはその4本腕でグウェンを執拗に狙う。炎が、ダイヤがグウェンを仕留めにかかる。
しかし、グウェンはあらゆる手を使ってすいすいと躱す。
「だりゃあっ!!」
ケビンの右ストレート。炎を纏ったそれは、ガードすれば一瞬で焼けこげるものだ。
グウェンは彼の挙動を見て冷静に対処する。
軽く跳躍をしたかと思うと、上方に紫色のパネルを設置。そのパネルを両手で掴み、反動をつけケビンを軽々と越す。そして、無防備な背中に手を伸ばす。
「バーン=エクスプロイド!!」
設置型の爆発魔法。両腕がほのかに光ると、その光はケビンの背中の羽に移る。そして、オレンジ色の閃光が周囲を照らし、
BO!BOMM!
黒煙を撒き散らす。敵の視界を奪ったところで、今度は側面から空中後ろ回し蹴りを決める。
PANN!!
幼少のころから習う【空手】
エネルギーを実体化させる個性【マナ顕現】
そしてつい最近取得した【魔法】
3つのスキルを使いこなすグウェンは、もはやサイドキックの次元を超えており、日本でもトップランカーを張れるほどの実力に達していた。
惜しむらくは、
「チクチクかゆいんだよぉ!」
敵が、プロヒーローをも超えた化け物であること。
幸いというべきか、頭に血が上ったケビンは、ベンではなくグウェンに標的を変えていた。グウェンは周囲を掛ける一方で、ベンのいる場所には近づかないようにしていたからだ。
しかし、それも時間の問題。ケビンの気分次第でベンは再び狙われる。ウォッチも、サポートアイテムもない今、自分が一番無力なことを自覚しているベン。
(ケビンかフォーエバーキング、どっちかの隙を作れば2人がなんとかしてくれる。けど、どうやっ…!)。
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身体能力を飛躍的に向上させるパワードスーツ。その防御力もただのヒーロースーツとは一線を画す代物だったが、敵が使うのは異次元のエネルギー。時間が経てば経つほど、マックスの体はボロボロになってゆく。
「どうしたマックス。もう終わりか?」
しかも敵は片手しか使っていない。抱えられたカプセルは一度も彼の腕から離れることが無かったからだ。
呼吸を荒げながら、マックスは忠告する。
「っはぁ、っはぁ、ッド、ドリスコル。サブエネルギーを使うのはよせ!。それは不安定すぎる!」
「不安定か…私も隊を止めるときに言われたよ。
【お前は不安定すぎる】とな。ヒーロー免許も剥奪され、私は全てを失った。何年も国に尽くしたのにだ!」
「なぜ、今になってこんなことを!。半年前、基地のラシュモア山にサブエネルギーが移されたが…それを狙ったのか!?」
「いいや、全ては、この装置だ」
カプセルを見せびらかすようにマックスに突き出す。
「すぐにわかったよ。日本での雄英体育祭。そこで間抜けに力を誇示するお前の孫を見てね。これさえあれば、この最強のエイリアンテクノロジーがあれば、世界をも手中に収めることができる!!」
自らに陶酔するフォーエバーキング。彼の中に、国民のために尽くしたドリスコルはもういなかった。
目の前にいるのは、ただ我が欲望に従う半機械人。それを悟ったマックスは、オムニトリックスの開発者の意思を伝える。
「それは、宇宙を平和に導くためのものだ。私利私欲のために使うものじゃあない」
「はっ!これが平和のため?笑わせるな!この世のすべてを凝縮したような力の塊。それがこの時計だ!誰でも使える、誰でも無敵になれるこの時計が、平和をもたらすものか!」
どれも事実。その設計の意図は【平和】であっても、用途が【戦争】のためになったものはいくつもある。長く生き、長く戦ってきたマックスは思わず口をつぐむ。
しかし、
「違うね!」
「なに?」
幼少のころからヒーローに憧れ、そして1年以上ウォッチと付き合い続けた彼は、違った。
「オムニトリックスは、戦争のためのものなんかじゃあない!宇宙で最高で、最強の!」
いつの間にか元気を取り戻していたベンは一気に距離を縮める。
レーザーを出していたのはいつも右腕。直観的に気づいていたベンは、彼の左後ろを取る。
そして、左腕に抱えられたカプセルへと腕を伸ばす。
「ボクの宝物だ!!」
ガン!
骨と金属の衝突音。
フォーエバーキングの鉄腕がベンの顎に入る。カプセルを持ったままの一振りだったが、それでもベンの体は壁まで吹っ飛んだ。
そのまま無言でカクリと首を下に向ける。
「ふっ。所詮こどもか。」
孫を殴られ、頭に血が上るマックス。
激昂したかと思わせるその唇の震え。
しかし、思いのほか冷静であった。
「…ベ…?!ふっ!!」
ベンの攻め方を参考にし、敵の左側に回りながら弾丸を飛ばす。
当然、ただ攻撃を受け入れるフォーエバーキングではない。レーザーを放ち相殺する。
が、左からくる弾を右手で止めることを強いられているため、少々苛立ってくる。
「っち!さすがにしつこいぞ。もう諦めどきかと思わないかね?マックス!!」
PYYUUUNN!!
さきほどよりタメを長くして出力を上げたレーザー。弾丸を弾き飛ばしたながら、向かう先はマックス。
「ぐあっ!」
正真正銘、銃は空中に放り出され無防備になる。地面に転がったマックスに対し、右手を向け、見下ろす。
「これで終わりだ。まったくいつもお前は余計なことをする…っがはっ!!?」
BATTIN!!
セリフを締めくくる前に、彼の左腕に衝撃が走る。とともに空中にカプセルが投げ出される。
振り返ると、そこには、レーザー銃を構えたベンの姿が。
「そのじーちゃんの、孫なんでね!!」
彼の手に持つ銃には見覚えがあった。なぜなら、始めに自分が真っ二つにした銃だったからだ。
落とした銃を拾い、隠し持っていたベン。
(一度倒されることで私を油断させたのか!?)
「ぬおぉぉぉぉ!!」
宙を舞うカプセルに手を伸ばす。
先の衝撃で、ダンゴムシのように丸まっていたカプセルはカシャリと開く。
空中で、その中身は飛び出す。
自由落下していくのは戦争を招く兵器か、それとも平和をもたらす宝物か。
その行く末は、
一人の少年に託された。
CAPTURE!!
気のせいか、10何種類ものエイリアンの影が、朧気に見えた気がした。
「ふざけるなァぁぁぁ!!」
怒り狂いとびかかろうとするも、マックスが許さない。故障しかけのアームで、敵の体を取り押さえる。
「ベン!!こっちは大丈夫だ!!グウェンの方へ!」
祖父の声に、ベンはこくりと頷き、走る。
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「ったく!そろそろ疲れなさいよ!!」
狭い室内を駆け回るグウェン。数分間のヒット&アウェイで時間を稼ぎ、あわよくば敵の消耗を狙っていた。
が、無尽蔵のスタミナを有するケビンにそれは愚策だった。どころか、
「だんだんお前の動きもわかってきたぜぇ!!」
魔法にもマナにも適応し始めたケビンは、彼女の動きを先読みする。左腕を地面におき、ダイヤを走らせ着地を狙う。
「きゃっ!」
体を回転させ避けるも、足に痛手を負う。先の様な動きはもう望めない。歯を食いしばりながら見上げると、そこには異形が立ちはだかる。
「だいぶ面白かったが…これで終わりだぁ!!」
「ケビン!!」
拳を振り終える前に、彼の名を呼ぶものがいる。
振り向くとそこには少年。出会って数か月だが、もう自分との因縁は誰よりも深い。
初めてエイリアンの力を吸収した時から、無性にベンにいら立ちを覚えていた。だが今、やっとその縁を断ち切ることができる。
「お、自分から死にに来てくれたのか?」
拳を打ち鳴らし、ケビンは近づく。2組の腕はメキメキとその強度、硬度を上げ、殺意を具現化したような形となる。
そんな狂嬉する化け物に対し、ベンは真っ向から挑む。
「ほんっとに…さっきは散々やってくれたな!?今度は…こっちの番だ!!」
もう怖いものはない。なぜなら宝物は我が手にあるのだから。
変身先は、朧気だが記憶に残っている、ウェイビッグ。全ての悪を打ち滅ぼさんと、ベンは全身全霊でウォッチを叩く。
「ヒーロータイムだ!!」
BASSHI!!
が
「あ、あれ?」
ウォッチは返事をしない。ただ、彼の思いとは無関係に、仄かに青く光るのみ。
最もおもしろかった章
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(A)雄英受験、入学
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(B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
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(C)GW
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(D)USJ(ケビン戦)
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(E)体育祭(ウォッチの故障)
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(F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
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(G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
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(H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
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(I)神野編(エイリアンフォース)
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(J)終章