【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜   作:レッドファイル

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神野事変から3か月…物間君の心の声です。


92話 敵飽和社会

「拳藤!早くしないと遅れてしまうよ!!」

 

「ごめんごめん!準備に手間取っちゃって!」

 

まったく、準備は昨日のうちにしとかないと。B組委員長がそんなザマじゃあA組に負けてしまうだろう。

 

靴をつっかけてリュックを背負う拳藤。その顔は普段通り、溌溂と照らすような笑顔だ。

 

だけど、僕にはわかる。その顔が作ったものだと。

 

…まあ気持ちはわからないでもない。

 

3か月前に起きた神野事変。そこではA組のベン=テニスンがヒーローを襲った。

 

そして、自らをエイリアンだと称し、地球を支配すると宣言した。

 

テレビやネットでは、【洗脳された】【敵の個性による影響】なんて言われている。

 

だけど僕は…おおぴっらには言えないが、正直納得している。

 

なににだって?

 

決まってる。

 

ベン=テニスンがエイリアンだということさ。

 

理由はいくつかあるよ。

まず“エイリアン”という単語。

 

元々、彼は自分の異形体のことをエイリアンと呼んでいたらしい。これはヒーロー科でも有名なことさ。始めは幼稚だなと思っていたが、彼自身がエイリアンであるならば、この呼称もおかしくない。

 

そして二つ目の理由。むしろこっちがメインの理由だね。

 

僕が彼をエイリアンだと思う理由。それは、

 

彼が無個性であること。

 

これは、先生たちも気づいてないことだ。多分、この学校で知っているのは僕だけだろう。

 

彼の変身は個性によるもの。そして、あの時計はあくまでもサポートアイテムだと本人は言う。

 

だけど、それなら()()はおかしいんだ。

 

僕は体育祭での騎馬戦を思い出す。

 

体育祭で彼の個性をコピーしようとしてもできなかった。

 

確かに、個性操作センスに優れた僕でも、上手く相手の個性を発揮できないときがある。

 

スカといってね。蓄積系の個性の場合、その蓄積の結果は得られないんだ。

 

もし、【力をストックする】個性があったとしよう。僕がその個性をコピーしたとしても、僕は持ち主並みのパワーを発揮できない。なにせ、僕自身がストックしていないからね。

 

うん、話がそれた。つまり、僕が言いたいことは、スカであろうとも、個性自体はコピーして、そして相手の個性を大まかに理解できるんだよ。どんな個性でもね。

 

だけど、彼に触れた時、個性そのものを感じ取れなかったんだ。

 

だけど彼が変身していたのも事実。おかしいよね。個性がないのに異形に変身できる。

 

この不可解な現象は、“彼がエイリアンだから”で解決することができるんだ。

 

だから、僕は彼がエイリアンだとしても大して驚かない。というか、やっぱりねという感想になる。

 

地球を支配する、なんてのは予想外だったけど。

 

塗装が剥げ道を歩きながら、僕はそんなことを考える。うっかり、拳藤の話を無視してしまうくらうに。

 

「物間、聞いてる?」

 

「ああ、ごめんごめん。なんだっけ?」

 

「ったく。人には早くしろっていう癖に。目的地についてだよ。今から電車で行くんでしょ?」

 

「ああ、京都の片田舎さ。大きな病院が近くにあるらしいけど…しっかし、なんで僕たちB組は地方で、A組は雄英担当なんだ?審議を申し出たいね」

 

「言っても仕方ないわよ。今はどこもヒーロー不足だし‥」

 

「…まあね」

 

そう。このヒーロー飽和社会で、今日本はなぜかヒーロー不足に陥っている。

 

 

今から1か月前。つまり、神野事変から2か月。

 

その頃から、急に行方不明者が増えた。だんだんと、なんかじゃなくて、明らかな急増。A組の中にも家族が攫われた者もいるらしい。

 

そして、それに伴いとある敵が現れるようになった。

 

体型は様々。だが、全員に共通して脳が露出している。手足の指は三本ずつ、血の色に染まり、顔にはギョロギョロと蠢く単眼が付いている。

 

ギィギィと鳴くその姿は生理的な嫌悪感を感じさせる。スーツなのか肌なのかわからないが、とにかく全身が全身は腐った卵のような色をしていて気持ちが悪い。

 

彼らは神出鬼没で、3~4人のグループで現れる。そして、誰彼構わず民間人をさらっていくんだ。

 

もちろんヒーローが応戦する。

 

脳無と思しき敵なので、複数個性持ちなのかと怪しまれたが、そんなことはなかった。使える能力は一つ。

 

電気を出したり、炎を吐いたり、と一個体の能力は異なるが、単一能力しか持っていない。

 

だけど、その火力は想定を遥かに上回るものだった。

 

彼らはいわゆる雑兵なのだろう。ショッカーみたいなね。

 

にも拘らず、1人1人の火力は、現トップヒーロ― エンデヴァーと同等かそれ以上だ

った。

 

誰が言い出したのかわからないが、そんな彼らは

 

DNAリアン(ディー・エヌ・エイリアン)と呼ばれた。

 

1体倒すのに、ヒーローが10人ほど必要とされる。そのうち7人は死傷するのだ。

 

一体一体が未曽有の火力を持つDNAリアン。

常にチームを組まねばならず、その中の誰かが犠牲にならなきゃならないヒーロー。

守るべき対象は、日本に偏在にする“一般人”。

 

歪な戦力関係の結果、ヒーロー飽和社会で、ヒーロー不足に陥ってしまった。一般人をヒーロー育成施設に避難させているが、それも焼け石に水。

 

そして、この危機的状況を少しでも緩和するため、パトロールや雑用係として駆り出されたのが僕たちヒーロー候補生だ。

 

基準としては一度でもヒーローとして働いたことのある人間。職場体験をしたことのある僕らはギリギリその基準を上回り、緊急特別ヒーロー免許を渡されることとなった。

 

まさに超法規的措置。それだけ日本が狂ってきているということだね。その狂った余波で、僕らB組は地方ヒーローの援助をしに行くこととなったわけだ。

 

不満げな態度の僕を優等生の拳藤は嗜める。

 

「田舎だろうとどこだろうと関係ないよ。皆、学校とか病院に避難してるんだから。恐怖に震える人を救けるのが私たちヒーローでしょ?」

 

「知っているさ。だからこそ、我が雄英高校に避難してきた市民の皆様を守りたかったね」

 

「まったく!あんたはホントに!」

 

あきれ顔の拳藤。

 

一時期は部屋に籠ったきりだった拳藤。近頃やっと元気を取り戻してはいるが、それでも僕にはわかる。彼女が無理をしているのだと。

 

確かに、弟のようにかわいがっていたベンテニスンが指名手配となっては穏やかにはいられないだろう。

 

全国民、いや、全世界に彼はその顔を知られてしまっている。

【エイリアン】【地球を支配する】という言葉とともに、彼の顔はネットに、テレビに出回った。

 

しまいには彼に便乗して好き勝手する奴らも出てくる始末。確か…異星概観信仰派、だっけな?

 

まあ、そんな下衆達から市民を守るのも僕らなわけだが…

 

「そういえば拳藤。最近緑谷とよく喋っていたね。あれはなんだったんだい?」

 

「えーと…いや、何でもないよ」

 

彼女は再び作り笑いをする。

 

まったく、最近秘密主義が過ぎるよ…

はぁっ!はぁッ!はぁッ!どうして…!!

 

薄暗く、雨の降る夜。私の後ろからはバシャバシャと何人もの足音が聞こえる。

 

「キャッ!!」

 

ズシャッ!!

 

「さあ捕まえたぜ!!その姿、お前、エイリアンだろ!!」

 

武器を身に着けた男たちが私を囲む。夜の雨の中では私の助け声など誰も聞いてくれない。それとも、聞こえてるけど、助けてくれないのだろうか。

 

「私はエイリアンなんかじゃないの…ただ、避難所に行こうとしているだけで…」

 

「うそつけぇ!!その図体!その顔!どう見ても人間じゃねぇ!!」

 

2mを超える体躯。【狐】の個性の影響で人間には見えない顔。まさに異形といった風体の私は土曜の夜、暴漢たちに襲われていた。

 

この前までは普通に生活してたのに…

 

あの日、ヒーローが負けた日、地球を支配すると宣言した少年がいた。その子は異形系で、自らをエイリアンだと言い放った。

 

それ以降、周囲の異形系を見る目が変わった。DNAリアンと呼ばれる化け物たちが出てきて、行方不明者も増えた。

 

世間は、異形系に対する偏見を持ち始めたの。

 

異星概観信仰派と呼ばれる、“自分達がエイリアンであることを受け入れ、個性を自由に使うこと”を主張する異形団体が出てきたせいで、余計に異形系は肩身が狭くなった。

 

水たまりに映る私の顔。確かに、普通の人間には見えないかもしれない。

けど…

「私はただの人間!人間なの!信じて!」

 

だけど、社会は思い出した差別意識を簡単には手放さない。

 

「うるせぇぇぇ!!」

 

GATYAN!!

 

改造の施されたネイルガンが目の前に構えられる。

 

「ヒッ!!」

 

ぎゅっと目をつむる。ただ、私は無抵抗でいるしかなかった。それが、私が無害だという唯一の証明だから。

 

ただ、そのまま目を瞑ったまま。雨の降る音だけが私には聞こえる。

 

だけど、いつまで経っても私の大きな耳に銃声は届かなかった。おかしいなと思って、恐る恐る目を開けると、彼らは震えていた。

 

「お、お前もこいつの仲間か!?トカゲ野郎!エイリアンか!?」

 

その質問は私じゃなくて、後ろに来ていた誰かに聞いているようだった。だけど、不思議だ。私もかなりの身長なのに、彼らはさらに上を見ている。

 

「あー…とりあえず、この人は無関係そうだし、止めてくれない?」

 

野太い声が後ろから聞こえる。だけど私は震えて振り返れない。

 

「知る…」

 

銃を構えなおした暴漢だったけど、語尾が萎んでいく。

 

「か…よ…」

 

闘いのことは分からないけど、目の前の男は見るからに戦意を喪失しているようだった。暴漢は徐々に目線を上げながら、最後には銃も手放す。

 

身震いをした後、彼は背中を向ける。

 

「んな姿で出歩くんじゃねぇよ!!ま、紛らわしぃんだよ!!」

 

そう言葉をぶつけ、逃げていく暴漢達。

 

息を吐き、胸に手を当てる。恐怖が徐々に解けゆき、安堵の感情が心に染みわたる。

 

よかった…

 

だけど…まさか、自分がこんな目に会うなんて。

 

「あっ」

 

ホッとしながらも、思い出す。私を助けてくれた人を。

 

私は振り替えってお礼を述べようとする。暴漢たちを立ち姿だけで震え上がらせた人。そう思いつつ瞳に入れたその姿は、傘を差した少年だった。

 

「あ、あれ?あなたが救けてくれたの?」

 

私より年下っぽいし、ヒーローでもなさそう。それに、身長もそこまで高くない。

キョロキョロとあたりを見回すも、この辺りにいるのは私と彼だけ。

 

どうしてあの人たちは逃げていったのかしら…

 

「んー…まあ、そうだね」

 

さっきみたいな野太い声じゃない。別人なのかしら。それとも…いえ、とにかくお礼を。

 

「あ、ありがとう」

 

「別に。大丈夫だよ。お姉さんも気を付けてね。まだもう少しかかるからさ!」

 

「かかる…?」

 

「ああ、いや、こっちの話!じゃ、ボク行くよ」

 

私に傘を差しだし、タッと駆けだす。その瞳と顔つきは外国の血を引くことを如実に露わした顔つき。

 

えっと…

 

「そ、其の…お名前は…」

 

私が尋ねると、足を止める彼。顎に手を当て、ポリポリと掻き、

 

「名前…えーと…ジャミン…ジャミン=カービィってことで!」

 

そう言うと、少年は再び駆けて行った。雨は少しだけ止み始めていた。

 




次回から物語が動きます。

最もおもしろかった章

  • (A)雄英受験、入学
  • (B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
  • (C)GW
  • (D)USJ(ケビン戦)
  • (E)体育祭(ウォッチの故障)
  • (F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
  • (G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
  • (H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
  • (I)神野編(エイリアンフォース)
  • (J)終章
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