【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜 作:レッドファイル
【帝国ホテル前】
茶髪で緑色の瞳の少年は思わせぶりな笑い方。
「まさか…」
「ああ、そのまさかさ。今、5都市を起点としてこの国全域に敵が発生している。3月31日、今日、日本という国はその姿を変えるのさ」
意気揚々と話す少年の姿は紛うこと無きことなくベン=テニスン。敵連合に誘拐され、その後オールマイトを意識不明に追いやった雄英生徒。
謎のエイリアン宣言をしたこともあり、世間の大多数は「敵連合に洗脳されたんだろう」と考えていた。
だが、時が経ち、DNAリアンが増えていく中で、エイリアンの存在を認めるべきだとする異星概観信仰派もまた明らかにその数を増やしていた。
そんな渦中の少年は今、緑谷出久の前で脳無たちを従えている。
彼らを盾にして、悦に浸るベン=テニスンに対し、緑谷はマスクを被ったまま答える。
「そんなことにはならない。」
「ふぅん。なぜ?」
「この国には、決して諦めないヒーローがいるからだ」
「そのヒーロー達は半年前に僕に倒されてたけどね。」
彼の言う通り、エンデヴァーを始めとするトップヒーローは彼に敗北を喫していた。それも、ダイヤモンドヘッドただ一人に。
それを思い出させるかごとく、自身を指さし語る。
「この、ベン=テニスンに」
「お前がその名を騙るな」
思わず語気が強くなる緑谷。
「はぁ?」
耳に手をかざし聞こえないふりをする少年。
ラチが空かないと思ったのか、緑谷はカブリを振り、
「…お前のホラ話に付き合うつもりはない。何がなんでも、ベン君の居場所を吐いてもらう。」
腕を構え、臨戦態勢へと入る緑谷。
顔を覆うフードは解れ、口元を隠すマスクにはヒビが入っている。修理をする者がいないため、両手のグローブも血と泥に塗れ。半壊している。
みすぼらしいとまで言えるその姿を鼻で笑う少年。トントンと脳無の背中を叩く。
「はは。まあまずは、この脳無たちを倒してから言ってほしいね。確か…ハイエンドとか言ったか?」
彼の目の前にいるのは3体の黒い脳無。それぞれ、フードの様なものを被ったり、アーマーを身に着けていたり、髪を伸ばしている。
その6つの渇いた目が緑谷に向く。
「ア…アァ…お、マエ、つヨい…か!!?」
3体のうち、最も体の大きな個体が緑谷めがけて突っ込んでくる。
「ガガガキキィィ!」
怪音波を鳴らしながら腕を撓らせる。丸太のような分厚さのそれは筋肉の鞭。肘部のジェットを点火し速度を上昇。筋鞭の先端はマッハ2を超える速度に。
【筋肉増強】【伸縮】【剛硬化】【ジェット】。
複数の個性を使う万能感がハイエンドの脳を満たす。彼らにしかできない業。戦いだけを求め生きていた彼は、圧倒的強者の立場に酔いしれる。
(ああ…きも…ちい)
が、
SMASH
気づいたときには、脳幹は彼から吹き飛んでいた。
「ア、 ガ…」
ドサリ、と萎んで倒れる。黒い肉塊となった哀れな一体のハイエンド。その一歩前には、ただ拳を突き出した緑谷がいた。
その場にいるハイエンドたちには何が起こったかわからなかった。
仲間の頭部が急に消えた。
不可思議な自体に理解が追い付かないが、緑谷の厚手のグローブがじっとりと血に染まっているのを見て、
【やられた】のだと気付いた。
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依然状況は多対1。恐怖の感情を持たない彼らは冷静に動く。
ただ、機械のように学習し、自身の快楽と命令に従うのみ。
(あの子ども…目でとらえられぬほどの拳…なら、範囲攻撃で…)
思考能力に長けた女型のハイエンドは、最適行動に映る。
【炸裂】+【液状化】
体の関節が風船のように膨らむ。かと思うと
パン!!
と破裂し、彼女の体液が大概に放出される。
液体は周囲へ飛散。積んであったトラックや瓦礫に着弾すると、それらを粉々にせんと破裂する。
広範囲かつ殺傷力の高い攻撃。身体強化を有する敵に対しては最適な行動。
しかし、緑谷は既に後方へ飛んでおり無傷。どころか、空中で手足を動かす様子もなく、上下左右に動いている。
まるで、相手が何をするかわかっていたかのような彼の眼に、一瞬彼女はあり得ない感情を抱いた。
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【煙幕】の出力を調整しつつ、彼はハイエンドたちを白い霧に包んでいく。濃密な煙のなかで、彼らの視界は一面煙景色。強化した視力は意味をなさなくなる。
(だが、それはやつも同じ。)
そう考える女型ハイエンド。その考えは間違っていなかった。
敵が緑谷出久でなければ。
自身の腕すら見えないほどの濃密な煙。その中で、まるでどこに誰がいるのかわかったように動ける者がいた。
GRAAAP!
「エギャッ…!!」
女型のハイエンドは、突如眼前に現れた緑谷に喉元を潰された。
気管系統をやられ、すぐに気を失うハイエンド。いかに人外だろうと、個性を複数持とうと、酸素が必要なのは変わらないらしい。
残されたのはアーマー持ち。
恐怖という感情を持たない彼。なのに、先から悪寒が収まらない。
(敵の…思い通り…煙を)
BOWWWW!!
【器官創造】により巨翼を生み出し、羽ばたかせる。自身を囲っていた煙幕は晴れ、視界の確保に成功する。
開けた視界の端に、緑谷を確認。網のように分裂した腕で敵の左腕を握ることに成功。
その万力の握力で握り潰す。
はずが、なぜかすり抜けてしまう。
再び空中へと逃げる緑谷を訝し気に思う。
(確かに…つかんだはずだが…)
疑問に思うのも束の間。
体に違和感を覚えると、すぐにメキメキと骨が悲鳴を上げる。
見ると、謎の黒い縄に縛られ、身動きが取れない。その出発点を見ると、緑谷の左腕から伸びている。
空中に浮遊して、悠々と見下ろす緑谷。
縄は何重にもなり、溢れるパワーをもってしても千切れない。骨を何本も何本も生成するが、骨の膜を作る端から破壊されていく。
どころか、時間が経つごとに縛る力が強まり、最後には
「ギュエッ!!」
体中の骨が砕かれ、ただ、這いつくばる蛸となる。
(こ、個性を…複数…)
皮肉にも、複数個性を持つために改造され、最高進化したハイエンドたちは、
純正の複数個性持ちによって地に伏すこととなった。
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赤黒く変色したスーツに、さらに返り血を浴びる緑谷。しかし彼は払う様子もなく、ただ目の前の敵を見据える。
「さあ、次はお前だ」
自身を守る盾がなくなったベン=テニスンは、意気揚々と宣う。
「やるじゃないか。ハイエンド3体を1分もかけずに! 僕みたいなエイリアンでもないのにね」
「…ベン君はエイリアンじゃない。オムニトリックスで変身してる、ただの…人間だ。」
「へぇ…そんなに信じてたんだ僕のこと。」
まるで、これまでのベンとの時間を馬鹿にするようなベン=テニスン。その顔にいら立ちを覚える。
「…お前はベン君じゃない」
「あっそ。じゃあこれを見ても」
腕に嵌めているガントレットを操作し、彼は変身する。
QBAANN!!
「同じことが言えるかな?」
その身を赤くした、4本腕の大男へと。
何度も、何度も見たその姿。紛れもなく、ベンが変身したエイリアンだった。
動かない緑谷に対し、彼は容赦なく攻撃を開始する。
「おらぁっ!!!」
種族としての格の差を見せつけるように、至近距離から正拳突き。
当然、緑谷は避けるが、その風圧だけでマスクは吹き飛ぶ。
「っ…」
そんな彼の様子を気にも留めず、4本腕は嘲り笑う。
「拳一振りでこの威力!!これがテトラマッドの力だ!お前みたいな地球人が叶うとでも?劣等種族め!」
拳を握りしめる緑谷。
言葉での説得は不可能だと踏んだ緑谷。あるいは、始めから諦めていたのかもしれない。
ただ、敵を制圧することだけに集中する。
左手をかざすと、保護プロテクトがはじけ、黒鞭が射出される。さきほどのハイエンドたちを捕まえていた時とは比べ物にならない物量。
初めて黒鞭が顕現した時よりも、黒く、圧倒的なエネルギーだった。
下手に扱えば、周囲の建物すべてを飲み込む程の黒鞭。
それら全ては、目の前の赤いエイリアンへと向かい、縛り上げる。
何百本の黒鞭は、ちぎられては再生し、拘束を繰り返す。物量を活かした、∞拘束術。
4本腕だろうとも抜け出せない。なぜなら、一本一本の腕に力が入らないような縛り方をしているから。
それすなわち、緑谷が4本腕との対戦を想定していたことを表す。
「んっ!!っぐッ!!」
さすものテトラマッドも全てを断ち切るには苦労する。それに、無理な拘束力を見せる黒いこれが長く保つとは思えない。
そうふんであえて拘束される。
そんな彼に、緑谷は淡々と話す。
「お前はベン君じゃない。」
何度も、何度も聞いたその言葉に辟易するエイリアン。
「はぁ。それしか言わな…」
「まず、合宿前日、麗日さんがお前を見ている。ベン君そのものといえる容姿だったけど、どこかおかしかった、と」
ギコッ
小さくつぶやく緑谷。
思い当たる所があるのか、エイリアンは舌打ちをする。
「…あの醜悪な食べ物のせいだ…」
「それに、オムニトリックスも、ベン君のものとは異なっている。もし、ウォッチが変わったのなら、ベン君はいの一番に教えてくれる」
ギコッ
ベンの性格を知る緑谷だからこその視点。
「はっ。確かにこれはオムニトリックスよりも優れたものだがね」
「そして最後に、」
ギコッ
「そいつの名前はテトラマッドじゃない」
ギコッ
「フォーアームズだ」
誰よりもエイリアンの名前に拘っていたベン。そんな彼が名前を忘れるわけがない。
いくつもの証拠を提示され、ため息をつく敵。すぐに緑谷へと反論する。
「…で、俺をどうする気だ?このよくわからない縄ももうすぐ千切れる。そうすれば、お前なんか一撃だ。テトラマッドのタフさは宇宙でもトップクラス。お前ら地球人にダメージが与えられる…か…?」
そこで、初めて疑問を浮かべる敵。
なぜ、目の前の緑谷は、
喋りながら右手を曲げ伸ばししているんだ、と。
・
・
・
何か月前だったかもう思い出せない。それほど日が立ったような気がする。
あの日、継承者が顕現する空間で言われた言葉。衝撃だったが、悪くはないと思えた。それだけ、自分が強くなれるから。
本来、緑谷が使えた能力は全ての能力の20%まで。これを超せば、身体に異常をきたす。
だが、初代が警告、注意、宣告したことが現実になり始めてから、この上限は意味をなさなくなった。
【君の体は、人間からかけ離れたものとなる】
体の変化はただ姿形が変わるだけではなかったのだ。異形化するだけ、個性が適合する体へと進化していったのだ。
【危険感知】は害意や危険を教えるだけでなく、敵の居場所や攻撃を正確に予知するものに。
【浮遊】は自身への重力干渉方向を変えられる個性に。
【黒鞭】や【煙幕】も【発頚】もその使用許容量は100%を優に超す。
そして、力の源流である【OFA】も、とうに100%を超えていた。
彼はOFAの全てを引き出すことに成功していた。
人間の尊厳を捨てることで。
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・
どんな存在であろうとも、どんな姿になろうとも、やるべきことは変わらない。
困っている人を救ける。
あの日、隣で見た拳藤さんの涙。病院で目を覚まさないオールマイト。そして…
背中のマントからは熱い何かが伝わってくる。
ただ、平和の象徴になるため。
今を変え、また皆が笑えるように。
親友が、また馬鹿をできるような。
そんな社会にするために。
敵を討つ。
敵を縛る黒鞭は何重にもなる。その全てを収縮させる。
テトラマッドの方が重いため、引き寄せられるのは緑谷。猛烈な勢いで敵に向かっていく。
【浮遊の重力移動】
+
【黒鞭の限界張力】
+
【発頚の超過蓄積】
+
【OFA・100%】
今の緑谷ができる、最高、最適の個性で、
偽物を殴る。
「OFA・Puls Chaos-」
SMMAASHH!!!!!
8人の想いを乗せた緑谷の拳はテトラマッドを撃ち抜く。
周囲の水たまりは衝撃で残らず吹き飛ぶ。降りしきる雨ですら、一瞬彼らの周りから消え去る。
ただ、静かに、倒れ込むテトラマッド。
(…ただの人間のパンチ…で、だと?)
しかも貰ったのは腹部への一発。たった一発である。たったそれだけで、無敵のエイリアンは地に伏せる。
「お前は“エイリアンには敵わない”といったな」
偽物が見上げると、緑谷が見下ろしていた。先ほどの衝撃で、マスクが取れているため、その素顔を始めて偽物は拝む。
写真では見ていた。緑色の髪にそばかす。憎たらしいほど屈託のない笑顔。それが緑谷出久だった。
が、目の前の様相は大きく異なっている。
緑色の髪の毛はフワフワと白髪に、というよりも、まるで煙の様な形状に代わっていた。
袖の破けた左腕はもうなく、ただ黒いエネルギーが腕状に束ねられているだけ。
彼の眼球結膜を黒く変色していた。
全身の筋肉繊維は何倍にも増殖しており、常人のそれとはまったく異なるものとなっていた。
彼の体は、今まで彼が使った個性そのもののように変貌していた。
唯一、変わっていなかった緑色の瞳で、偽物を見下ろし、彼は吐き捨てる。
「僕はもう、
主人公誰だっけ…
最もおもしろかった章
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(A)雄英受験、入学
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(B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
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(C)GW
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(D)USJ(ケビン戦)
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(E)体育祭(ウォッチの故障)
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(F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
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(G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
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(H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
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(I)神野編(エイリアンフォース)
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(J)終章