【完】ベン10 CROSS 〜ボクのエイリアンヒーローアカデミア!〜 作:レッドファイル
(オールマイトは最後の残り火で僕らを守ってくれた。例えその身が朽ち果てようとも。)
右頬にピシリと亀裂が走る。
複数個性どころではない、複数エイリアン化の代償。
痛みもなく、歴代個性をフルパワーで発揮する代わりに、彼の体は少しずつ壊れている。
(だけど、関係ない。)
オールマイトは言ってくれた。
【次は君だ】と。
その通りだ。
彼のように、魂が尽きるまで戦う。
次は、僕の番だから。
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緑谷出久は目の前にはフォーアームズ。
ベン=テニスンしか変身できない異形を見てなお、緑谷は奴が親友ではないと信じ切っていた。
偽物は膝をつき、ただ地面を見る。そして、悔しそうに息を漏らしたかと思うと、光を放ち、元の姿に戻る。
よく知った、少年の姿に。だが、その顔には悍ましいほどの憎悪が刻まれている。
「くそッ…まさか地球人がここまで進化しているとは…」
悔恨の表情を浮かべ緑谷を見上げる。目の上には歪な体のヒーロー。そんな彼を見て偽物は、
「ん?」
と、ひとつ首をひねった。
悔恨の表情から、徐々に驚きの表情へと変わる偽物。ベン=テニスンの皮を被った少年は訝しむ。
「お前…2つとも…」
意味不明な言葉を口走る偽物を冷ややかな目で見降ろす緑谷。すぐにでも倒してしまいたいが、まだベンの居場所を聞いていない。
それに、
「…なんだ?」
敵の言葉が気になった。
返答する緑谷に対し、偽物は答えない。ただ、彼を見るだけ。
そして、頭からつま先までなめるように観察した後、クスクスと笑い、最後には大笑い。
無邪気とは言えない、不気味な笑いに気味の悪さを覚える。
「…何がおかしい」
「っは…いやいや、お前すごいな!後天DNAと先祖返り、両方をコントロールしているのか!?」
謎の2単語。いや、実をいえば片方は聞いたことがある。初代からだ。
個性の先祖返り。個性因子が、オリジナルであるエイリアンDNAレベルにまで達すること。
だが、後天DNAとは…
「マスクの奥からでも伝わってくる。何のことだ?って顔だ。いいだろう。特別に教えてやるよ!」
ベン=テニスンであるならば有り得ない知識量。身振り手振りからも、彼がベンではないことは明白であった。というよりも、誤魔化すことを辞めた様子。
「僕は宇宙から来た…お前らでいうところのエイリアンだ」
「っ…やっぱり…」
「まあ目的な多々あったが、中でもベン=テニスンへの復讐は最も達成するべきものだった。」
「なんで…」
「…この姿をみてもわからないならわからないね。とにかく、僕はこの地球で、最も悪党だと言える人間を探し、そして尋ねた。奴らはまあ、地球の遅れた科学文明の中で、少しは骨のあるやつだ」
「…AFO一派か」
「ああ。そして、奴の相棒ともいえる殻木。あいつは“個性”と呼ばれる力について研究していた。そこで僕は知識を授けたのさ。そのデモンストレーションとして行ったのが、エイリアンのDNAを人間に埋め込むこと」
その先は聞くのもおぞましい話だった。
個性持ちの人間に、エイリアンのDNAを埋め込む。それにより、エイリアンの力と、元々の個性を活性化し、人知を超えた力を生み出す。手術には長い期間が本来かかるが、その効果は絶大。事実、マスキュラーもオールマイト並みの力を得ていた。
そして、もう一つが、
「“個性”の先祖返り。殻木は、僕とは逆のアプローチで人外を生み出そうとしたんだよ。なるほど、さすがに地球人にしては優秀だ、と思ったね」
1人、頷きながら語る。
「“個性”がセレスティアルサピエンのDNAから派生したことは知っているだろ?」
期末試験が終わった後、ベンから聞いた。“個性”は約100年前、ある宇宙人の遺骸が地球に降り注いだことが原因だと。
「ああ」
「地球の個性全ては実在するエイリアンが元となっている。そのことを伝えると奴は嬉々としたよ。人間の可能性は無限だとね。」
殻木は真なるマッドサイエンティスト。自身の研究の為なら人の命などうでもいい。
人類の限界を試す為なら、人間など…そんな破綻思想だった。
そして語るのは、個性の先祖返りの引き起こし方。
「個性因子そのものをα波γ波で負荷をかけ増殖。そしてゼノサイト…多元宇宙寄生生物を装着させることで、それらを安定させる。その結果、個性持ちの人間は、元のエイリアンの力を最大限引き出すことができるのさ」
まるで会社のプレゼンをするかのように、自信満々に、誇らしげに語る偽物。
「もちろん、寿命は縮まり、人格は破綻し、生ける屍となるがね。お前は…人格に影響は出てないようだけど…」
その後に続く言葉を緑谷は容易に想像できた。
力を使えば使うほど、体を酷使すればするほど、体が自分のモノではなくなっていく感覚がある。
それこそ、おそらく最後は、個性そのものになって消え果てるのだろう。
だが、
「僕のことなんてどうでもいい。個性の先祖返り…そんな人を弄ぶような真似は…絶対にさせない…!!」
エネルギー体となっている黒い拳を握り、再び戦意を露わにする緑谷。
そんな彼をあざ笑うように、偽物は指を鳴らす。
「いいや?もうしてる」
得意げな笑みを浮かべたと思うと、紫色のオーラが周囲に点々と発生。うち3つからは、DNAリアンがぬるりと這い出てくる。
【もうしてる】【出てきたDNAリアン】【個性の先祖返り】…3つのキーワードが緑谷の頭を巡り、一つの結論に至る。
「…まさかっ!!」
「ああ、お前らが倒された、倒してきたこいつらが、それだ」
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一刻前同様、3体のDNAリアンが緑谷の前に現れる。
顔の構成パーツは緑色の眼だけ。脳みそは薄い膜に覆われてはいるがクッキリと視認できる。
立ち姿は似たものだが、体形だけはそれぞれ異なっていた。中肉中背の者もいれば、ずんぐりむっくりとした低身長の者も。
(こいつらが…彼らが…民間人!?)
緑谷が躊躇している間に、一体のDNAリアンが空に手を掲げる。
すると、紫色のグローブからドプっと大量の液体が吐き出される。
空を覆うかのような液体は、すぐに春雨となって降ってくる。その液体がなんなのかわからないが、
「っ!」
危機を感じた緑谷は後方に下がりながらスマッシュ。
繰り出された技は一帯の雨を空中へとはじき返す。と同時に液体は橙色の閃光とともに爆発する。
BOOMMM!!
「可爆性の液体か…!」
その攻撃を皮切りに、操り人形は動き出す。
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OFAを継承し、エイリアン化までした緑谷。地球上で最強だと言える彼は、たった3体のDNAリアンに手こずっていた
その理由は、
3体の能力と、
目の前の敵は救うべき人間だということ。
DNAリアンを無視し、偽物に突進しようとするも、コンビネーションを駆使した哀れな人形に阻まれる。
相手は3体。
爆液を撒き散らし、攻防を計る敵。
身体が金属の様に硬く、重く、一撃を狙ってくる敵。
そして、特に厄介なのは、
「ギぃッ!!」
「ぐッ!?」
彼らの中でも特にこじんまりとした個体。
おそらく、定めた対象を自身の元に引き寄せる力。
緑谷が行動しようとするたびに仕掛けてくるため、迂闊に飛ぶことすらできない。緑谷が対象となった時点で引き寄せられるので、危機感知も意味をなさない。
降りしきる雨を吸って、コスチュームが重くなってきた頃、偽物は愉快そうに喋り出す。
「ははっ。楽しそうだな。それだけの力で鬼ごっこするのは」
「っく…」
すぐにでもその口を閉じさせたいが、爆液と引力により動きが制限される。
「あ、それと…言い忘れていたよ」
偽物は唐突に、
「AFOからの言伝さ。確か…【師の追体験を大いに楽しんでくれ。】だったかな」
意味の分からないことをいう。
「…は?」
「【僕も君の気持ちは分かるさ。家族と戦うのは本当、心苦しいよなぁ】だってさ。奴もいい性格してる」
「…あ」
闘いの場に相応しくない、呆けた表情。
全てに気づいた彼は、足を一瞬止めてしまう。
目の前にいる、低身長のDNAリアン。
その能力は“”引き寄せ“。距離に関係なく、視界に入ったものを引き寄せる力。
(だけど…DNAリアン化していてこの能力なら、本来の個性はもっと弱い…)
例えば、
【ちょっとしたものを引き寄せる】個性。
わなわなと震えながら、考える。
『考えるべきではない。もう君の心が持たない。』
優しい、少し高い声で、初代が警告する。
脳内で警鐘は最大レベル。それこそ頭痛では済まない。それほど歴代は、緑谷が思考することを防ごうとした。
知っていたからだ。
彼の母親が、3か月前から行方不明になったことを。
「こ、こいつは…この人は…」
その問いに、偽物は答える。
「いやぁ、念動力系のエイリアンが元だったのかな?だけど、その女は一部の力しか使えなかったから参ったよ。」
そして、DNAリアンを指さし、
「さ、やってみなよ、ヒーロー?」
「――――――!!!」
その言葉を聞き終える前に、緑谷は叫んでいた。
言葉にならない、激昂。何も考えられない。思考ができない。人間としての尊厳も、なにもかもが彼の中から消えた。
ただ、目の前の偽物を消すために動く獣になっていた。
飛びだし、敵意も殺意も悪意も全てを右手に込める。
空気を切り裂き、敵を屠る拳。
だが、彼の拳は寸前で止まる。なぜなら、
体が、後ろに引っ張られたから。
彼の意思に反して体が向かう先は敵。いや、DNAリアン化した
緑谷引子。
無感情に手を翳す 元 緑谷引子に対し、緑谷は一瞬意識を奪われる。そして、作動したはずの危機感知に従わなかった彼は、爆液と、鉛のように重たい蹴りをまともに受ける。
BOMM!!
DGOO!!
「ッが…!!?」
敵の動きは俊敏で、一瞬で拘束される。拘束者は引子。他2体のDNAリアン達は容赦なく、彼を攻撃する。
1人は並々と爆裂する液体を被せ、もう一体は重厚で残虐な体を駆使して骨を砕く。
「カハッ…ぎっ…あぐぁッ…ッ」
そこに意思は介在しない。ただ、主の命令で動く動物のような存在。
普通の人間であればとっくに生を終えているほどのダメージが緑谷に募る。
だが、それでも彼は、偽物を見据え、喉からどす黒い声を絞り出す。
「戻‥せ…!!戻しやがれ…!!」
普段の緑谷からは考えられない口ぶり。当然だろう。母親が化け物にされたのだから。
そんな彼に対し、馬鹿にするように偽物は宣う。
「無理に決まってるだろ?腐りきった果実を元に戻せるか?ゼノサイトで細胞を安定させているだけで、それを取れば朽ちて消えるだけさ。それでいいならその顔についている眼を剥がせばいい」
「っがぁっぁぁが!!!」
フゥッ、ハッ、ハッ、と乱れた息。正常な呼吸でないことは一目瞭然。
黒く染まった彼の眼には、もはや正義の光は無かった。ただ、呪うように言葉を繰り返す。
「…ふざ…けんな…戻し…やがれ…クソ野郎…!!!」
誰かが乗り移ったかのような緑谷。もしかすると、OFAに蓄積された怒りの感情が、彼に呼応して発現したのかもしれない。
「すっごい顔だ!この星のヒーローとは、“英雄”って意味じゃなかったかい?」
羽交い絞めにされた緑谷。偽物を射殺さんとする今も、敵の拳は緑谷の顔面をえぐっている。
それでも、その憎しみだけで、彼は意識を保っている。
そんな彼に飽きたように、偽物は手首を摩る。
「まあ、奴との契約も履行したし、そろそろトドメかな」
その言葉とともに、緑色のガントレットを設定し、変身する。緑色の光を放って。
QBAANN!!
「どうだ?。」
と、反応を伺うのは巨大なトカゲ。いや、恐竜。5、6メートルはある其の体躯は正に太古の王者。二足歩行の巨竜は、地面に溶け込める茶色だ。
土色のエイリアンは、緑色の瞳で緑谷を見据える。
「お前も知らないエイリアンだろう?俺がベン=テニスンではないと知られたからには、生かして置くわけにはいかない」
「くそ…クソ…こ、こ、ころ」
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怒り渦巻く彼の中で、初代は策を考える。
「いけない。これ以上暴走すると、九代目そのものがいなくなってしまう…!」
「だけど初代様…俺たちの干渉も今の小僧は聞き入れないぜ!」
「そもそも、憎しみ自体は俺たちのも影響している。奴がここまで切れているのは仕方がないし、その言葉を発するのも仕方ない…」
「…ぐ、だけど、絶対だめなんだ。ヒーローが、彼がその言葉を発しちゃダメなんだ!」
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「…ころ…」
ヒーローとして、最高のヒーローを目指す者としてあるまじき言葉。
最後のトリガーとなるその言葉を言おうとしたとき、
突如、偽物と緑谷の間に小さな光が発生する。
蛍のような光がその場に留まると、小さな爆発と大量の煙幕を発生させる。
POOOOM!!!
「!?」
突然のことに意識を奪われる緑谷。煙幕の影響か、それとも偽物がその場から吹き飛んだことが影響しているのか、DNAリアン達も動きが止まっている。
「ケホケホッ…煙の設定おかしいよ!」
煙幕の中で、せき込む誰か。
煙のせいでよく見えない。
(いや、この声は確か…)
優しく、すこしだけ高い声。
声の主を推測する一瞬で煙が少し晴れ、背格好が見えてくる。
身長は、自分より少し高い。170㎝ほど。細身の体で、戦う者にしては覇気がない。。
緑色のジャケットを着ており、茶髪の青年は年上のようだ。
髪色は違うが、背格好、そしてなにより、声色から、誰かが判別する。
「し、初代様…?」
疑問符を付けた緑谷の問いに、青年は答える。この緊迫した場に似つかわぬ、子どものような喋り方で。
「はぁ?何言ってんだよ?それより見てよ!新しいオムニトリックス!」
青年はジャケットの手首時計を差し出してくる。
彼の胸元には、【10】と小さなマークが縫い付けられてあった。
・緑谷が個性の先祖帰りと後天DNAを引き起こしている理由…実際には、OFAにより、複数の個性を使用可能に。そして、それらがオムニトリックスとの干渉で先祖がえりを起こし、複数のエイリアンの力を使えるように。偽物から見ると、2つの手術を行ったように見える。
・声優ネタァ!!
・やっと主人公のターン!!
最もおもしろかった章
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(A)雄英受験、入学
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(B)戦闘訓練(緑谷、ベンVS轟、爆豪)
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(C)GW
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(D)USJ(ケビン戦)
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(E)体育祭(ウォッチの故障)
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(F)職業体験(オムニトリックスの秘密)
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(G)期末試験(ゴーストフリークの反乱)
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(H)林間合宿(4アームズマスキュラー)
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(I)神野編(エイリアンフォース)
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(J)終章