神の奇跡。祈っただけで、傷が治り、病が治る。そんな馬鹿な。そう思っていたことが、私にも有りました。
この世界に転生するまでは・・・。
私の名前はメグミ・ヒムラ。前世の名は、田中 恵。中二病に罹患した女子大生でした。
産まれて直ぐに、前世の記憶が甦った時は、びびりましたけどね。日系人の父親と、パツキンの母親に産まれたと解った時はどんな世界?と首を傾げました。
翌年弟が産まれたけど、弟が5歳の頃までは、普通の子供だった。父親から3歳の頃から剣術を習い始めたけど、まぁ3歳にしては物わかりが良いかな程度であった。やっぱり転生者なら、初めに文字を覚えたいと思うはずなんだけど、あまり興味を示さなかったのだ。
私なんか、剣術の稽古は一週間に一度ぐらいしかしないのに。
「あんなキツい事を毎日なんてイヤだっ!」
て、お父さんに言ったら、
「護身術程度に覚えておきなさい。」
と言って、一週間に一度に成った。ありがとうパパン。
まぁ弟は、私と違い剣術の筋が良いようだった。けど弟が5歳の頃、熱で3日程寝込んだ後、メキメキと剣術の腕を上げたように思う。転生者?目覚めたの?と思い、何度かカマをかけたけど、イマイチ引っ掛からない。
丸いパンを上下にちぎり、具を挟んで食べながら「マックを食べたいよね~。」とか鶏肉を食べながら「ケンタが懐かしい。」とか言っても反応が無い。
文字も、必要最低限覚えたら良いって感じで、ドンドン剣術にのめり込んで行った。何が楽しいんだか。
まぁ、可愛い弟だ。私の事をとても尊敬している。私が中二病罹患の結果として蓄えた知識で、発明をした時は、
「姉上は天才ですね!」や、「姉上凄い!」なんて、絶大な賛辞を送ってくる。いや、あれはカンニングですよ?転生者なら、普通に分かる事ですよ?
でもそれに気付かないと言うことは、やはり転生者では無いのかしらん。
それはさておき、この世界は文明水準が微妙に低い。まぁ、魔法なんて便利な物が有るからかもしれない。けど、庶民の生活水準が中世のヨーロッパ擬きと言うのはいただけない。公共のトイレは有るが、石鹸は所謂軟石鹸であった。臭い。確か硬石鹸を作るには、海藻を炭化させたものを使う筈だったよな。でも、ここ内陸だし。
本当に中途半端な世界だ。魔法も、MPとかじゃないみたいだし。絶望した!中途半端なファンタジーに絶望したよ!こうなりゃ、自棄で絶対に近代化させてやる!
お母さんが医者をやっているからか、我が家には書物が結構有った。父母にねだり、文字を教えてもらい、書物を読みまくった。母が言うには、緑神アトラスの神殿は数が少なく、簡単な怪我や病気なら、町医者にかかることが殆どらしい。しかし、神殿で治療を受ければ大体の怪我や病気なら治るらしい。
全くもって、中途半端なファンタジーだよ!J○Nみたいに、ペニシリン作れないじゃないか!!ガッカリだよ!
と言うわけで、井戸に手押しポンプを作りました。お父さんに、銅の加工を出来るか聞いてみたら、出来るって言ったんで頼んでみた。どうやらドワーフの人に教えてもらったんだとか。これで井戸が汚れることが少なくなって、衛生的な水を簡単に手に入れられるな。この仕組みを、領主様に見て貰えないかお父さんに相談したところ、直ぐに見て貰えることに成った。
興味があるとの事で、試しに領主様のお屋敷の井戸に、手押しポンプ2号機を設置したところ、領主様はビックリされていた。お屋敷のお手伝いさん達は大喜び。これで手押しポンプの製作依頼が入り、我が家は一気に大金持ちか?と思ったが、そうは為らなかった。
手押しポンプ3号機を領主様が受け取り、王都で王様に献上したのだ!すると、王様はこの手押しポンプの増産を決定。王都の鍛冶師に手押しポンプの生産を依頼。我が家には発明による懸賞金?が入ったが、それだけだった。
これはいかん!知識チートを狙ってるけど、うちの領主様はそれを活かしきれてない。馬鹿正直にも程がある。
この懸賞金を元手に知識チート第2段!砂糖を精製しよう!弟と一緒に、領都の近くの森に入り、テンサイみたいな植物を見付けていたのだ。それは育ててみたら、やはりテンサイで、手鍋で煮詰めた汁から砂糖のような物が出来た。
弟に一嘗めさせたら、弟は目を見開き私を賛辞する!フフフ、可愛い奴め。もっと誉めても良いのよ?
あれから数年、この植物の育成方法は既に把握している。我が家の庭で既に増産にも成功しているのだ。
懸賞金で土地を買って、テンサイの増産を企んでいた頃、我が家に領主様がやって来た。何でも、世紀の大発明を二束三文の懸賞金だけで済ませた事を気に病んでいたらしい。我が家に態々頭を下げに来たのだ。
なんて潔白で潔い方なのだろう。成る程、うちのパパンが気に入る訳だよ。そして、領民を豊かにするにはどうすれば良いかとパパンに相談して来た。
うちのお父さんは、鍛冶と剣術しか出来ませんよ?と思っていると、領主様は、手押しポンプの発明は、お父さんだと思っているらしい。
「あれは娘が考えた物だよ。」
とお父さんが教えたら、
「あれは本当の事だったのか!?」
とビックリしていた。信じてなかったのね。まぁ良いけど。う~ん、そうだな~。レストニア全体で作った方が、レストニア名産として売り出せるし、良いかなと思って少しイタズラをしようと思った。領主様に紅茶のお代わりを持って行くとき、領主様とパパンの紅茶にスプーン二杯の手作り砂糖を混ぜて持って行った。
領主様は砂糖を口に入れたことが有るのだろうが、一口飲んで、驚いていた。
「ケンジ、お前の家では砂糖を使ってるのか??」
そう、この世界でも砂糖は高級品だ。庶民が度々使えるものじゃない。
「い、いや、私も初めてです。ん?メグミ、お前か?」
「へへへ、ばれた?私がこの甘いのを作ったんだよ?ビックリした?」
「あぁ、ビックリだ。砂糖ってこの辺でも取れるんだなぁ。お父さん知らなかったよ。」
「いや、待て!砂糖はこの辺りでは作られないぞ?あれは南の方の温かい地方でなければ育たないと聞いた事がある。どうやって作ったんだい?」
「あのね・・・」
と言って、ネタばらしの時間だ。パパンも領主様も驚いている。
「この子は天才だ・・・。しかし、この作物を領内で育てて良いのかい?君だけの物にしたら、凄く儲かると思うよ?実際にそれだけの資金は有るんだ。土地を購入すれば、一儲け出来るんじゃないのかい?」
「はい。でも、私一人では、そんなに広い農地を管理できません。ですから、領主様が信頼できる農家の方に先ずは作って貰って、大根等よりも少し高いお金を払います。そして、我が家が建てた工場で砂糖を精製。領主様の信頼できる商人に砂糖を売るのです。我が領は四公六民の税率ですので、儲けの内の四割を税として出し、後の3割を農家や従業員に払います。残りの3割は我が家で頂きます。設備投資にお金を使ってますし。」
「う~む、良く考えているな。そうすれば、農家や従業員から税をとる手間も無くなるか。よし、やってみよう。これが上手く行けば、我が領が今までに無く栄えることになるぞ。」
「はい。では次の春に成ると、此方の種を育てるように取り計らってください。ですから、今の内に、新しい畑を開墾するなり、大豆等を育てる予定の畑を開けて置くようにお伝えください。秋には収穫出来ます。」
「成る程。育成の指導もして頂けるのかね?」
「はい。しかし、たかだか10才の私の話をマトモに聞いて頂けるのか心配です。」
「それは大丈夫だよ。レストニアの神童の言うことを聞かないような人間には、話を持って行かないからね。それと、工場の用地は私が用意しよう。君達を守る必要が有るだろう。」
「分かりました。お世話になります。」
「うむ。こちらこそ、宜しく頼む。」
翌年の秋にはテンサイが、収穫された。ファノヴァール家御用商人に売ったら、それなりの額に成った。来年は、砂糖を増産出来ると伝えた所、飛び上がって喜んでいた。
ほぼ、善意でこの田舎に店を構えてくれていた商会だ。悪い人達ではない。王都では中堅クラスの商会だそうだ。これからはレストニアバブルが始まる。この商会も、大きく成って行くだろう。こちらには第2、第3の策が有るのだ。
メグミ・ヒムラ、11歳の時に砂糖の量産に成功。12歳の時には、更なる増産を成功させ、レストニアに多大な税収を納めることになる。更に、金メッキと言った工業方面にもその才能を発揮。コンクリートの発明と言った建築技術の基礎となるような物の発明もする事になる。
しかし、彼女が歴史の表舞台に出ることは、後数年の時を必要とする。
王国歴75年、砂糖の増産に成功したレストニアは、まだ平和を享受していた。
後の英雄アレスが、王女の護衛に就く一年前の出来事で有った。
レストニアの治安上昇フラグですww。