あれは嘘だった。
やる気を出せば進む執筆に驚く作者だった。
7/25 内容について統一性の無い表記があったため、変更しました。
密林から続くは閉ざされた世界。
俗世を拒む永久の大地。
恐れよ、侵入者よ。
襲いかかる牙は何人たりとも逃しはしない。
――――the ice world――――
僕は今、再びナベリウスへ来ている。
恐怖から自棄になった…訳ではなく、地質学者であるロジオさんに調査の手伝いを依頼されたからだ。
目的地はナベリウスのエリアの一つである『凍土』だ。
これまでこなしてきたクエストのほとんどが今いる『森林』で終わっていたため、凍土へ足を踏み入れた事はない。
どんな世界を見る事が出来るのか、楽しみだ。
今回のクエストの相方は親友のリオン。
本当は、リュランやアフィンとも一緒に来たかったのだが、アフィンはいつも通り人探しに出ていて、リュランは師匠に呼び出されたらしい。
残念だけど、仕方が無い。
というわけで、キャンプシップから飛び降り、森林エリアへと降り立った。
今までと変わらない長閑な緑林が生い茂っている。
しかし、今回の目的地は此処じゃない。
『アランさん、聞こえますか?』
「こちらアラン。ロジオさん、聞こえるよ」
『その先に凍土へと続く道があります。まずはそこを目指してください。データに関してはこちらでモニタリングしてますので、気にしないでください』
「了解です。行こう、リオン」
「ええ。行きましょう」
リオンへと声をかけ、先へと進む。
隊列は前衛が僕、後衛がリオンだ。
この配置の主な理由は、リオンが魔法を扱うクラス『フォース』だからだ。
フォースは体内・体外のフォトンを利用して大火力の魔法を扱える反面、打たれ弱い。
よって、近接職である僕が前に出るのは必然。
――まぁ、この近辺程度なら僕の出番はないかもしれないけど。
以前見かけたリオンの実力を思い出し、僕は内心で苦笑いを浮かべた。
そんな事はさておき、原生獣が潜んでいないか付近を注意しながら進む事、十数分。
僕たちの目の前には大きな洞窟が姿を見せた。
『この先が凍土へと通じています。アランさん、リオンさん。お気をつけて』
「ありがとうございます」
「森林から凍土…意味分かんないよ…」
「え?」
「あ、ううん。気にしないで。行こ行こ」
「う、うん」
リオンが呟いた言葉は気になるけど、本人が気にするなと言っている以上、聞く訳にもいかない。
リオンは他の人が知らないようなことまで知ってるから、今回も僕の想像つかない何かがあるんだろう。
…やっぱり、知りたいなぁ。
――――――――――
――――――――――
――――――――――
洞窟を抜けた先は一面、白銀の世界だった。
綺麗なんだけど……寒い。
「気温は…マイナス二度か。プロテクターを着てる筈なんだけど、それでもまだ寒いね」
「……」
「…?リオン?」
「…はぁ。寒いのはご尤もなんだけど…納得いかないわ」
「えっと…何に?」
『アランさん、リオンさん。目的地はさらにその奥です。この先は道が険しく、現れる敵も変化しているので注意してください』
「分かりました。――リオン、さっきの話の意味って…?」
「…さっさと行きましょ。こんな寒い所に長時間居たくないわ」
「わ、ちょっと待ってよ!」
結局、呟いた言葉について聞く事は出来なかった。
まぁ、今はクエスト中だし帰還したらまとめて教えてくれるよね、きっと。
まずは目の前のクエストに集中しよう。
ロジオさんの話では敵の種類も違うみたいだし、気をつけないと…。
「――来たね」
「ガルフに似てるけど…全体的に白っぽいわね」
『リオンさん、その通りです。そいつは凍土に順応したガルフ種――名をガルフルと言います』
ガルフル…ガルフと動きが同じなら、跳びかかりに注意すれば良い筈。
しかし、他に変化点が無いか見る必要があるね。
「まずは動きを見たいんだけど…良いかな?」
「リーダーはアランよ。私はそれに従うわ」
「ありがとう。一先ず、リオンは回避に集中して。少しの間、ガルフとの違いを見るから」
「了解」
新しい敵と遭遇したら、まずは動きを見極める。
試験で学んだ、生き残るための戦い方だ。
死んだら全てが終わってしまうこの世界だからこそ、こういった情報が重要だ。
――まぁ、アークス用の図書を調べれば載ってそうだけどね。
得物を構える。
どうやら、ガルフルは一匹のようだ。
ガルフ種は群れで動き回るのだけど…どこかに居るのかもしれない。
しかし、動きを見極めるのだから一匹なのは好都合だ。
「……」
『ぐるる』
こちらを窺うようにゆっくりと近寄るガルフル。
しかし、こちらが攻めてこないと感じたのか、少しだけ身体を後ろへと引いた。
『ガウッ』
ガルフと同じ、跳びかかりだ。
予想通りの動き、距離。
受け止める必要もないから、後ろへとステップする。
攻撃が失敗したと見るや否、すぐさま跳びかかった勢いそのままに後ろ足で立ち上がった。
全体重を乗せたのしかかり。
これも、ガルフ種と同じ動きだ。
それから数分程度様子を見たけど、これ以上の動きをする事は無かった。
どうやら、ガルフルはガルフと同じ動きしかしないらしい。
これ以上は時間の無駄だろうと思い、力一杯切り裂く。
当たり所が良かったのか、一撃でガルフルは倒れた。
少しばかり動き回っていたせいか、身体が火照ってしまった。
休憩も兼ねて、今の戦闘で分かった事をおさらいしようかな。
「お疲れ様。ガルフルはどうだった?」
「ガルフと全く同じ動きだったね。多分、気候に適した外見に変わっただけなんだよね」
「みたいね。詳しい情報は既に調べておいたから休憩の間に見ておいてね」
「流石だね、リオン。もう調べ終えてるんだ」
「後衛だし、相手は一匹だったからね。後方から来ないか確認していれば後は何もすることがないもの」
「そのお陰でこうやって詳細が分かるんだから、僕は感謝感謝だよ」
リオンが調べてくれた情報を見ながら、僕は思う。
今後気をつけるべきなのは森林エリアに居なかった種類の敵だろう。
森林エリアにはウーダン種が居たが、凍土エリアには何がいるのか…。
それこそ、奥に進まないと分からない。
「よしっ!先に進もう」
「――等と意気込む自分が居ましたよっと…」
「アラン、どうかしたの?」
「一時間前の自分を恨んでただけだよ…」
「…そう。程々にしておいてね」
リオンのフォローが辛い。
そう、一時間前に歩き出したはいいけど、全く敵が出てこない。
最初こそ、凍土エリアに入ってすぐ出現したから次も…と考えていたのだけど。
世の中そう上手くはいかないようで。
『調査を依頼した身としては、あまり敵が出過ぎるのも困りものですが…。やはり、物足りないものですか?』
「そう、ですね。実地訓練でもあるので、戦闘はあるに越したことはありません」
「敵から獲れる素材は私たちの収入源でもあるので、やはり、多少なり戦闘は行いたいですね」
『なるほど…。分かりました。調査は多少なり遅れても構いませんし、アランさん達の都合に合わせて奥へ進んでください。欲しいデータがあれば、こちらからも支援しますよ』
「え…。でも、時間とかは大丈夫ですか?」
ロジオさんの申し出に、思わずリオンの顔を見てしまう。
リオンも驚いているようだが、表面上の変化は乏しい。
何だろう、何故か負けた気分。
『問題ありません。勿論、検証などに時間はかかりますが、元々時間がかかるものですから、ある程度の遅れは気にもなりませんし』
「分かりました。お言葉に甘えて、少しの間この近辺を探ります。それでいいかな、リオン?」
「良いと思うわ。まだ、凍土エリアの敵とほとんど戦えていない訳だしね」
リオンからも肯定を得たので、さっそく近くの脇道から付近の捜索へと移る。
さて、敵が出てきてくれればいいんだけど――
「……」
「……」
『……』
『……』
「……え?何この状況」
「――『ラ・フォイエ』!」
脇道へと進んだ僕たちを待っていたのは、ギラギラとした目でこちらを見つめるガルフルの群れ……総勢、十匹。
まさかの展開に頭が追いつかず、呆けたままの僕を置いて、リオンはすぐさま先制攻撃を放つ。
炎系テクニック『ラ・フォイエ』だ。
『ぎゃお!?』
群れのほぼド真ん中で起爆したようで、爆発した周囲へとガルフル達が吹き飛ぶ。
つまり、僕たちの目の前へと飛んでくるものもいる訳で…。
慌てて僕はダブルセイバーを構え、斬撃を放つ!
「はぁッ」
『ぎッ』
構えるのが遅かったためか、息の根を止める事はできなかった。
しかし、胴体を深く切り裂いたので致命傷だろう。
すぐに次の敵へと視点を切り替えるが…遅かった。
「アラン、遅いわよ」
「リオンが早過ぎるだけだよ」
死屍累々の中央で、ロッドを構えたままこちらを見るリオンは流石の一言。
僕が一匹に対応している間に残りの九匹を倒してしまうのだからね。
養成学校で密かに『
「アラン…このまま凍らせてあげようか?」
「ごめんなさい、勘弁してください」
どうやら口にしていたようで、リオンの周囲から冷気が漏れ出していた。
すぐさま僕は土下座する。
――プライド?
そんなもの、そこらのガルフにでも食わせちゃえ。
「貴方だって、『
「それだけは止めて!!」
何て恐ろしいトラウマを思い出させてくれるんだ、リオン!
あんな…あんな事は二度と御免だ…ッ!!
『えっと…大丈夫ですか、お二方?』
「…今は、そっとしておいてください」
そういえば、ロジオさんも聞けたんだった…。
まさか、僕のトラウマを知る人物が増えてしまうだなんて。
…いや、ロジオさんは善人だ。
頼めばちゃんと分かってくれるだろう。
――うん、多分、きっとそうだ、うん。
「ほら、いつまでもいじけてないで進むよ」
「おー…」
『(本当に、大丈夫なんでしょうか…?)』
先程までとは打って変わって、不安で不安で心配になってしまうロジオなのでした。
∽to be continue∽
『凍土』
→惑星ナベリウスに存在する森林に次いで、2つ目のエリア。何時訪れても冬。
『フォース』
→ファンタジーによくある魔法使いのクラス。体内・空気中に存在するフォトンを利用し、攻撃するため、近接職に比べ、攻撃範囲が広いものの、紙装甲になりがち。炎・氷・雷を軸に戦う。
『森林から凍土…意味分かんないよ…』
→もしかして:洞窟を境に長野県と北海道を隣接してる感じ。これがどれだけ異質な事か、理解している人物は何人いた事やら…。
『ガルフル』
→森林エリアで登場するガルフ系の亜種。凍土の気候に適応しているが、行動パターンは原種と同じ。実は、この作品ではガルフより先に登場したという謎。
『……え?何この状況』
→フラグ成立。お約束と言えばお約束。
『ラ・フォイエ』
→炎系テクニックの1つ。凝縮したフォトンを特定の場所へ放ち、爆風で攻撃する魔法。威力よりも範囲を重視した魔法と言える。爆風が当たった敵は吹き飛ぶため、注意が必要。
『死の女王』(デス・クイーン)
→もしかして:リオン・カーミラ。リオンの二つ名で、敵の死体を量産する事から名づけられた。実力が仇となったケースその1。
『――プライド?そんなもの、そこらのガルフにでも食わせちゃえ』
→彼の有名な英雄、ケ・ホーロンと敵対した英雄、エ・ミーヤが行ったとされる挑発内容。ケ・ホーロンは狗の化身とも呼ばれていたため、そうなったのだと推測される。――説明はFateネタ。
『両剣使い』(セイバーマスター)
→もしかして:アラン・クリアフォード。アランの二つ名で、取り回しが難しいダブルセイバーを自在に操る姿から名づけられた。ただし、違う意味を想像され(ry