「はァっ!」
「シッ!」
倉庫、数々のコンテナが立ち並ぶ中その中心にて男女が武器を構えて争っている。
いや、それは正しい表現ではない。片方……獅子のように猛々しい
「唸れ、我が聖槍!」
女騎士が馬上槍と形容する代物が関節の部位を動かすかのごとく回転させ、高密度の魔力をその先端より噴出させ、男へと放つ。
「甘いぞ、ランサー!」
それに対し男は左手に持つ黄色の剣を振るいその光線と形容する攻撃を縦に切り裂く。その勢いのまま走り、攻撃を放った体勢から動かない女騎士へ向かう。
「やるな、しかし……これで終わりだなどと思っていまいな?」
「……何!?」
が、一手上手だったのは女騎士のようだった。突如として出現した白馬が男を潰そうと上より降ってきていたのだ。
それに対応すべく男は足で地面を削りながら止まり、上で剣を交互に構えその踏み潰しに耐えようとする。
「うっおぁ!」
交差された剣に馬の踏み潰しが当たる。瞬間、鳴り響く轟音。耐えぬこうと踏みしめいたアスファルトの地面はその余りにも強すぎる衝撃に耐えきれず、男は両足を脛の辺りまで地面に埋まってしまう。
それを見てよどみなく槍を構えた女騎士は馬に潰されそうになっている男を慈悲もなく、温情もなく、確実に命を止めるべく突き刺そうとし……
「終いだ、セイ──」
バーと続けようとした。だがその言葉を遮ったのは闇夜に轟く雷鳴であった。そしてそれに続き、車輪が回る音と2頭の生き物の蹄の音が聞こえてくる……上らへんから。
「双方、武器を収めよ! 王の御前である!」
そして聞こえる野太い声。
男と女騎士、その両者は思わずといったようにそちらに振り向き、迫り来る戦車を見てその場から退避する選択を選んだ。
その戦車が過ぎ去る時、両者は油断せず突如として乱入してきた犯人を観察する。
神秘を大量に内包する雄牛二頭。それらが牽引する戦車は神代に作られたものがありありと見て取れ、その戦車は勢いそのまま、それを操る御者が巧みに操作し華麗に、そして壮大に地面へと着地した。
御者だと思わしき大男が女騎士──ランサーと、男──セイバーを見て満足そうに頷き口を開く。
「セイバー、そしてランサーよ。貴様らの先ほどの斬り合い、まことに見事であった。向こうの橋から見ていたがな、余の知るどの戦士と比してもなんら劣るところのない剣捌き、槍捌き。さぞ名高き英傑と見たぞ」
何をいきなり介入してきて言うんだ。それがセイバーとランサーの気持ちであり、それが態度に現れているのかお互いに向けていた戦意をその大男にそっくりそのままぶつけた。
「おおう、想像以上の戦意だ……しかし、だからこそ欲しい」
小声で何かを呟いたかと思うと口が冷めやらぬうちに提案をしてくる。
「そこでだ、貴様らに提案がある。その武、その技、一つ余の覇道のために振るう気はないか? さすれば貴様らを余の軍勢の一人として迎え、共に世を征服する快悦を分かち合う所存である」
どうだ、と言わんばかりにドヤ顔をする大男。その言葉を聞いた両者は──呆れ返った。
「んで、どうだ?」
「断る、と言ったら?」
「どうにもせん。境遇に対して文句があるならば──」
「関係ない、断る」
男が先に口を開き大男を睨み、右手に持つ赤い剣を突きつける。
「我が剣は既にマスターへ捧げられた。仕え、そして聖杯を捧げるのはマスターだけだ。よもや貴様、騎士たるこの俺にマスターを、主君を
セイバーのその瞳には強烈な殺意と怒りが滲んでおり、睨まれている大男はかなり威圧されてしまった。
「うぬぅ……ならばランサー、お主は」
こちらに靡かぬ、そして交渉の余地なしと判断したのかランサーへと顔を向ける。
「そもそもクラスを告げる前のお前に交渉云々はないぞ。まずは名乗り上げろ」
ご尤もだったのか大男は目をぱちくりと動かし、ニヤリと強烈な笑みを浮かべた。
「おお、そうだったそうだった! 思えば余はまだ名乗りを上げておらなんだ。それでは余に従う気にならんのも無理はない!」
すまんすまんと照れ笑いを浮かべ、大男は両手を広げ、思いっきり胸をそらし。
「我が名は征服王イスカンダル。此度の聖杯戦争においては、ライダーのクラスを得て現界した」
と、本来は隠すべき真名をクラスと共に名乗りあげてしまった。
「く、くく……くくくくっ……!」
思わず笑ってしまう程度にはこの光景に面白さを感じてしまった。
「……マスター、私が言うのはなんだが……気味悪いぞ」
「口が悪いぞフォーリナー……しっかしなんだ?昔会ったとはいえあれだな、馬鹿さ加減は変わらんなぁ……くくくく」
征服王イスカンダル。あいつと出会ったのはエジプトでファラオとして認められた時であったが、その時からあいつは豪快で苛烈な人物だった。
「確かにあのキッパリとした性格はアキレウスに通ずるが……にしてもあんな風に真名は告げないと思うがなぁ」
「ならばあれは阿呆なのだろう。ある意味人間らしいとは思うが……」
クレーンの鉄骨の上に座るフォーリナーは苦々しい顔をしている。何か嫌なことを思い出してるのかと思ったが……そういえばこいつ王様系の人物が苦手であったな。
「まぁそんな顔してやんな、あいつはあの王様とは違うさ。悪いことに関しては悪いとキッパリ言うし、頭も良い。無駄に征服するようなやつではなかったさ。夢見がちだがな」
「しかし、なぁ……?」
「しおらしいなお前、なんだ、どうした?」
「う、む……マスターだから言うが、私は如何せん『王』という存在が苦手なのだ。一度囚われたことがある身としては、なぁ……まぁそれはそれとして恨み節を叩き込んでやりたいとは思ってるが」
こいつふざけた理由でアヴェンジャーになりそうだな。
「ふーん、ちなみに貞操関連は──」
「私は元は男だ。この霊基のみだからな」
無事だったのか、と告げようとしたら怒鳴られてしまった。周りにバレないように一応消音結界を張っていたが壊れそうな勢いだ。
「いや、昔って性に対して奔放だったような──」
「私はノーマルだ!男など好かん!」
「今でもか?」
「そうだ!私は身は女といえど男であることは忘れていないぞ!?」
「いや、すまんすまん……そうか、一応男であることは忘れてないのか……うん、それは良かった」
主従関係になった男女は体の関係になる、とか定番だったからな。それがないなら問題は無いだろうな。
っと、そろそろギルガメッシュが切れる頃だ。仕込んでおかないとな
「エルキドゥ、いるか?」
「──なんだい?」
その名を呼ぶと隣に白衣、ではなくジーパンにシャツという現代的な格好をしたエルキドゥが現れる。そのそうに登場したせいかフォーリナーは警戒して思わず剣を構えてしまったが。
「そろそろギルガメッシュが切れる頃だ。撤退命令が時臣くんからでたら回収してやれ。これ使ってな」
一応ハデスの兜を渡し、姿がバレないようにしてもらう。
「もちろん、彼の我儘は困ったものだからね」
「んじゃ、頼んだぜ」
その場からエルキドゥが消え、それと同時に立ち上がる。伸びをして眼下で行われるイスカンダルとそのマスター──ウェイバー・ベルベットの口論をみてニヤリと笑う。
「バーサーカーの代わりに行くぞ、
「何時でも構わん……真名を言うんじゃない」
イカロスを閉じ込めたというミーノース王ってアステリオス──
調べてて意外な繋がりがあってびっくりした。
ちなみにアステリオスの名前ってミーノース王の育ての父親と同じだったり……ミーノース本人はゼウスとエウロペの息子だったりして、ギリシャ神話って(色んな意味で)すごいんだなぁって思ってる。