「よぉ、体の調子はどうだ?」
「コハッ……グフッ……最悪、ですよ……グッ」
オンボロなひとつの建物の中で一人の女性が横たわっていた。その服装はボロボロで、何度も修復した跡があるが最早それはボロ布と言っていいほどにほつれている特徴的な水色の袴。
「ったく、だからおめぇの体では戦うのは無理だって言ったのによ……無理やり戦いやがって」
「それ……でも、最後まで戦い抜けなかったのが……ケハッ!?……ぐっ、悔やまれ、ます……」
「……満足して逝けんのかお前」
「無理です、って……ば」
沖田総司、剣の天才という類まれなる才能を持った女性。その最後は肺結核による呆気ない幕引きである。残念、実に残念である。ここまで素晴らしい才能を持った人間はギルガメッシュやランスロットぐらいしか見た事がない、岡田以蔵もその域にはいたがその使い道が残念だった……
などと考えていたら沖田総司は横たえていた体を起こし、その場で正座をする。
「無理すんじゃねぇ」
「いえ、もう……いいの……で、す」
「……死期を悟ったか」
「と言うよりは……貴方が来るのを無理やり待っていたのです、よ……」
「……」
既に近藤勇が投降し、斬首されてから
「こちらへ、来……てください」
言われた通り、近くにより目の前で同じく正座をする。
そして不意打ち気味に、彼女が倒れてきてそのまま……口を重ねてきた。
「貴方に会ってから……既に16年……いつのまにか貴方をお慕いしておりました」
その告白に俺の思考は止まる。
「最後に貴方に会えてよかったです……またいつの日か、貴方と共に剣を競い合いたいもの……で……」
彼女の体から力が抜ける。既に体は冷たくなっており、本当に……限界であったことを知った。
その後丁寧に彼女のことを埋葬し、彼女の所持品であった袴や簪、欠けた刀と二本の上等な刀を持ち、いつものように旅へ出る。
「スカサハ……俺はどうすりゃ良かったんだろうなぁ」
「知らんよ、今回のことに関しては貴様も悪いし、そのおきた?とやらも悪い。どちらも素直ではないからな、頑固者共め」
影の国の女王スカサハ、彼女が住まう城へ俺は赴いていた。
その客室で俺はどこかボッーとしていた。何故か知らないが全身に力が入らないのだ。
「ふっ……案外貴様は初心なのだな」
「生まれてこの方恋愛なんざしたことねぇよ。体を重ねることはあっても……あんなに真っ直ぐな想いをぶつけられたのは……
それ以降はあまり親密になる相手がおらず良くて親友の域、悪くて仇敵みたいな感じになった。
「ふむ……ならヴェルグよ、私が貴様のことを好いている、と言ったらどう思う?」
「あー……まぁそりゃ嬉しいけどよ」
唐突にこいつはなんなんだ。暖炉の前にある椅子に座りながら本を読んでいたスカサハが真顔でこちらを見ている。
不思議な程に真面目にこっちを見ており、いつもの雰囲気ではないこの空気に何故か冷や汗が流れ始める。
「……おい、どうした」
「いやなに……ここまで初心というか、他者の気持ちがわからないものなのだな。まぁ此奴は凡そ四千年間独身を貫く阿呆だ、気付かれないのは百も承知だが改めて認識すると……はぁ……」
?
「それで、ここに戻ってきて何か用か?」
「いーやー、ちょっと暫く旅に出るのはやめて100年くらい休もっかなーって……とあることの準備もしたいしな」
100年も休んだら1990年くらいになる……つまりFate/Zeroが起こる時期だ。ムーンセルと接続する前に記憶が掠れていたからあまり覚えてはいないが……そろそろやらないといけないことがある。
歴史改変、俺は恐れん。かかってこい……抑止の守護者。