「では、そういうことでの」
「はい、此度の縁談は良きものとなるでしょ──」
遠坂邸、その一室で見た目は紳士然とした赤い服を着た男と、和服を着て目は死んでいるおぞましい姿をした老年の男がとある話をしていたら……
「邪魔するぜ」
扉が蹴破られ、そこから中世のようなフードが付いている黒のパンクジャケットを着て、黒のジーパンを履いた男が現れた。ついでと言わんばかりに扉は老年の男の方に飛んで言ったが、老年の男……間桐臓硯は普通に回避している。
「時臣くん、ひっさしぶりー」
「……っ!初代ヴァイスロイ家当主様!?なぜこのような所に?」
「いや何、お宅の家にかなーりいい感じの才能を持った子供が2人生まれたって聞いてね……それで一人を養子に出すって話を聞いたから飛んできたんだけど」
「そのお話でしたら既にこちらのお方、間桐家と既に決まっておりまして……」
唐突に入ってきた男に、驚きの表情を見せずに直ぐに下手に出る遠坂家当主、遠坂時臣。普通なら怒り、魔術の実験台にするのが魔術師というものだが、私はそんなことはしない。
【優雅たれ】
その言葉を守るようにいかなることがあろうと余裕を持って対処しているのだから……それに、今眼前にいるのは古代より生きる正真正銘の
そんな人物がなぜ、突如として桜のことを求めているのかその理由が分からない。
「ほー、割と黒い話しか聞かない間桐家に預けるんだ……へぇ」
「如何されましたか?」
「いや、見る目ないなって思ってな……毎度思うんだけど、時臣くん。君のうっかりは酷い、酷すぎるぜ」
なんか胸に突き刺さる感覚がするがそれはいつもの優雅な顔で乗り切る……目の前に立つ人物にはバレていそうだが。
「まぁ時臣くんがそんな調子なのは分かってたからな。これやるよ」
その言葉と共に差し出される紙を手に取る。なぜこのようなものを渡してきたのか、それは読んでいくうちに理解していった。
この紙には間桐家の実質的支配者の間桐臓硯……いや、マキリゾォルゲンが行ってきた悪行が書き連ねてあった。
自身の目的のために虫になったこと、そしてその体を維持するために人を喰らうこと。外から入った嫁を孕ませるための道具として扱い、次期当主が産まれたら女は虫の餌とすること。他にも様々なことが書かれていたが、最後に書かれていた文字が今の私には衝撃であった……
「っ!その紙を寄越せ時臣!」
「しゃらくせぇ!今更てめぇの悪事がバレた程度で狼狽えてんじゃねぇよ没落貴族がァ!」
「邪魔をするな化け物めェ!」
「てめぇに言われたかねぇよ
既にもう間桐家にはまともな魔術を扱えるものが居ないということである。確かに今まで書かれていたことは驚きであり、怒りに思考が染まるが、最後の一文は余りにも衝撃すぎた。
「間桐臓硯よ、魔術が扱えるものが其方には居ないと……これは事実か」
「時臣!それを寄越せ」
「これは事実かと聞いている!」
「事実じゃ!しかしそれがどうした、とっととその紙を寄越──」
「
高熱の炎が間桐臓硯の体を焼き切る。臓硯が時臣の顔を見た時、もう体に流れていないはずの血がざわめいた感覚に陥る。
「なるほど……もはや間桐家は終わりであったのですね。ヴェルグさん」
「そうだ、確かに間桐家の属性を変える手法は桜ちゃんを育てる上では有用だが……そもそも臓硯は魔術師として桜ちゃんを育てる気はなかったようだぞ」
「……ヴェルグさん」
「なんだ」
「娘を……桜を頼みます」
「あいよ。て、事で間桐臓硯。てめぇはもう死んでいいぞ」
「貴様!なんだその言い草は──」
「いいからいいから」
臓硯はヴェルグに連れられ外へ出された。
いやー、ここまで上手くいくとか笑いが止まらんね!
「アッハッハッハッハッ!」
「貴様ァァァァ!!!!よくもよくもよくも!儂を愚弄してくれたな!食い散らかしてやるぞ……!」
「たかだか数百年しか生きてねぇクソガキのくせに生意気だぞ?」
間桐臓硯、虫でできたからだを使う魑魅魍魎。既に目的を見失った悲しき正義の味方……こいつの延命した理由は『悪の根絶』のためってぇのが悲しいよな。まぁここまで来たらもうどうしようもないんすけどね。
「確かお前は魂が入った本体の虫がいるんだったよな、しっかしそれをいちいち見つけるのは面倒くさいな……いや、出来なくはないんだがな?」
「虫よ!」
鬱陶しい数の虫が襲いかかってくるがそこは諸葛孔明の宝具を使おうか……
「
「ぐっ!?」
「有名な諸葛孔明の宝具だよ、どうだ。動けんだろ」
「確か貴様は投影魔術の始祖だったか……!」
動けなくなった臓硯を監視して……どこに本体があるのか理解した。
「随分と不用心だなお前……せめてもの慈悲で一撃で殺してやらぁ」
今回はネタで締めようか。
臓硯の本体をいつか見た炎を纏った剣で周囲の虫を焼き払うことで顕にし、
「私は見た」
見た!
下より這い出た黒に槍が貫き天へと拘束し
「私が来た!」
来た!
跳躍、からの決めポーズ
「ならばあとは勝つのみよ!」
勝った!
右手に美しい黄金の剣が投影され……眼前に見える虫へと振り下ろした。
「