コミュ障TS転生少女の千夜物語   作:テチス

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止まらない教団の悪行

 

 南都アルマージュ。

 それは、王国南部における中心都市であり、王国唯一の【迷宮都市】でもある。

 

 迷宮――正式名称を、龍穴坑(レイライン)と呼ぶそれは、この都市の中心地に存在する。地下数キロに渡って伸びる長大な大迷路だ。

 

 かつてアルマージュは魔結晶採掘で栄えていた都市だった。

 龍脈という世界の魔力の巡りに合わせて地下を掘り進むことで、魔力エネルギーを多量に含んだ鉱石――魔結晶――が採掘できる。

 これは軍事や生活、様々な事に使われる必需品で、最盛期には王国の産出量の半分がこの南都から賄われていた。

 

 しかし、龍脈とは世界のエネルギーの流れだ。

 決して人の手で制御できるものではない。

 

 大きくなり過ぎた採掘坑は、穴を広げるにしたがって強く吹き上がる龍脈からの魔力に耐え切れず、ついに崩壊。

 龍脈に直接繋がる穴――龍穴坑(レイライン)となった。

 そして堰を切ったように湧きだした龍脈の莫大な魔力は次々と魔種を生み出しはじめる。

 

 アリの巣のように複雑過ぎる坑道の作りと、決して絶える事のない魔種の群れ。

 魔力という無限の富と、魔種という無限の怪物を生み出し続けるアルマージュ大龍穴。

 

 それはいつしか、まるで迷宮のようだと呼ばれるようになり、南都もまた迷宮都市として呼ばれるようになった。

 都市を囲む巨大な城壁は外敵から守るだけが目的じゃない。迷宮が制御不能になった時、あふれ出る魔物を押し込める役割を持っているのだ。

 

 

 

 

 ――なんて説明を受けても、俺にはさっぱりわからない。

 

 精々、城壁でけーとか、街の中心にある塔でけーとか思うだけ。

 その塔が龍穴から噴き出る魔力の採取塔だというが……へぇー。よく分からぬ。

 

 それよりも身近で分かりやすい物が目についた。

 

「この明るいのは、なに?」

「魔力灯ですね。魔灯ともいい、夜中でも周囲を明るく照らしてくれる魔具の一種です。確か魔力効率に問題があったはずですが、ここは魔力が使いきれないほど潤沢にありますからねぇ」

 

 大通りの両脇に等間隔で並ぶ魔力灯……ぶっちゃけ俺の印象で言うならただの街灯。

 石畳の通りと煉瓦造りの家と合わせって、中世世界というより現代の欧州ヨーロッパみたいな雰囲気に見える。

 道路も綺麗に掃除されてるし異臭もない。

 

 この世界の都市は思ったより棲みやすそうな街並みだった。

 

 ただ、なんとなく人通りが少ない気がする。

 

「日食の影響でしょう。昼は私もこの街にいましたが、それはもう凄いモノでしたよ」

 

 シオンが語る昼のアルマージュ。

 

 日食により突然訪れた夜は街に大混乱をもたらした。

 馬車は制御を失って暴れ出して事故が多発したり、恐怖でうずくまる人々など商店街は騒然となった。

 日食が収まっても、街から逃げようとする人や、逆に領主の館に詰めかける人で溢れたらしい。

 

 最悪なのは貧民窟(スラム)だ。

 元々、失うものがない人間たちだけに、日食の混乱に乗じた暴動や略奪が起きかけたという。

 それを押さえるはずの王国軍が現在は東諸国との武力衝突に備えて留守なのも影響したのだろう。

 領主軍と聖教会の人が説得することで、なんとか大事には至らなかったとか。

 

(あ……あわわわ!)

 

 思ったより日食が大事件を引き起こしそうになってた!

 でも暴動までは至らなかったみたいでホッと胸をなでおろす。

 

「ほかにも日食の影響は多いようですね。ほら、見えますか?」

「空?」

 

 シオンが指さすのは月明りがほんのりと照らす夜の帳。

 はるか遠く……村の方角の空でゴマ粒の様に何かが飛んでいるのが見えた。

 

 いくつもの個体が踊る様に空を駆けまわる。

 

 鳥のような体に人間の頭部がついたナニカ。

 目は飛び出したようなギョロギョロと忙しなく動き、細長く鋭利な舌が獲物を探す様に振り回される。

 

 なんだあれ。

 すごい。あれ。

 

 うわ、すごい。

 

 なんとうか……スッゲーキモい。

 

「……あんな生物がいる事に不愉快を覚える。死ねばいい」

「【啄ばみ大鳥】といいます。昔、黒燐教団が好んでメッセンジャーとして使っていた下位魔種の一匹ですね」

 

「あれを使う黒燐教団は悪趣味。死ねばいい」

「ハハハ、今は使っていませんよ。あれは日食の魔力で生まれたようですね。ところでヨルン様、日食の原因はご存知ですか?」

 

 キモい鳥とシオンから目を逸らして街を見る。

 

「そ……そんな事はどうでもいい。早く案内して」

 

 突然の質問に冷や汗をかいた。

 

 日食の周期がどうたらとか、深淵の森で発生した最高濃度の闇の魔力がどうたらとか。

 なんかすごい見てくるが無視する。

 

 日食の原因はトップシークレットである。

 ヤト達にも口止めしてるし、誰にも秘密なのだ。

 

「なるほど。では、大まかに街をご案内いたしましょう」

「……任せる」

 

 何がなる程なのか知らないが、俺のせいではない。

 

 だから早く案内して、早く。

 急かしたらシオンは怪しげな仮面を隠す様にロングコートに付けられたフードを深くかぶり込んだ。

 

 時間帯と日食の影響でほとんど人通りが無い通りを歩き、最初に案内されたのはこの都市の名物、魔力採取塔だった。

 一般人は立ち入り禁止だそうで敷地外から眺める。

 

「創立は今から200年前。丁度、探鉱が龍穴坑(レイライン)に変貌してから10年目ですね」

「200」

 

「最初は色々な難題にぶつかったそうです。今でこそ効率が悪いと廃れたような魔法技術ですら当時は最先端。苦労の果てに完成し、幾たびの改修を経て今に至ります」

 

「そう」

 

「総工費約35億シエル。当時の国家予算の2倍にもなる、一大プロジェクトだったと記録されています」

「シエル」

 

「アレが見えますか? 採取塔の4層部分。あの出っ張りが空気中の魔力濃度計になります。開発者はなんと、かのボルグル・ロッスル研究補助員!」

「だれ」

 

「現在の職員定数は550。しかしその多くの内訳は警備部で――」

「そう」

 

 この塔一つ見るのに20分以上。

 止まらないシオンの解説にそろそろ飽きてきた。

 

 最初は異世界の塔でけーと思ってわくわくした。

 だけど意味分かんない専門用語の羅列と、歴史の解説についていけなくなる。

 

 ……なんだろう。

 シオンはすごく丁寧に説明してくれているのだろう。

 だけど、なんというか……。

 

「……興味無い」

「はい?」

 

「お前の話はつまらない。私はいつまで、無駄な時間を過ごせばいい?」

「……はい」

 

 シオンが申し訳なさそうにシュンとした。

 久しぶりに聖女さんと離れたから俺の言葉もきついなぁ……。

 

「別に怒っていない。ただ、お前が期待外れだっただけ」

 

 悪意がたっぷり詰まった【夜の神】の言葉に頭が痛くなってくる。

 やはり聖女さんwithロザリオの光包囲網が無いと、夜の俺はお口が悪いらしい。

 

「……次に行く」

「そうですね! では、次こそ面白い解説をしてみせましょう!」

 

 俯いて落ち込んでいたシオンの背中を叩いて気にするなとアピール。

 するとシオンは顔を上げて、やる気に満ちた顔で駆け寄ってきた。

 

 どうやらまだまだ、へこたれていないらしい。

 

「では、次は領主の館に行きましょう! 攻め落とすにはここが大切なポイントですよ!」

「攻め落とさない」

 

「領主の得意魔法から弱点まで解説させていただきます! それを知れば百戦危うからずでしょう!」

「聞いて?」

 

 

 

 そして都合3時間程。

 シオンに連れられて街を散策してきた。

 

 夜半で人通りが少ないのと、彼も自分の怪しさに自覚があるのか時折隠れながら、目立つことなく何とかなっている。

 

 彼はどうやら、けっこう几帳面なようだ。

 俺が殆ど常識も無く、街の生活を知らないと言ったら事細かに教えてくれた。

 

 領主の政治的弱みから、町人のトイレ事情まで。

 また今街で流行りのお菓子、増えている犯罪、聖教会の動き等々。

 妙に何でも詳しい男だ。

 

 案内された場所は魔力採取塔から始まり、領主の館。

 迷宮の魔種討伐を仕事とする探索者(シーカー)のギルド。

 王国軍の兵舎、汚いスラム、美味しい酒場、自分たちの隠れ家、巨大劇場、使いやすい下水道の入り口、人気のスイーツ店、悪い噂の絶えない宿、闇の賭博場などなど。

 

 よくまあ一晩でここまで回ったなって程、あちこち行ってきた。

 

「なんか、変な所も一杯連れ回された」

「知っていると意外と便利ですよ? あと、ヨルン様の顔を売っておきました、いつでもご利用ください」

 

 いや勝手に顔を売るなよ……。

 まあシオンの仲間内ぐらいなら大丈夫だろうけど。

 

 でもシオンお前、仲間に嫌われてない?

 俺がお前の隠れ家に付いていった時、部下のみんな怖いぐらい静かになってたけど大丈夫?

 

「ちなみに、いまの聖教会の動きは?」

「昨日時点では特にありません。現在、南都に赴任しているムッシュ・マンカインド司教は正義が大好きで、秩序の安定にご執着の様子。無能ではないようですが……決して有能ともいえない人材と聞いています」

 

 シオンは何を聞いても、打てば響くような返しで返してくる。

 

 なんだろう。

 実際に街に来て分かったが、これ、俺が偵察にくる必要あったのか……?

 これなら情報収集はシオンから話を聞くだけで済んだのでは?

 

 今日の偵察は、そんな気がしてくる結果だった。

 

「これで終了? だったら私が来た意味はない」

「ふーむ、そうですねぇ……おおむねこれぐらいでしょうか。ヨルン様、他に何かご希望は?」

 

「じゃあ最後、日食の反応を聞きこんでおく。あと現地軍の能力も――」

 

 その時。

 突如、地響きにも近い轟音が響き渡った。

 

 俺たちの背中から微かな風と悲鳴が突き抜けていく。

 

「なに?」

 

 振り返れば、闇夜を赤く染める空が見えた。

 遠くで燦々と燃える火の手があがる。

 

 異常事態に気づいた周囲の家も次々と電気――正確には電気ではなく【魔灯】だが――が点き始めた。

 

「ヨルン様、ここは目立ちます。少し移動しましょう」

 

 シオンに促されて脇道に逸れながら考える。

 

 まず、先ほどの爆発は事故だろうか?

 

 この街では一般家庭にまで普及してる魔灯だが非常に熱に弱い特性を持つ。

 火事などで急激に熱せられると、ため込んでいた魔力を周囲に一気に吐き出してしまう特性があり――つまり爆発するのだ。

 

 先ほどの爆発がただの火事で起きた可能性はある。

 

 それなら俺は関係ない。

 下手な騒ぎが起こる前に村に帰りたい。

 

 だけど轟音が響いた方向は、先ほど案内されたばかりのスラムだった。

 

「……暴動?」

 

 嫌な予感が頭をよぎる。

 街に来た時シオンが言っていた、スラムで暴動や略奪が起きかけたという内容を思い出した。

 

 ここで俺には二つの選択肢が生まれた。

 今すぐ帰るか、確認するかだ。

 

 シオンを見れば興味無さそうに赤い空を見つめていた。

 

「私ですか? そうですねぇ……人の命は大切ですが、それよりも今はヨルン様の命令がありますので」

「……隠密行動か」

 

 聖教に自分の存在を隠したいのに、興味本位で出向くのは愚かな事だ。

 

 だが夜という時間帯が俺に教えてくれる。

 

 いまスラムで着実に人が集まっている。

 数百にも及ぶ数の人間が街の中心に向かって進み始めている。

 それに呼応するように、強い人間の気配が迎え撃とうとしていた。

 

 これは、暴動だ。

 

「……」

 

 会った事も無い人の命と自分の安全。

 天秤にかけるなら俺は自分を優先する人間だ。

 

 いまこの街で暴動が起きようが、弾圧されようがあまり興味ない。

 それを悪いとは思っていない。

 

 だけど、当事者となると話は別だ。

 

 この暴動のきっかけは恐らく日食だろう。

 俺の知らないところで人が死ぬのではなく、俺の引き金で人が死ぬ。

 きっと今帰れば、モヤモヤとした感情をずっと抱えて生きることになる。

 

 そんなのは嫌だった。

 結局、どこまでいっても俺は普通の人間なのだろう。

 

 そして何より――――人を殺めた手で聖女さんと触れ合うのがイヤだった。

 

「とりあえず、確認に行く……!」

 

 シオンにそれだけ言うと俺は駆け出した。

 地を蹴り、空の赤い方へ進む。

 

 だが路地裏は入り組んでいるせいで思った方向に進めないのがもどかしい。

 

 加えて俺の体は運動音痴。

 走っているつもりでも、傍から見れば駆け足程度にしか見えないだろう。何度も転びそうになる。

 

 ―― 手伝うよ

 

 そしたら銀鉤が肉体の操作を補助してくれた。

 手足の先まで力が張り、速度が急激に増加する。

 

「……速い」

 

 駆け足だったものは、全力疾走へ。

 入り組んだ路地裏では迂遠だと言わんばかりに、建物に上がって屋根を伝う。

 

 ―― 跳ぶ、もっと、早く。飛ぶ

 

 屋根に足を付いたと思ったら既に空中へ。

 夜の風を切る梟の様に滑らかに、音もたてず次々と家を経由して真っすぐ現場へと突き進む。

 夜人の力を表に出しているせいか、手足から湧きだした黒い粒子が軌跡のように残って散っていく。

 

 俺はもう殆ど銀鉤に体の操作をゆだねていた。

 こんなアクロバティックな映画スター並みの動き、俺には不可能だ。

 

 内心で銀鉤を褒めたたえる。

 脳内の夜人が照れた。

 

 かわいい……かわいい?

 いや、可愛くはないな。

 

「目立ちますよ。仮面をどうぞ」

「……お前、それ好きなのか。そんなに私に付けさせたいか?」

 

 走りながら、差し出された悪趣味な仮面を受け取る。

 

 偵察に来たのに暴徒の鎮圧なんて想定外だ。

 しぶしぶと顔に仮面を翳したら、なんかすごい勢いで張り付いてきた。

 

「……!」

 

 しかも取れない。

 なにこれ! 引っ張っても剥げない!?

 

「ご安心を。闇の秘術による呪いです。一度付けたらまず外れませんよ」

 

 ガチの呪われた装備じゃねぇかおい!?

 恨めしい目でシオンをにらむ。

 

「これで私達お揃いですね!」

「……お前、後で後悔させる」

 

 これで怪しい仮面人間が二人になった。

 まあ、大人姿とは言え、素顔が晒されるよりはマシだと思うことにする……。

 

 

 

 

 

 

 現場に着くと眼下に広がる人の群れが見えた。

 通りに立つ建物は放火されたのか、小規模の爆発を繰り返しながら燃え上がっている。

 

 ……よかった。まだ軍と暴動のぶつかり合いは起きてない。

 互いに距離をとって睨み合っている最中だ。

 

「暴動を終息させる。多少強引でもいい、案は?」

 

「あの爆発といい、いまさら説得では止まらないでしょう。手段を問わないのであれば……如何様にも」

 

「手段か。お前ならどんな方法を取る?」

 

「そうですね……まず一つ目、暴徒を全滅させます」

「却下」

 

 止まればいいって考えは、良くないと思うの。

 目的は失う人命を救う事だっての!

 

 シオンにそこのところを詳しく言って聞かせる。

 そしたら、なんか笑われた。

 

「おっと失礼。そうですよね、貴方はそういうお人だ。だから私は愛に目覚めたのだ」

 

 愛おしく仮面を撫でつけながら言う男の様は、それはもう怪しかった。

 

「ですがよろしいのですか? これを止めるという事は、どう足掻いても目立つことになります」

「……代償は許容する。これは私達の罪」

 

 事ここに至り、いまさら無責任に逃げるのは男じゃない。

 俺は聖女さんに顔向けできる人間でいたい。

 

 それに――

 

「そのための、仮面(コレ)でしょう?」

 

 コンコンと己の顔、仮面を叩いてみればシオンは嬉しそうに笑みを零す。

 

「ええ。ええ。その通り。では最終確認です。ヨルン様の目的は、この街の技術レベルの把握でしたね」

 

「……? そう。あとは軍事力、なにか行動は起きて無いか、日食に対する反応の確認」

「たしかに。そして可能なら目立ちたくない。人命も大切に……違いありますか?」

 

 何一つ間違ってない。

 シオンは何が言いたいのだろうと思いながら頷く。

 

「なるほど。ではここは一つ。わたくし、アルシナシオン・アタッシュマンにお申し付けください。必ずや、ご期待に沿って見せましょう」

 

 自信満々に言う彼の姿に期待を向ける。

 

 だが、なぜ彼がここまで俺に親切にしてくれるのだろうという疑問を浮かぶ。

 

 彼は夜人が見つけてきた、ただの歴史と仮面好きな一般人……と思われる。

 

 暴動を止める事なんかできるのだろうか?

 数百人の殺気だった人を止めるなんて、きっと命がけだろう。

 彼はどうしてそこまで俺に付き合ってくれるのか。

 

「命を懸ける理由ですか……? 簡単ですよ」

 

 そしてシオンはゆっくりと語り出した。

 

「愛なのですよ。貴方がディアナ司祭を愛するように、私も、私なりにこの世界を愛しているのです」

 

 慈しむような声で、胸に手を当てて祈るシオン。

 神聖さすら感じさせるその姿は敬虔な信徒を想像させた。

 

「世界中から嫌われ厭われても、私は信じるモノのためなら止まらない。ずっとそうやって生きてきた。そして今、目の前で多くの命が失われようとしている。ならば、それを救うのが私の定めという事です」

 

 なら、今更たった数百人相手に引けませんよと笑うシオンの姿に、俺は眩しいものを感じた。

 

「……そう」

 

 聖女さんに続いて、聖人さんかな?

 どうやらこの世界は善性が限界突破している人が一杯いるらしい。

 

 俺も応援するようにシオンの背に手を当てる。

 

「……何かあれば全力で協力する」

「それは頼もしい。では、行ってまいります! 朗報をご期待ください!」

 

 シオンはそれだけ言うと、屋根の上から飛び降りた。

 

 

 降り立つ場所は暴徒と領主軍がにらみ合う中間点。

 突然の乱入者に全員の視線が集まった。

 

「初めまして南都アルマージュの皆様! 私、黒燐教団(ブラック・ポールポロス)の【純潔】と申します」

 

 両軍の注目を一身に浴びながらシオンはそう名乗りを上げた。

 

「今回は我等、黒燐教団がこの暴動を扇動させて頂きました」

 

「……ぇ?」

 

 俺は聞き間違いかなと耳を凝らす。

 そしたらアイツ、とんでもない事を言い出しやがった。

 

「演出共演支援、黒燐教団! この一大イベント、楽しんで頂けておりますでしょうか!? 南都の皆々様にはぜひ、この死の舞踏を満喫して頂きたく存じます!」

 

「……え?」

 

 あいつ、え?

 

 

 




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