コミュ障TS転生少女の千夜物語   作:テチス

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ストックが尽きたので明日はお休みです。
感想返し滞っていますが、大変意欲につながっております。ありがとうございます。


交渉という名のナニカ

「練習する」

 

 森の中で再びダボダボの萌え袖に戻った俺は待機するヤト達に言い放った。

 

 最初の計画では村に潜入して、誰にもバレずに必要物資を頂いてくる作戦だったが警備が厳重なので撤回。交渉に入ることにした。

 

 俺はこの世界の事を何も知らない。

 ここがどこなのか、魔法の制御はできないのか、知りたい事は山ほどある。だけど洞窟に引き籠っていては何も進まない。だから今回の交渉はそれを手に入れる切っ掛けにする。

 

 そしてあわよくば交渉を介して襲撃の件をうやむやにしたい。

 小さな取引から始めて、交流を続けることで俺が村に敵対の意志が無い事を分かってもらうのだ。

 ……それでも罪を償えとか問答無用で捕縛に来るなら俺は逃げる。

 生憎と俺はこんな訳分からん状況で牢屋に入る程、人間出来ていない。

 

 でも穏便な手段を選択したいのは本音だ。村人とも仲良く成れるならそれが一番平和でいい。

 

(だけど、このコミュ障少女がまともに交渉できるのかどうか……俺は今から不安です)

 

 なにせ口下手なんてレベルじゃないからなぁ。この体のコミュ障は呪いとほぼ一緒だからなぁ……。

 ちょいちょいと手招きしてヤトを正面に立たせる。他の奴は待機。

 

「話し合いの練習する」

 

 首を傾げられた。

 ヤトは村人役やってね、と強引にスタート。

 

 状況は俺が村の門に出向いたところから想定。

 きっと兵士たちがワラワラ集まってくる。ここで矢が射掛けられるようなら即座に撤退。

 

 今回は代表者が出てきました、と。

 はいヤト出てきて。そうそこ、そこに立ってて。

 

 交渉のテーブルに入る前に、まずは挨拶と最初の戦闘の謝罪が必要だろう。

 

(こんばんは。この前はすみませんでした、はい)

「……謝罪する」

 

 うむ、まあよし!

 俺の言いたい事が少女フィルターを通って出てきた。

 ちょっと違うが、基本的に意味は一緒!

 

 ヤトはうんうんと頷いている。村人的にオーケーという解釈だろうか?

 

 次はあの戦いが事故だったことの説明と物資の供給のお願いを言ってみる。

 

(あれは事故で、俺は戦う気は無かったんです。いま困ってるので助けてください。ご飯とか地図とか、必要なものが一杯あるんです。お願いします。はい)

 

「助けを求める。ごはん欲しい」

 

 ……うむ?

 なんかすごい勢いで省略された。

 ヤトも会話の内容に理解が及ばなかったのか首をかしげている。

 

 長文はだめ? なんかすごい不安になってきた。

 

 この体は夜の化身であり、コミュ障だ。

 俺の考えた仮説ではきっと夜人でなく、人間を相手にするともっと口調が固くなる気がする。

 

 あー分からん! このまま交渉に行っても大丈夫なのだろう!?

 俺にはもう失敗する未来しか見えないが、ここで引き返したら村に来た意味すらなくなる。

 

 木々の隙間から見える村を伺う。

 この前よりも兵士は一杯いる。みんな武器を携えている。

 

「出たとこ勝負」

 

 ……失敗を前提で動くべきだろう。

 最悪、もう一度戦闘に入る事すら想定する。

 

「全員、合図まで戦闘は禁止。ただし攻撃を受けた場合の反撃は許可する。即座に撤退行動へ移る」

 

 撤退と言った辺りで夜人達が困惑するように互いの顔を見合った。

 ……撤退すんだよ。いいね、間違っても殲滅すんなよ? 振りじゃないぞ?

 

「交渉中の威圧的行動も許可しない。これは恫喝では無く、取引だから」

 

 夜人達は「分からん……」というように腕を組んで首をかしげた。だからその戦闘種族的思考やめーや。

 

 もしも交渉決裂したら諦めて遠くへ逃げる。

 そして今度こそファーストコンタクトを成功させるのだ! では、れっつごー。

 

 

 

 夜人達を伴って、ゆっくり歩みを進める。

 

 向こうの兵士達が慌てている様子が見えるまま、俺は村の手前で歩みを止めた。門を挟んで俺は兵士たちと相対する。

 村を囲う柵に付けられた篝火(かがりび)が爛々と輝き、周囲は夕暮れのような明るさだ。

 

 だけど昼間じゃ無い。

 俺の知覚は優れたままで、夜人達も気合が入っているのか全身に黒い瘴気を纏わせて待機中。

 

 門に柵と言えば恰好は付くが、ほとんどが木枠で作ったスカスカの囲いだった。

 向こう側など丸見えで大型の獣であれば時間稼ぎ程度には成るかといった作りの壁。でも俺のような少女ボディにとっては絶対防御壁。

 

「……たわい無い。これは夜人を舐めている」

 

 でもヤト達ならいけそうだねーの意。

 なんだろう、この少女ボディはやっぱり人前になると緊張するのだろうか?

 たわい無いって何だよ、いつ使うんだよ。練習の時はそんな言葉使いじゃなかったじゃんか……。

 

 そうこうしているうちに門の奥では兵士たちが静かに集まってきていた。その数実に50人。

 この前の10人は即応部隊だったのだろう。

 三日目に比べて遥かに防衛網が強固になっている。俺も相手も緊張した表情で違いを伺っていた。

 

「まだ……まだ」

 

 俺の待ち人はまだこない。

 目を瞑って精神統一すれば村の全域なら辛うじて把握できる。当然、こちらに向かって駆けているいくつかの気配も読み取れた。

 

 あれがたぶん聖女さんかなぁ……。

 村の中央付近から移動している4つの気配。

 他と比べて凄い輝いてるのは聖女さんで、一緒に来てる一際強い気配は隊長さん?

 彼らが門にたどり着いたのを感じ、集中するために瞑っていた目を開く。

 

「来た」

 

 門の向こう側には凛とした聖女さんが居た。

 木枠越しに十数メートルの距離で見つめ合う。

 

 俺は彼女を待っていた。

 これからするのは一世一代の大交渉。互いに口約束でしか交わせない俺の命綱。

 ならば交渉相手は俺が一番信頼できる彼女を抜いて他にいない。

 

 聖女さんは村を襲ってきた他人にも、ダメな事はダメとしっかり叱れる人だった。

 頭ごなしに否定するのではなく、自分の考えをしっかり語ってくれた彼女だからこそ信頼できる気がする。

 

 あれ、だけど一歩前に出てきたのは隊長さん……?

 なんだろう彼が村の代表なのだろうか。ちょっと困る。

 

「……」

「……」

 

 あの……何か言ってくれませんか?

 無言で睨まれてもその……困る。

 

「君は――」

「お前じゃない」

 

 あ……やばい。隊長さんと喋り出し被った! お互いにイヤな奴だー!

 しかも俺は対人用少女フィルターONだから、かなり言い方きつくなってる。

 

「……」

「……」

 

 そして互いに譲って無言になる悲しいやつ。

 くそ、突っ込め! 貴方じゃなくて、聖女さんに代わってくださいと言う、言うぞー! 優しく言う!

 

「お前じゃない。お前(ごと)き用はない」

 

 あ、ダメだ!

 隊長さんごめんね。言い方きつかったね。

 だからそんな悲しそうな顔しないで。

 

「……来て」

 

 もうこれ以上喋るとダメだ!

 俺は出来るだけ単語だけ述べる様に意識して聖女を指さす。

 

「わ、私ですか!?」

「そう」

 

 聖女さんは何度か視線をさ迷わせてから、大きく息を吸い込んだ。

 

「何の用でしょうか……今日は随分と沢山の方と一緒にお越しになったようで」

 

 一歩前に出た聖女さんと門を挟んで向かい合う。

 

 彼女の後ろには50人の屈強な兵士。

 だけど俺の背後にはおよそ100人の夜人がいる。最悪を想定して、いつでも逃げられるように戦力は遊ばせてられない。

 ちょっと相手を威圧するかもしれないけど、許して欲しい。俺だって怖いのだ。

 

(こ、こんばんは)

「……良い夜だ」

 

 え、待って。なんか思っていたセリフじゃない。

 ちょっと昔の心がざわついたから少し待って。一回落ち着く。

 

 大きく息を吸って吐く。それと同時に聖女さんの様子を確認。

 相手は純白の祭服を着ていた。首から提げた球形のロザリオは太陽を模したモノだろうか。

 対して俺は再びスーツのズボンとワイシャツ仕様。靴も血が付いていたから、いま足元はなにも履いてない。

 

 ダボダボ服装に裸足と格好付かないが……しょうがない!

 チラッと夜人が抱えていた血まみれの村服を見つめる。あれを着てたら大変だもんね。

 

「――ッ!?」

「?」

 

 その瞬間、聖女さんの顔つきが変わった。

 まるで信じられないモノを見たように、夜人――正確にはその腕の中にある血まみれの服――を見ている。

 

「そ……その、服はどうしたのでしょうか? なぜあなた方が?」

 

 聖女さんの声は震えていた。

 ……そうじゃん。俺等、明らかにヤバイ物を持ってるじゃん。

 

 夜人おまえなー! なんで血まみれの服もって来てんだよー!

 置いてこいと言ってないけど、常識的に考えて持ってきたらヤバいの分かるでしょ!? 普通置いてくるでしょ! ……コラ! 首かしげるな!

 

(せ、聖女さんや! それは森での拾い物ですよ! 気にしないでください!)

「それは戦利品。こんな些末な物、今はどうでもいい」

 

「どうでもよくありません!! それはこの国の人がよく着る服じゃないですか!? なのに、どうして血まみれなんですか! 戦利品とは一体何ですか、まさか貴方!?」

 

 ひぇ……ヤバイよこれ。

 交渉に入る前から終わるー!

 

「そんな事は(あずか)り知らない。想像が飛躍している。これは森で拾った、それ以上でも以下でもない」

 

 俺の焦りが夜人にも伝わったのか、それとも聖女の大声に反応したのか、俺の後ろで夜人達もにわかに動き出した。

 肩越しに後ろを見れば、夜人達が一歩距離を詰めていた。

 

「どうして戦闘を希望する?」

 

 夜人さんはどうしてそんなに好戦的なんですか?の意。

 俺が睨みを利かせて制止したから、夜人はどうやら理解してくれたらしい。ヤトはしゅんとして後ろに下がった。

 

「っ――! そうですか」

 

 聖女さんも一歩下がった。

 ……なんで!?

 

 迫る夜人達が有無を言わせない気迫でもあったのだろうか? 聖女さんが悔しそうに黙り込んでる。

 

 無言の空間にパチリと薪が撥ねる音が響いた。互いの白い上着に篝火が映える。

 

 ……交渉決裂の気配!! 夜人キサマー!

 でもここまで来たら突き進むしかない。もっと働いてくれよぉ少女の体ぁ!

 

「先日の出来事はお互いに不幸なモノだった。申し訳ないと感じている」

「……はい。こちらも当時の門番から入村に関して不手際が有った可能性を聞いています。なにかしらの行き違いが有ったかもしれませんね」

「そう。あの程度で済んでよかった。死者を出さなかった事に感謝して欲しい」

 

 ここで初めてピクリと隊長の眉が動いた。

 

 ――この前はお互い不幸なすれ違いがあって申し訳ない。でも、戦闘もあの程度ですんでよかったですね! 結果的に死者をどちらも出さなかったですし、お互いの幸運に感謝しましょうの意。

 

 ……なんか凄く泣きたい。

 やっぱり、この少女ボディは人間になんか恨みあんのか? どうして俺の思考や言葉尻を捕らえて悪意マシマシで説明するの?

 ほんとに人格凍ってる? 違うよね、悪意あるよね!?

 

「ええ、そうですね。多分な配慮に感謝します」

 

 村に攻めてきておいて、死者を出さないでやったから感謝しろって……うん、聖女さんもブチ切れ案件だ。

 血まみれの村服の事すら呑み込んだあの聖女さんもこれには無表情。

 

 ぬおーーー!! やっぱり俺に長文は駄目だァ!

 短く! 簡潔に!

 でもちょっと思った事でもついポロって喋ってしまうのだ。この少女ボディ操縦不能すぎるー!

 

「契約を申し出る。拒否すれば困窮することになる」

「……契約、ですか?」

 

 違う! お願いと言え!

 困窮――困るのは俺だ!

 

「困窮とは具体的には?」

「死ぬ」

「なるほど殺すと。それは分かりやすいですね」

 

 (この村周辺で)生きていけないのも俺だ。

 どう引っかかった? 死ぬのお前かよーって突っ込み待ちね。少女ボディの小粋なジョークねコレ。

 あ、聖女さんも笑ってる。まさか少女ジョーク伝わった?

 

「契約内容を言う前に脅迫……ふふ、面白い人ですね。白紙委任状を差し出させるつもりですか? 私達に命から何まで全てを寄越せと」

 

 はい、伝わってない!

 というかこれで伝われば奇跡か、聖女さんがさとり妖怪だったかのどっちかだ。

 そして聖女さんは妖怪じゃない。QED

 

 なんか、どうにもならない気がして来た。

 もう致命的な事が起きるまで突き進むわ……。

 

「私が欲しい物はたった3つ。それを差し出させる」

「……どうぞ」

 

 俺は一度言葉を区切って大丈夫かなと相手の反応を待った。

 聖女さんは不機嫌な様子で続きを促してくれた。どうやらまだ対話は可能!

 

「まずは食料。指定時刻までに指定場所へ……毎日夜の9時にこの村の出入口に人一人が苦労なく食事できる量を置くように」

「……どうぞ」

 

 あれ奇跡起きたわ。

 なに少女フィルターやればできるじゃん。ちょっと高圧的だけど、普通の内容じゃん!

 

「次の要求は魔導書。……魔導書は存知?」

「ええ、知っていますよ。ですが種類は豊富です。貴方の求める物はなんですか?」

「できるだけ醜悪で残虐で、邪悪なものが欲しい。有名なモノは幼子の皮を生きたまま剥がして作られたともいわれる人皮装丁本」

「に、人皮!? なぜ、そんな物を!?」

 

 う……裏切ったなぁ少女ボディ!

 なぜ貴様は俺の期待と信頼をすぐ裏切る!?

 

 たしかに夜人は邪悪そうだから、それ系統の魔導書が役に立ちそうで欲しいよねぇと言ったつもりだ。

 たしかに邪悪な魔導書ってフィクションだと人の皮で作られてるよねぇとも思ってしまった。だけどそれを欲しいとは言っていな……少女も欲しいと言ってねぇや。引っ掛けか貴様!

 

「魔導書は私の目的のために必要。それ以外に他意は無い」

「そんな人皮なんて……とても私に用意できるとは思えませんが、そんな呪われた本が必要な目的、理由を教えてください。もしも邪悪な目的があるなら、拒否せざるを得ない」

「私は安眠が欲しい、ただ、それだけ」

「え? あん…みん? 誰かへの害意とかじゃなくて……安眠」

 

 聖女さんは訝し気に眉をひそめた。

 考えていた理由とは全く違うものだったからだろう。

 

 まあおどろおどろしい魔導書寄越せって言われて、その理由が安眠なんて思わんわな。でも聖女さんも一晩中のクシャミ地獄に悩まされればわかるよ。絶対。

 

 てかこの理由は素直に言うのね少女。

 なんだろお願いを契約に言い換えたり、思っただけの人皮装丁本を話題に出したり、普通の話ならまだいいけど邪悪系統の話になると途端に饒舌になってねぇかなこの少女ボディ。

 

 やっぱり夜の化身だからそっち系の話に興奮してる? ないか。……ないかな?

 でも考えてたように人前だと余計に口調固くなるし、悪意に満ちた言葉の取捨選択するし……。

 あーもー! 【夜の化身】って一体なんなの!?

 

「どうしてそんな魔導書が、貴方のような少女の安眠に繋がるのですか? むしろ逆、下手に呪いの品を手に入れたら寝れなくなるような気がします」

「力が必要。私が誰にも脅かされることなく生活するにはもっと力が必要」

「脅かされる? だから力、ですか? それはそんな曰く付きの魔導書じゃなければならないモノですか?」

「安寧が手に入るならなんでもいい。力が手っ取り早いと感じ、魔導書が有れば力が手に入ると考えた」

 

「……なる程。では、3つ目をお願いします」

 

 これはセーフか? アウトなのか? 分かんねぇなぁ。

 もう俺の精神はボロボロよ……。

 

「最後の要求は知識」

 

 早く終わってくれぇと思いながら最後のお願い。

 

「私にはこの世界の一切が未知。だからその知識が必要。以上」

「知識が無い? この世界の知識……。そんなことあり得るのですか?」

 

 うん?

 うーむ、なんか今日最高に聖女さんが困っている。

 

「すみませんが、貴方の言う知識が欲しいというものが漠然としています。具体的にはどんな知識ですか?」

「分からない所も分からない。必要なのは世間一般常識」

 

 聖女さんは頭が痛いのか眉間を指で押さえてブツブツとなにか考えこみ始めた。

 

 そんなの普通じゃないとか、本当に裸足なんだとか呟いてチラッとある兵士の方をみた。

 あれは……たしか門番をやっていた男だろうか。

 聖女さんの視線に気付いたのか、頷いて何やら深刻そうな表情。なにアイコンタクト? どういう事?

 

「では、その知識をどうやって教えれば良いのですか? ……まさか人の脳を開いてとか、そんなことは言いませんよね? もしくは魂を啜って、とか」

「……???」

 

 ……え? 怖っっっわ!!

 突然この聖女さん何言いだしたの!? どういう思考してんの?

 なに、え……なに!? この世界ってそう言う魔法あんの!? 怖いわ!

 

「そんな事はしない。私を何だと思ってる」

「はは、失礼しました、それはそうですよね良かった。……良かった。聖書に出てくる夜の神の邪法は使えないのかな。いや、しないって言ったから、できるけどしないだけ?」

「そんな魔法あるの?」

「え? え、ええ。はい、ありますよ。え、と……知りませんでした?」

 

 うわーお、まじか。

 もしかしてこの世界ヤバい奴?

 

 そういえばさっきサラッと流しちゃったけど、人皮魔導書とか実在するように言ってたし、ヤバい片鱗はあったのか。

 なんとなくここ数日何も起きなかったから、ほんわか異世界ファンタジーを想像してたけど……だめだ! ダークファンタジーの世界だココ!

 

「狂人が魂を弄り回して肉人形作ってたり、人と犬を合成してたりしそう……」

 

 勘のいいガキは嫌いだよって言われないように気を付けなきゃ。

 いや待てよ。ダークファンタジーというとそれだけに済まされないぞ……まさかと思って聞いてみる。

 

「邪神とかもいる?」

「ええ。いますよ? ……今一番邪神っぽいのは貴方ですけど」

 

 うぐぐ……神様実在する系かぁ。こうなると途端にエログロが増すダクファン作品は多い。

 人間では逆立ちしても敵わないのが邪神だったり、その使徒だったりするのだ。そんでそれと契約した人間が村人を追い詰めたり、醜悪な疾病を流行させたり。

 転移する前の世界で読んだダクファン漫画が思い起こされる。やだー、グロいよぉ。

 

 この世界がそんなフィクションと同じとまではいわないけど、聖女さんまで魂を啜るとか脳を開くとか言ってるんだ。ヤバいのは変わらない。

 きっと処女の生き胆を贄に悪魔召喚とかあるのだ。闇のサバトとかあって夜な夜な怪しい儀式するのだ。

 

 うーん、まずいな。

 やっぱり知識は必須だ。下手に行動すれば俺もグチャエロに巻き込まれる。TS女でエロ展開とか俺やだよ。

 

「……知識が最重要。次いで魔導書。食料は最悪なくてもいい」

 

 うん。もうこれだけで今日の収穫は上々だ。

 悩みを解決しに来たら、別の悩みが増えてしまったが……。

 じゃあ締めに入ろう。

 

「それでは契約を結ぶか。否か」

 

 ボールを村人に投げ渡す。

 

 

 

 

 




聖女「エリシア様は居るし(聖書に載っている)邪神もまあいるよね」 ← 聖職者的思考
TS少女「うごご、ダークファンタジーやめてくれぇ……」

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