ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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二十話「A5」

『加勢するって言っても――』

 

 原作通りならバランには呪文が通じない。俺にできるのは補助呪文ぐらいだが。

 

「メラをバランに。行動で味方だってことを」

『そっか』

 

 確かにモンスターの姿で乱入すればバランと向き合ってる人物の方に敵と誤認される可能性がある。

 

(加えて呪文が効かないなら、わざわざこっちの呪文も躱さないかもしれないし)

 

 全く有効な攻撃手段を持たない相手なら、無視してより脅威である相手を優先する。原作のバランがそうだった。つまり、俺が狙われにくくすることも狙っての指示ってことだろう。

 

『メラッ!』

 

 相手に呪文が効かず、取れる手段が限られていると言う意味合いでも特に断る理由もない。俺はバラン目掛け小さな火の球を飛ばし。

 

「たあっ!」

「むッ!」

 

 合わせる形で斬りかかったA5の覇者の剣だけを手にしていた剣で払いのける。直後に火の玉が顔面にぶつかるが、おそらく効いていないだろう。

 

「おまえは? っ、モンスター?!」

「こいつが敵の軍団長……おれも加勢します、いくよ、メラゴースト君!」

 

 横から割って入った乱入者を見た後、視線の延長線上にいた俺も視界に入ったのだろう。驚きの声を上げた騎士に旗色を明らかにしつつまくしたてるように俺を呼んだことでA5は俺も味方だと騎士に伝え。

 

「確かに……今の呪文はあの男に命中していた。いや、それよりもおまえのことは聞いているし、何よりドラゴン共を倒すところはこの目で見ている」

 

 騎士は信じようと続けた上で名乗った、ホルキンスと。

 

「その名前は、騎士団の――」

「ああ。団長だ。もっとも、この場で立っているのはおれ一人になってしまったが。その上で、加勢してもらっておいて気が引けるが、ここはおれに任せてはくれないか?」

 

 A5に頷きを返し、剣を構えなおしつつ視線はバランから背けないまま、ホルキンスは言う。この場に生き残りのドラゴンは居ないが交戦中に一匹や二匹の突破を許した可能性はあると。

 

「生き残りは後方に下げたが、おれの弟を含め負傷者しかおらず、手当てしても戦えない程の重傷者も多いし。女王陛下のこともきにかかる。この男は俺が命に代えても討ち果たす。だから」

「メラゴースト君」

 

 最後まで言わせずA5が名を呼んだ時点で、俺は言いたいことを察した。

 

『ルーラッ』

 

 城は小高い丘の上にあり。城下町の建物の上から見えている上に、噂を広める時にランタンの中から覗けた景色もあった。

 

「なっ、モンスター?!」

 

 唐突に現れた俺に驚きの声を漏らした目撃者が居たが、俺は気にしない。

 

『居た、マヒャドッ!』

 

 高所から侵入していたドラゴンを発見すると放った呪文で凍てついたドラゴンは断末魔をあげ横倒しに倒れ。

 

「モンスターが、ドラゴンを?!」

『ルーラッ』

 

 驚愕の声を無視して俺は再び移動する。移動先は俺達が宿で借りた部屋のベランダだ。

 

『ちっ、二匹……ベギラゴン! 他には……居なさそうか。ルーラッ!』

 

 収束させた極大閃熱呪文を使ってドラゴン達を串刺しにすると、俺は瞬間移動呪文で舞い戻る。

 

「おかえり」

『三匹仕留めた、他は見当たらない』

「そう。三匹仕留めたんだって」

 

 俺の言葉をA5が訳せばホルキンスがバカなと漏らすが、まぁ無理もない。普通のメラゴーストがドラゴン三匹瞬殺して戻ってきたって聞いたら、俺でも信じないのだから。

 

「なるほど、ただのメラゴーストではないという訳か」

 

 かわりに口を開いたのは俺の方に瞳を向けたもう一人の男、超竜軍団長バランだった。

 

(まあ、普通のメラゴーストは瞬間移動呪文は使わないしな)

 

 最初にメラを放って誤解させた意味はなくなってしまったわけだが。

 

『けど、戦いが再開されてないのは意外だったというか……』

「どうもこの軍団長が、おれに話があるらしくてさ」

『ああ』

 

 話をしたくてもホルキンスが放っておかず、ホルキンスを片付けようとすればA5が邪魔をするから膠着状態に陥っていたということか。

 

「とはいえ、埒が明かんな」

 

 別に俺を待っていたという訳ではなく、その膠着状態も辟易したのか。

 

「単刀直入に言おう。……おまえの力が欲しい!! 私の部下になれ」

「なっ?!」

「えーと」

 

 本当に用件だけを伝えるバランへ驚きに目を見張ったホルキンスが俺の視界に居たが、ホルキンスと比べて直接伝えられたA5の方の反応は微妙だった。

 

(まぁ、原作知識でそう言ってくることは知ってたしなぁ)

 

 わかっていると驚きようがないというのもあるが。

 

「ドラゴンは結構な数やっつけちゃったし、その穴埋めに戦力が居るってことくらいはおれにもわかるけど……」

「そうではない。電撃呪文を使うということは、おまえも私と同じ竜の騎士。故に務めとして人間どもの世界を滅ぼさねばならんのだ!」

 

 相変わらず微妙そうな顔のA5に頭を振ったバランはそう訴え。

 

「竜の騎士?」

「よかろう、知らぬようだから教えてや」

「俺を放っておいて何を分けの分からぬ話を!」

 

 語り始めようとしたところで、我に返ったホルキンスが剣を振り上げ、地を蹴った。

「っ、やはり話をするにはこの男が邪魔か」

「剣をおさめるとは!」

 

 襲い来る斬撃、それをバランは手にした剣で弾いて鞘に戻し。

 

「臆したかあっ!!」

「いけないッ!」

 

 更に追撃しようとするホルキンスをA5が付き飛ばし。

 

「ぐァッ』

 

 バランの額から伸びた光に肩を貫かれたA5がポフンと煙を上げてメラゴーストに戻る。

 

『A5?! モシャスッ!』

 

 俺はとっさにダイの姿に変身すると、変身呪文がとけてA5が取り落とした覇者の剣を拾うが。

 

「「な」」

 

 バランもホルキンスもただ目を剥いて立ち尽くしていた。理由は解かっている。

 

「どちらもメラゴースト、だった、だと?!」

 

 バランからすれば自分の息子だと思って勧誘した相手がメラゴーストだったんだから驚きも二重だろうが。

 

「うん、だからその竜の騎士の務めとやらはおれ達には関係ないし、おれも一応アバンの使徒だからお誘いには乗れない」

 

 勧誘された以上、断るとしても意思を伝えるのは筋と判断して頷いた俺は口を開くが、バランは少しの間反応せず。

 

「一つ聞く、何故その姿をしていた」

「理由は二つ。魔王軍には呪文の効かない猛者が居て、呪文主体のおれ達だけだと対抗手段がなかったから。もう一つは、師であるアバンの故郷を訪ねここまで来たけど、流石にモンスターを入れてくれるとは思えなかったから」

 

 表向きとはいえ理由は素直に答え。

 

「そうか、我が子でないというならもはや手加減も不要……」

 

 額に紋章を浮かべたバランは最後まで聞き終えてから身構え。

 

『バイキルト、スクルト、スクルト!』

 

 これはやばいと思ったところで、A5から補助呪文がかかる。

 

「ぐっ」

 

 呪文の補助を受け、すぐに翳した覇者の剣が持って行かれそうなほどの衝撃を受け。

 

「まだだっ」

「うわっ」

 

 すさまじい速さの蹴りを勘と運とに助けられ倒れこむことで何とか回避する。

 

「バカな、さっきまでとは速さがまるで違う」

 

 慄くホルキンスの声が聞こえるが、こっちはそれどころじゃない。

 

「その守り、先ほどまでの動きに比べれば不相応に固いが、動きは鈍い。前の様に瞬間移動呪文では逃がさんぞ」

「くっ」

 

 素早さを上げる呪文だけは僧侶の呪文で使えないという弊害が出てしまったらしい。加えて、ルーラでの退却を見せすぎたのも拙かったのだろう。

 

『A、悪いんだけどさ、俺の分まで殴られといて……』

「え」

 

 そんな場合じゃないとわかっているのに、ふいに聞こえたA5の声に俺は振り返り。

 

『レムオルッ』

 

 透明化呪文で消えるA5が微かに視界に入り。何をする気なんだと言う言葉は、届かない。

 

「む?」

 

 A5の動きに気が付いたのだろう。バランは周囲を見回すが、A5はもう透明になった後ことで。

 

『さよなら、A。メ――』

 

 次に姿を見せた時、A5の姿が変わっていた。そう、あれは近接消滅呪文を俺が使ったときの半身の色と同じ。

 

「待て、A5」

「馬鹿め。姿が透明になっただけで竜の騎士の五感を欺けると思うな!」

 

 思わず手を伸ばす俺の前で、振り返りざまに抜刀したバランによってA5の身体は真っ二つに断ち切られた。

 




A5、散る。

次回、番外12「魔人誕生(バラン視点)」に続く。

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