ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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番外12「魔人誕生(バラン視点)」

「……ハドラーめ……!」

 

 私の中では様々な感情が渦巻いていた。相対していた相手がメラゴーストなどという本来圧倒的弱者であったことへの驚き、生き別れの我が子だと思った相手がメラゴーストの化けたものであった落胆。それに振り回されたことへの怒り、そして。

 

「たくらみが読めたわッ!!!!」

 

 我が子ディーノの姿をとったメラゴーストは自身をアバンの使徒と称した。それはハドラーが総攻撃を行い根絶やしにしようとしていた敵対者達の自称でもある。これだけヒントを手にすれば真相にたどり着くことなど容易だった。おそらく、我が子ディーノはアバンの使徒の中に居る。それならば、ハドラーが総攻撃から私を意図的に外そうとした説明がつく。

 

「さて」

 

 ディーノの姿のメラゴーストが狼狽しつつしゃがみ込んでいるのを視界に収め、私はこの場に居るもう一人に目をやった。

 

(ホルキンスといったか……)

 

 人間の身で紋章を出さぬ斬り合いと言えど私の剣と互角に渡り合ったのは驚嘆に値するが、そこまでの男。そして私とメラゴーストの会話の邪魔をしてくれた男でもある。ディーノの姿のメラゴーストが仲間の死に茫然自失の態である今のうちに始末しておくべきだろう。

 

(もはやあのメラゴーストにディーノのことを訊く必要もほぼないが、まあいい)

 

 あの様子ではすぐに立ち直れるとも思えん。斬るにしろ確認するにしろまずは邪魔者を排除すべき。そう断じた私は手の真魔剛竜剣を鞘に収めようとし。

 

「なッ?!」

 

 思わず目を見張った。竜の騎士の正当なる武器にしてオリハルコンで出来た真魔剛竜剣の刀身が半ばから失われていたからだ。

 

「どういう……もしや、あのメラゴーストが!?」

 

 思い当たる原因はただ一つ。見知らぬ光を放ち肉薄してきたところを斬り捨てたもう一匹のメラゴースト。竜の紋章が輝き、竜闘気と呼ばれる生命エネルギーの気流に覆われた竜の騎士に呪文は通用しない、故に本気を出せば複数のドラゴンを倒しうる魔法使いでも脅威たりえない筈なのだが、代々の竜の騎士から受け継がれた戦闘経験と勘が告げたのだ、それを無防備に受けるわけにはいかない、と。

 

「判断は正しかったということか」

 

 真魔剛竜剣の刀身を損なわせた何かをわが身で受けてみる気など私にはない、しかし。

 

「そういうことであれば、こいつも生かしておくわけにはいかんな」

 

 片割れに出来たのなら、同じことがもう一匹にも出来ると考えてよかろう。私は考えを改め、「そんな」だの、「嘘」だのと呟くディーノの姿のメラゴーストへ歩み寄る。

 

「意図してのことではなかろうが、嫌なことをさせてくれる」

 

 本人でないとはわかっているが、まさか生き別れの息子の姿をした相手を屠らねばならんとは。

 

「……そ、そうだ、……った……れば」

「終わりだ」

 

 メラゴーストはまだ何かブツブツ呟いていたが、立ち直った様子はない。私は額の紋章に力を集め。

 

「でやあっ」

「ちぃっ」

 

 繰り出された斬撃に舌打ちをして飛びずさる。

 

「貴様は――」

「このメラゴーストはやらせんっ!」

 

 メラゴーストを庇う様に立ちはだかったのは、先に始末しようと思っていた男、ホルキンスだった。

 

「人間がモンスターを庇うか」

「生命の恩人に人もモンスターもあるものか!」

 

 私の言葉に叫び返したホルキンスは剣を構え直し。

 

「正直に言えば、彼らが両方メラゴーストだとわかった時、本当に味方なのかと迷いはした。だが、生命を賭して俺を助け、その上で……」

 

 ギリっと歯を噛みしめディーノの姿のメラゴーストを一瞥するや、視線を戻すとこちらを見たまま口を開く。

 

「ここは俺が引き受ける。君は彼を連れて下がれ」

「なッ?! 貴様ごとき私の敵ではないことはもうわかっている筈」

「それでも、ここは引き下がれんッ!」

 

 あのメラゴーストの為に生命を捨てるつもりということか。

 

「よかろう。ならば貴様か、がはっ?!」

 

 貴様からあの世に送ってやろう。そう告げる前に私は腹部に強烈な衝撃を受けて空を舞っていた。一瞬ちらりと見えたのは揺れるような炎。

 

「は?」

 

 宙を舞う中、間の抜けたホルキンスの声が聞こえたが気にしている余裕はなかった。同時にあちこちから断末魔が聞こえた気もしたが、気を割くどころではない。

 

「ぐっ」

 

 勢いのまま地面を転がってから身を起こし。

 

「……なんだと?!」

 

 私は大きく目を見開き、立ち上がろうとする途中の姿勢で固まった。視線の先に居たのは、あのメラゴーストを思わせる炎の闘気を纏い額に竜の紋章を光らせた少年だったのだ。ならば、先程の断末魔は闘気の余波で消滅させられた偵察用の使い魔達のものか。

 

「馬鹿な……変身呪文で竜の紋章の力まで――」

 

 それだけではない、不意を突いたとはいえ竜闘気を纏った私にダメージを与え、殴り飛ばしたのだ。竜の紋章を使いこなしただけではこうはならない。

 

「……魔人、さしずめ炎魔人といったところか」

 

 私は竜の騎士の最強戦闘形態のことを脳裏によぎらせ、ポツリと漏らしたのだった。

 




A5を失ったメラゴースト君に一体何が?

次回、十四話「新たな力」に続くメラ。
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