ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「……魔人、さしずめ炎魔人といったところか」
バランのつぶやきを俺は確かに拾っていた。時間はそこから少し遡る。
◇◆◇
「そんな……嘘だ」
俺には信じられなかった。A5が真っ二つになったことも、これでお別れだなんてことも。おぼつかない足取りで近寄って今にも消えゆこうとしているA5の身体の前で膝をつき、何でどうしてと言う言葉だけが頭の中を回っていた。
「どうしたら、どうしたら」
A5を助けられるのか。蘇生呪文なんて使えない、回復呪文もだ。モシャスを解いてマァムか誰かに変身するなんてことに思い至れない程、俺は冷静じゃなくて。
「あ、ぁぁ」
混乱する中でどんどん消えて行くA5を見てどうにかしないとと手を伸ばした時だった。
「……そうだ、合体、合体すれば」
一度取りこんでまた分裂すれば、A5を助けられる。ダイに変身したままで合体なんてできるはずもないということすら、俺の頭からは飛んでいて。
「A5」
A5の炎で自分が火傷しかけてモシャスが解けるのでは、なんてことに気が付いたのすらすべてが終わった後だった。
「……あ、れ?」
気が付くと、俺の身体は炎の様な闘気に覆われていた。
「何がどうなって」
訳が解からなかった、ただ。
「生命の恩人に人もモンスターもあるものか!」
前から聞こえたそんな叫びと。
『A、何やってるの! 戦闘中でしょ!』
すぐそばから聞こえたそんな声が、俺を我に返らせて。
「っ」
最初に感じたのは強い怒り。バランにではなく、こうなることを予測できなかった俺自身への怒りだ。額が、身体が熱く、暴力的な何かが内から外に出ようとする。
「ここは俺が引き受ける。君は彼を連れて下がれ」
そんな中で耳にしたのは、俺を案じ庇おうとするホルキンスの言葉。俺はそうすることが正しいと感覚的にわかっているかのように解き放ちつつ、バイキルトと呪文を唱え。同時に前に立つホルキンスの脇を抜けて前方へ飛び出した。
「ギョエエエッ」
「グギェエエッ」
あちこちから人ならざるもののものらしき断末魔が上がるが、気にすることなく握った拳をバランの腹目掛けて叩きこむ。
「は?」
どこか間の抜けたホルキンスの声が聞こえたような気もしたが、今は気にしてる余裕はない。
「……なんだと?!」
地面を転がり身を起こしかけた姿勢でバランは大きく目を見開き動きを止めている。好機だ。
「馬鹿な……変身呪文で竜の紋章の力まで――」
(そっか、今の俺は……)
竜の紋章の力まで制御しているのかと自分でも訳の分からないパワーアップの理由の一つに納得する。納得しつつ、地面に転がった誰かの剣を拾い。
「……魔人、さしずめ炎魔人といったところか」
バランがそう呟いて、今に至る。
◇◆◇
「がっ?!」
拾った剣をバランに叩きつけると、剣は砕け、バランは地面に突っ伏す。その頭を俺は更に蹴り上げ。
「ごっ」
跳ねあがったバランの身体を追うように跳躍んだ。どうにも普通の武器だと今の俺の一撃に耐えられないらしい。
(ならっ)
握りこんだ拳に力を、力を込めた。クロコダイン、技を借りる。
「獣王、痛恨撃ッ!!」
「なん」
最後まで言わせることなく、放たれた闘気の奔流にバランは呑み込まれ。
「どこか、どこかに武器は」
A5の亡骸を抱きしめて、うっかり覇者の剣を手放してしまった俺は、自分の一撃に耐えうるモノを探して周囲を見回し。
「くっ、ふざ……ふざけるなぁッ!」
かわりに目にとめたのは、流血しつつ激昂して殴りかかってくるバランの姿。これに向けて俺は意識して額の紋章へ闘気を収束させ。
「煉獄紋章閃ッ!」
「があっ」
炎の色に染まった光でかかってきたバランを撃墜する。
(押せている)
今のところはだが、たぶんこの炎の闘気が俺の、いやダイの力を何倍にも跳ね上げさせているんだろう。
「あ」
そんな折だった、俺の視界にそれが入ったのは。ただの折れた剣の先端。だが、それは鉄や鋼のではなく。
「おのれェェッ!」
「ッ」
ボロボロになってもまだ身を起こし向かってくるバランの声で、咄嗟に駆け寄り拾い上げたそれを掴んで、俺は繰り出し。
「ぐ、あッ」
A5の近接消滅呪文で分かたれたのであろうバラン自身の剣の先端は、守りを突き抜けてバランの腹部に突き立つ。
『A』
「うん」
まただ、A5の声が聞こえたような気がした。そして、俺は俺達は。
『モシャスッ』
纏った闘気がポフンと煙を上げて俺から離れ、ダイの形をした炎の闘気を作りだす。それは片手を空につきあげ、俺も同じようにして天へ手を振り上げていた。
「『ミナデインッ!』」
「がああっ?!」
轟音を伴う凄まじい落雷がバランの腹に突き立った剣先に落ちる。絶叫を上げたバランの身体が、傾ぎ。
「ぐ、あ……ルーラっ」
倒れこむ前に口した呪文の効果によってどこかに飛び去った。
勝ちおった、このメラゴースト。
尚、「ミナデインはやらなきゃいけないような気がした」と作者は意味不明の供述をしており。
次回、十五話「何度目のやらかしですかねぇ(白目)」に続く、メラ?