ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

104 / 256
十六話「カールを発ちたい(願望)」

「これは憶測とかの部分も多いんだけど、おれってモシャスの呪文で人の姿と能力を写し取ってて、バランの言葉が正しければ今俺がモシャスで変身してる弟弟子も竜の騎士ってことになると思う。だからだけど」

 

 力量などが条件を満たしていればと言う条件は付くかもしれないが、あちらにできることはこちらにもできるという理屈になる。

 

「現にホルキンスさんを狙ったバランの光線を放つ技、おれは初めて見たんだけど再現できたし」

 

 敵から見れば厄介なことこの上ない。手札を明かせばそれを学んでいってしまうのだから。

 

「おれがバランだったら、そんな相手にあったとしても軽々しく奥の手とか使えない。だから、そこに付け込んで一気に倒すことにしたんです。こっちは勘みたいなものだけど、バランは何かまだ奥の手を持ってる気がして……」

 

 だというのに逃がしてしまったことが気にかかるのだと俺は話し。

 

「それに、あいつはおれの弟弟子、本物のことを息子って言ってました。ひょっとしたら、こっちじゃなくて本物の……勇者ダイの方に姿を見せるかもしれなくて」

「なる程、君の弟弟子が心配だがあの男に対応するなら最低でも君自身が弟弟子のところに出向く必要がある、と」

「はい。それで俺が留守の間にここへ傷を癒したバランが攻めてくるようなことがあったら」

「その先は言わなくていい。先の戦いでドラゴンどもは多くが地に躯を晒したが、騎士団の中にも命を落とした者、戦えぬほどの怪我を負った者も居る。そして、敵の長の力量も君と共に戦ったおれは知っている」

 

 俺の葛藤の理由を察したのだろう、頷いたホルキンスは顎に手を当てて何か考え始め。

 

「ふむ、となると最低でも女王陛下にはご避難頂くより他ないか」

「……ホルキンスさん」

「君と彼が生命をかけて守ってくれたものを失わせるわけにはいかん。陛下達はおれの方で説得しよう。なに、君がこのままこの国に留まれない理由があると伝えるだけで陛下なら理解してくださるだろう。あの男はまだ生き延びているのだからな」

 

 言葉を失う俺にホルキンスは力なく笑んで見せた。それは、自分だけではあのバランに勝てないと認めることでもあるからだろう。

 

「生き残った者、動ける者でこれからは逃げる訓練、逃がす訓練をせねばならんな」

 

 冗談めかして苦笑しつつ肩をすくめたカール騎士団、騎士団長は真顔に戻ると、深々と俺に頭を下げた。

 

「君と彼に受けた恩は生涯忘れん。また何か困ったことがあれば尋ねてくると良い。もっとも、おれにできることなぞたかが知れて居るかもしれんが」

「いえ、ありがとうございます」

 

 頭を振ってから俺も頭を下げ、そして立ち上がり。

 

「あ、そう言えばここは……?」

 

 話すのや考えるのに気をとられて意識を取り戻してから身を起こしてしかいなかった俺は、本当に今更ながらに自分がどこに居るのかわからなかったことに気付いた。見たところ、どこかの民家の土間か何かの様だが。

 

「そうか、そうだったな。ここは城下町の民家の一つだ。戦場から近く、住民も避難していたから借りさせてもらっている」

「あー、ありがとうございます。おれ、メラゴーストだから雨とか弱くて」

 

 気を失ったまま雨ざらしになっていたらと思うとぞっとする。

 

「なる程、心配せずともここ二日はにわか雨すらないがな。そう言う意味ではドラゴン共に町を蹂躙されるようなことが無くてよかった」

「あ」

 

 原作での炎上したカールの城下町を思い出し、そして気づく。俺達はその悲劇を防ぐことができたんだと。

 

「君と彼のおかげだ。陛下や国の民に変わって改めて礼を言う。ありがとう」

「よ、止してくださいよ。それじゃ、おれはこれで」

 

 全力で防衛したわけではなく途中までひっかき回したり逃げまわっていた俺に純粋な感謝の言葉はいたたまれなくて、俺は慌てて外に出ようとし。

 

「待ってくれ、剣を忘れてるぞ!」

「え? あ゛」

 

 呼び止められなければ、俺はきっとホルキンスが手に持っている覇者の剣をここに忘れていったと思う。

 

「……危なかった」

 

 大事な借り物を忘れて言ったら、どうなっていたことか。途中で気付いてとんぼ返りしても恥ずかしいし、そのまま紛失とかしたらシャレにならない。

 

「ありがとうございました。じゃあ、今度こそおれはこれで」

 

 もう一度頭を下げてからおれは記憶にないが一日を過ごした民家を後にし。

 

「……よう」

 

 見計らったかのように現れてどこか気まずげに片手を上げたのは、偽ポップだった。

 

「……A5のこたぁ聞いた。死ぬなよって言ったってのによお」

「……うん」

 

 何と切り出そうか迷っていたのだろう、沈黙を破るよう口を開いての言葉に俺は相づちを打ち。

 

「で、Aはどうすんだ? そのカッコ、思いっきり目立つんだけどよ?」

「うーん、モシャスで闘気に誰かの形をとらせた時以外、モシャスしてる間はずっとこうだからどうしようもないんだけど」

「……なるほどな。それはそれとして、聞いたとこ無茶苦茶パワーアップしてるって聞いてるが、それっておれも使えたりするのか?」

 

 やり取りの中、偽ポップがそう言い出すのは必然で。

 

「どうだろ? バランと戦った後気を失って、検証とかする時間もなかったからなぁ」

「おっし、じゃあいっちょ試してみっか!」

 

 ことさら明るく、どこかお道化て言って見せたのは俺に気を使っての、A5のことを思い出させないようにと言う気遣いだろうか。問うてもおそらく偽ポップは肯定などしないだろうから、俺はうんと頷き。

 

◇◆◇

 

『ダメだな、こりゃ』

 

 数分後、人気のない町の外で空を仰ぐ偽ポップだったメラゴーストがそこに居た。

 

『合体できねぇし、分裂もできねぇんだろ?』

『……うん』

 

 モシャスが解けるなり合体を試みようとした俺達だったが、うまく行かず。なら分裂した個体とならどうかとスカラをかけて守備力を上げ、暫く叩いてもらったが俺は全く分裂できなかった。

 

『これって』

『聞いた話から推測するに、無理にモシャスしたまま、A5を取りこんだからだろうよ。本来分裂や合体を司ってる部分が誤作動て言うかバグ起こしてるみたいな状況かもしれねえ』

『うわぁ』

 

 無理を通した、その代償と言うことだろうか。

 

『あと試してねえのは、A5の時と同じパターンの合体ならできるかどうかだが』

『確かに、だけどそれは試したくない』

 

 もう二度と、あんなことは。

 

『だな、悪ぃ』

『ううん』

 

 目を背ける偽ポップだったメラゴーストに俺は頭を振り。

 

『で、次はどうする? 何ができるかを調べてみっか?』

『そうだね』

 

 気をとりなおした、何かを誤魔化した、言いようは色々あるだろう。次の検証に移った俺達が知りえたのは、少々信じがたい事実で。

 

「ゲームで言うとこの1ターン二回行動もしくは同時に二つの呪文が使えて、誰の姿にモシャスしても能力が大幅上昇、加えてA5が覚えてた呪文は行使可能か……メラゾーマ放つヒュンケルとか出来るな、これ」

『ダイ達が見たら二度見する光景って言いたいけど、炎の闘気纏ってるからなぁ』

 

 とりあえず、ぶっ飛んだ事実を冗談で逃避しつつ俺も偽ポップに倣って空を見上げ。

 

『ま、いずれにしてもだ』

「ん?」

『闘気纏ったままダイ達のとこに行ったら混乱は必至だろうし、行くならメラゴーストに戻ってからにしろよ』

 

 もっともな言葉に俺はうんと答えたのだった。

 




と言う訳で、パワーアップの反面結構いろんなものを失っていたことが判明したのでした。

次回、エピローグ「???」に続くメラ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。