ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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番外15「ベンガ-ナ1」

 

「あっちゃあ、そろそろだわ」

 

 気球のなかで嘆息したおれはかごの縁に手をかけた。本物がどうしたよと声をかけるから、おれはモシャスの時間切れだと答えて縁を飛び越え身体を外へ投げ出した。

 

「え」

「うおおおぉぉおおお、モシャスッ!』

 

 気球のかごを燃やすわけにはいかないからの空中での再変身。

 

「クエッ!」

 

 クロコダインを運んだりしていた鳥の魔物に変じると俺はそのまま羽ばたき落下しつつあった体を持ち上げる。

 

「がっ、ガルーダになりやがった?!」

「あー、あの格好なら空中に投げ出されても確かに大丈夫だね」

 

 驚く本物と比べて得心言った態でダイが落ち着いてるのは、モンスターと暮らしていた時間の差だろうか。

 

「クエエッ」

 

 おれは一声鳴いてから上昇し、気球の周りを飛び回り、短くボバリングしてからかごの縁へととまる。気球の移動速度を鑑みると、あと一、二回は変身しなおす必要があるだろうか。

 

(ぶっちゃけ、飛んでいった方が早い気もしてきたんだけどよ)

 

 先に行こうにも鳥の魔物のままでは意思疎通も難しい。ダイになら伝わる可能性はあるかもしれないが。

 

(どっちにしても向こうについたらルーラで交代しなきゃな)

 

 カールにいるAのことだって気になるし、今のおれは情報を持ち帰る連絡員もかねてるんだ、それに。

 

(見た目ポップ二人は混乱招いて拙いしな)

 

 おれが偽ポップなら、ここは偽マァムとでも言うべきあいつに代わって貰った方がいいと思う。見た目だけなら男女2-2でバランスだってとれるんだから。

 

(……しかし、女か。異性に変身するって、どうなんだ……幸い、おれにそんな役目はまだ回ってきちゃいねえが)

 

 男として大切な何かを失っちまったりすることになるんじゃねえだろうか。

 

(待てよ、そもそもここで交代ってことは、マァムの姿で買い物に付き合うってことになるよな、あいつ)

 

 となれば、店員に女物の防具を勧められちゃったりしてしまうのではないだろうか。

 

(なんてこった……偽ポップ呼ばわりしてくれた意趣返し出来るこんな素敵な機会が巡ってくるたぁ)

 

 おれは心に決めた。気球がベンガーナに到着したら、何としてでもルーラで偽マァムなあいつを連れてきて交代すると。

 

(そうだ、おれはAの元に帰らなきゃいけねえし、仕方ねえよな)

 

 不可抗力だと心の中で大義名分を唱えてかごの縁に止まったまま西を向く。

 

(どのみちおれはこっちの情報持ち帰るためにもカールに戻らねえといけねえし)

 

 下手するとそこで待ってるのはあのバランとのたたかいかもしれねえと思うと、こっちでのんびり買い物につきあいたくもなるが。

 

(そういう訳にもいかねえしな、うん)

 

 そうと決まればベンガーナにつく前の変身でまたポップの姿に変身しないといけないって問題がある。

 

(ルーラの呪文があるから、落ちることは考えなくてもいいけどよ、ルーラで緊急避難した場合戻って来られねえんだよな)

 

 それでは本末転倒だ。となると、変身が切れる直前に気球から身を投げ、再変身して垂れ下がったロープに掴まるって言う離れ技をしなくてはならず。

 

「……クエッ!」

 

 勝負の時は、訪れた。

 

「あら?」

「うん、偽ポップ君ひょっとして」

「ダイ、その呼び方やめろって!」

 

 俺の鳴き声に振り返るレオナ姫。ダイは一度目の空中変身じゃないしもう察したのだろう。ただ、呼び方で本物に抗議され。

 

『っ、モシャスッ! っとおっ?!」

 

 鳥の魔物からメラゴーストに戻りながら空中に身を投げ出したおれはしっかりとロープを握り締め。

 

「ふう、危機一髪だぜ」

「何の危機もないはずだけれど」

「あ~、まあ、それはそれだ。言葉の綾って言うか、うん」

 

 レオナ姫のツッコミにおれは視線をそらし。

 

「それはそれとして、この格好じゃ流石にややこしいし、ベンガーナにルーラ出来る奴も増やしたいんで、到着したらおれと同期の分体を一人、連れてくるな。買い物もできればそいつとまわってくれ」

 

 ロープにぶら下がったまま話を切り出す。

 

「ええっ、ついて来るんじゃなかったの?」

「最初はそのつもりだったんだけどな、他にもやることを思い出しちまって」

 

 悪ぃな、ダイと続けたおれをぶら下げたまま気球は進み。

 

「っと、それじゃ行ってくる。っ、ルーラッ!」

 

 港から突き出した防波堤に気球が着地したところでおれはかごから飛び降り、着地すると呪文を唱えた。

 

(おれらが騒がれず滞在できる場所なんて数少ないからな)

 

 向かう先はデルムリン島、モンスター達が平和に暮らす唯一の島だ。

 

(パプニカのある大陸じゃメラゴーストはいい印象持たれねぇし、ロモスはそうでないとはいえ、人の暮らす場所のすぐ近くにモンスターが居るってのは人間の方がおちつかねえだろうしな)

 

 必然的におれ達が集まるのはメラゴーストが居ても問題なさそうな場所に限られてしまう訳だ。

 

「おっ、やっぱりいた……よな?」

 

 デルムリン島に到着すれば、すぐメラゴースト達の姿が目に留まり。

 

(って、どれが偽マァムだよ)

 

 モシャスしてる個体が居ない為、おれはメラゴーストを順に視線で撫で。

 

『ポップ? いや、このタイミングでここに来るって言うと偽の方か』

「偽言うな! それより、ダイ達がベンガーナのデパートでこれから買い物なんだ。誰かマァムになって付き添い任されてくれねえ?」

 

 不本意な呼ばれように抗議しつつ、おれはすぐに用件を切り出した。

 

『ベンガーナのデパート?』

『あー、あそこか。じゃあ死神が来るな』

 

 おれ同様に原作知識はもってるからだろう。すぐにこの後起こることを予想しメラゴースト達が騒ぎ出すが。

 

「そいつもわかんねえ。Aがカールに居るからな。原作だとバランが『ダイが実の息子』だってことに気づいて、カールを滅ぼし、取って返してハドラーを糾弾、口論の場に居合わせたキルバーンがちょっかいかけてくる流れだったろ?」

 

 Aが居て、原作通りにカールが落ちるとは思えないし、滅びるのが遅れただけでもバランが間に合わず、結局キルバーンがちょっかいをかける流れも成立しなくなる。

 

「最悪、適当な人物に化けてダイが竜の騎士だってことを伝えてテランの国に誘導することはできるかもしれねえけどな」

『俺達には出来てそこまでだよな』

『キルバーンにモシャスは出来ないし、マッチポンプするにしてもドラゴン系のモンスターになれそうなのってそこの偽ポップ含めて二人だし、ドラゴンにモシャスしたやつはまちがいなくダイに殺されるだろうしな』

 

 無理だよなぁとぼやけば、メラゴーストたちはそろって頷いた。

 




次回、番外16「ベンガーナ2」に続くメラ。
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