ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
『とにかく、ダイ達を待たせてるならもたもたはしてられない……それで、誰が行く?』
メラゴーストの一人が口を開けば、顔を見合わせたあいつらは黙り込んだ。まあ、無理もねえ。事情を知らねえ人間がいっぱいの場所にモシャスして乗りこむってだけでもいつモシャスが切れるかと言う不安と隣り合わせになるんだ。
「決められねえなら、こっちで指名すんぞ? こっちだってモシャスが切れる前に向こうに送り届ける必要があるんだ」
『なら、俺が』
誰も口を開かないからこっちから口を挟んでやれば、一人が進み出て。
『モシャス』
変身呪文でマァムそっくりの姿へと変わると。
「お待たせ」
「おう、そんじゃ行ってく、ちょ、な」
掛けられた声に応じようとした俺にマァムの姿に変わったメラゴーストが抱きついてきて、思わず声が裏返る。
「どういう真似だよ?」
「え? ホラ、修行中のマァムと間違えられないようにマァムならしなさそうな行動をとろうかな、って」
睨みつければ、新偽マァムは首を傾げて理由を明かし。
「それ、本物のマァムに知られたらただじゃすまねえぞ?」
「あ゛」
指摘すると顔を引きつらせるあたり、どうやらそこまで考えが及んでいなかったらしい。
(何と言うか、Aに似た奴だな。肝心なところで抜けているというか……うん?)
ふいにそれを言うなら、偽マァムにしたことで女物の服を着せて恥ずかしがらせてやろうなんて企んだおれも同じような目に遭いそうなことに今気づいたが。
(気づかなかったことにしよう。単に見分けがつかない事態を避けて男女比を均等にする、おれはそれ以外何も考えちゃいなかった)
後日、これから連れて行く偽物のマァムを笑いものにする前に気付けて良かったと思いつつ、おれは固まった偽マァムを引っぺがして自己保身をはかり。
「じゃ、行くぞ」
「待って、別の姿で」
「そんな時間はない、ルーラッ」
新偽マァムの懇願を蹴っ飛ばしつつおれは瞬間移動呪文を唱えた。
(しかし、こいつがあの時の偽マァムでないのは確かだな)
あの時の偽マァムはしっかりしてた。元が同じならその差はどこで出るんだと思わなくもねえが。
(分裂してからの経験、後はモシャスした相手かね)
変身した相手に引っ張られるって言うのはありうると思う。まぁ、おれの場合はボロが出ないように出来るだけなりきることを心がけてるってのもあるが。
(逆にどうしてもなりきっちゃいけねえのが、バルジ塔の偽師匠とか変身できるアテがほかになく、やむを得ず姿を借りるパターンだな……って、そう言えばマァムの銃はあの後誰が持ってんだ?)
疑問は浮かぶが、悠長に意識を傾けている余裕なんておれにはなかったらしい。
「うおっ、と」
「わあっ」
気づけば着地の瞬間が迫っていて、よろけたおれはとなりの人物に向かって倒れこみ、あがった悲鳴はさっき懇願した誰かのもので。
「おか、マァム?!」
「ちょっ、おま」
おかえりと言いかけて驚くダイ、あんぐりと口を開けて言葉が途中で出てこなくなった本物、そして。
「まぁ、昼日中から大胆ね」
何故かちょっと楽しそうなレオナ姫の前で、おれは押し倒した新偽マァムの胸を鷲掴みにする形で押し倒していた。
「えっ、あ、その、これは誤解でございましてですね?」
はずみでモシャスが解けなくて良かった何て思う余裕もねえ。
(やっちまった―ッ! これ、確実に本物のマァムにどつかれるッ! いや、それで済むのか?)
オリジナルのやらかし成分がまさかこんなところで出るなんて誰が思うだろうか。
「あは、あはは……ルーラっと」
乾いた笑いを顔に貼り付けながらおれは瞬間移動呪文で飛び立ち。
「あ、逃げちゃった」
ポツリと漏れたレオナ姫の言葉だけが耳に残る。
(はぁ、とっさにルーラしたものの、どうするよ、おれ。しばらくはカールだろうから本物のマァムに顔合わせることはねえだろうが)
いっそのこと、逃げ出して姿をくらませるか。
(けど、逃げるにしたって……いや、今はカールですることだけを考えよう。下手すりゃあのバランと鉢合わせするかもしれねえんだ)
よそ事なんて考えてる暇はない。こう、偽物なのに割と柔らかかったとか、もうちょっと大きくても良かったよななんて雑念は払うべきもので。俺は頭を振って、前を向いたのだった。
ところで、相手も分裂した自分と同じ存在な上に本来の性別も違うとしても、これってラッキースケベにカウントして良いモノなんでしょうか?
次回、番外16「ベンガーナ3」に続くメラ。