ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「とりあえずこのまま外に出て、一度姿を隠せるところでモシャスを解き、魔王軍の軍団長にモシャスします。そのあとルーラで離脱するから」
相変わらず小声でこちらの行動を説明しつつ俺はレオナ姫と一緒に階段を下りる。お芝居といったからレオナ姫も抵抗はするふりしつつ階段を下りるのには協力してくれるもののここは四階。
(こっちの世界のエレベーターが前世のモノほど融通がきけばそれが使えたのに)
階段に差し掛かった時点で5階に上ってくるときに利用したエレベーターを使おうかとも一瞬考えたのだが、生憎とこちらの世界のエレベーターはあれが初体験。
(登り専用だとか、誰かが使用してるときは使用できないだとかで5階から移動できなくなる可能性を考えるとな)
とても上階に逃げる気にはなれなかった。
「下の階の人は事情を知らないだろうから、上で騒ぎが起きて逃げる買い物客のふりをしてやり過ごせるかもしれないけど、それだと後で目撃証言を照らし合わせるとめんどくさいことになるし」
申し訳ないけど、いりぐちをでるまでこのままでとレオナ姫には小声で伝え。
「あと、俺が離脱した後のダイ達への説明もお願いします。俺は変身し直して気球のところに戻ってきますから、話の続きはその時に。あの占い師の横に居た見習いっぽい子が近くに居ると、化けても意味がなさそうだし」
「そうね。このままじゃ買い物どころでもないし。わかったわ」
小声のやり取りの後、俺達はお芝居を再開しつつ階段を下りてゆくことになる。
「っ、この、放しなさいよ!」
「キィ~~ッヒッヒッヒヒッ、抵抗するでない。なぁに、ワシが逃げ延びれば解放はしてやると言っているのじゃ。何をしておる、そこの者ども、道を開けよ」
レオナ姫を盾に道を塞ぐ位置に居る買い物客を牽制、退くよう命じ。
(けど、マァムに変身した時こういう状況って言うのが、本当に痛いよな)
胸中で俺は秘かに愚痴をこぼす。優しい性格だから向いてないということもあるのだろうが、マァムの覚えている呪文のラインナップは、ホイミ、ベホイミ、キアリー、キアリク、ザメハ、マヌーサの6種類。回復2種類と状態異常回復が3種類と殆ど回復系が占め、残った一つは敵に複数の自分の幻を見せてかく乱する呪文と、他者を傷つけたりする系統の呪文が全くないのだ。
(せめて睡眠呪文でも使えれば、出くわす相手を眠らせて走って逃げられるのに)
呪文をこめて撃つ銃もモシャスでコピーできるならそっちを使う手もあっただろうが、今のマァムは銃をどこかの誰かに奪われたせいで変身した俺の装備してるのも背負った杖のみ。
「あ」
そこまで考えて俺は声を漏らし。
「どうしたの?」
「いや、そういえば姫は睡眠呪文使えたよね?」
きわめてシンプルな解決策を思いついた後は、簡単だった。
「ラリホー!」
俺が睡眠呪文を唱えたふりをして人質にされてるレオナ姫の方が睡眠呪文を唱える。
「うう、眠……く」
「おの、れ」
デパートの警備の兵だろうと思われる男達があっさり眠らされて崩れ落ち。
「……さっきまで悩んでたの何だったんだろう」
あっという間に1階にたどり着くと、入り口に近いトイレへと移動、利用者がいないかを確認後、天井を見て火災報知器系がないことを確認した上で姫に殴って貰って強引にモシャスを解く。
「大丈夫?」
『痛たた……まぁ、これはやむを得な、って今は言葉が通じないや。モシャス!』
気遣ってくれるレオナ姫にそのまま答えようとして意味がないことに気づいた俺はすぐさまモシャス。姿を妖魔司教ザボエラそっくりに変えて改めて必要不可欠だったし仕方ないと伝え。
「しかし、ここに窓があればワシのちっこさならそこから抜け出すことも考えたんじゃが、ぐぬぬ」
防犯対策だろう、換気用のネズミでもないと通れない隙間しかなく。
「やむを得ぬ、もう暫し付き合ってもらうぞ小娘。キィ~~ッヒッヒッヒッヒ」
俺はザボエラの言動を真似しつつレオナ姫の背に杖を突きつける。
(本物なら毒爪を突き付けるとかしてたかもしれないけど、万が一刺さっちゃうと今のメンバー解毒役が居ないからなあ)
加えてレオナ姫は巨大な毒を持つサソリの魔物を使って暗殺されかけたことがある。そういう意味でも毒爪は不適当だ。
「仕方ないわね。こうなった以上外に出るところまでは付き合うけれど、ダイ君達への説明の半分はちゃんと受け持ってもらうわよ」
「うっ、わかっておるわい」
ジト目で見られて怯みつつも俺はトイレを後にし。
(そういえばオークションが夕刻ってことは、ヒドラとドラゴンの襲撃もあったとしてもそれぐらいか。いったん気球のところまで引き返したせいで上陸してきたヒドラたちと鉢合わせとか、ないよな?)
原作での出来事と時系列を頭の片隅に思い浮かべながら出口を目指せば、もともと入り口に近い場所のトイレだっただけに、外に出るのはあっという間。
「キィ~~ッヒッヒッヒッヒ、では約束通り解放してやろう。さらばじゃ、ルーラッ」
わざと人目に付くよう高笑いをしてから俺は瞬間移動呪文を唱え、なんとかその場から逃げおおせたのだった。
次回、番外19「これでデルムリン島にザボエラの姿でルーラしたら騒ぎになるよね(A7視点)」に続くメラ?
タイトルがもう出オチ。