ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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番外21「待ちぼうけ(A7視点)」

「……来なかったな」

 

 俺がうんと答えた時、西の空はオレンジに染まり始めていた。原作ならもうオークションが始まっている頃だが、海側に備え付けられた大砲が火を噴く様子はなく、港の近くに作られた防壁も静かなものだった。

 

「この様子だと」

 

 たぶん、キルバーンも現れないだろう。理由はだいたいわかる。Aがカールで何かやらかしたんだ。偽ポップがこっちに来たときに超竜軍団のドラゴンをゲリラ戦まがいの方法で間引いていたって言ってた気もするから、こちらに貸し出せるドラゴンの余裕がなくなってキルバーンのみ単体でやってくる可能性も考えたものの。

 

(そも、あれってバランが健在の上、カールを滅ぼして身体空いたからダイを魔王軍に勧誘する布石としてのちょっかいだった気もするし)

 

 カールが滅んでなかったり、侵攻がてこずっただけでキルバーンが来る理由は消滅するはずなのだ。

 

(原作から乖離するだけでも頭痛の種なのに、キルバーンが原作から逸れてフリーとか)

 

 何をしでかすかわからないと言う意味で、頭が痛い。

 

(普通に考えるなら、裏切者の暗殺? となると……ヒュンケルとクロコダインが危ないか)

 

 偽ヒュンケルならここにもいるのだけれど、こちらは今しがたモシャスしたばかり。

 

(これは二人に護衛を差し向けないともいけない流れか。原作だとヒュンケルは鬼岩城の足跡を追ってカール方面に。クロコダインはダイ達の元に戻ろうとするんだったかな?)

 

 原作に置いてのテランのバラン戦であのピンクのワニさんは見た覚えがあることを鑑みれば、鬼岩城のあった場所を見て、報告の為にかダイ達の元に戻ろうとしたんだと思う。

 

(レオナ姫たちが竜の騎士についての話をすれば、原作通りダイ達はテランへ向かうはず)

 

 テランには竜の騎士しか入れない神殿があり、原作でダイはそこに向かった。俺が竜の紋章について聞くように誘導したので、うまくいけばこの世界のダイも神殿は尋ねることになるはず。

 

「はぁ、ここからは別行動するしかないかも。……ヒュンケルとクロコダインのことが気になる。俺はガルーダだっけ? 鳥の魔物にモシャスして本物ンケルを探すから、偽ヒュンケルにはクロコダインの方を頼める?」

「わかった、と言いたいところだが、偽?!」

「俺から分裂れたことを考えると、固有識別名はA7-1(Aが7番目に分裂させた個体から1番目に分裂した個体)とかになると思うんだけどさ、これって偽ヒュンケルが一人増やすと、7A-1-1ってなって更に後ろに増えてくんだよね。どういう経緯で増えたかは明らかだけど、これ、最終的に7A-2-6-5-9-1-1-2みたいに延々に長くなって呼ぶの面倒になってゆくと思うんだ。それで、とりあえずの愛称みたいなのにどうかなあって」

 

 まだ長すぎて呼びづらいところまではいっていないが、未来にどうなるかわからないのともう一つ。

 

「あとさ、数が増えると個性がないと埋もれちゃうと思うんだよ。だから、キャラ付け的な意味でもさ。ほら、偽ポップって番号呼びな俺達よりキャラが立ってたと思わない?」

「ふむ」

 

 うまく丸めこめたのか、偽ヒュンケルが何やら考え込み始めたのでそういう訳だからと俺は話を打ち切り。

 

「俺はルーラも使えるし、カールの方が気になるって名目でここを発つから、偽ヒュンケルはダイ達をお願い」

「しかし、クロコダイン……そういうことか」

 

 原作でダイ達とクロコダインが合流することに気づいたんだろう。わかったと頷く偽ヒュンケルにその場を任せ、俺はルーラの呪文でカールへ向かう。

 

(Aにも拳を含めて話さないといけないことがあるし、カールから上空を逆にたどった方が見つけやすいよね)

 

 それに、キルバーンが来なくなった原因であろうカールのことも気になる。

 

(偽ポップが先にあっちに向かってたっけ? あ、偽ポップも殴っておかないと)

 

 やることが増えたなと思いつつ、俺がルーラで向かった先はカールの城下町の入り口だ。一度も訪れてないのに合体と再分裂で記憶を伝え瞬間移動呪文で行けるようにできるのは本当に反則だとおもうけれども。

 

(何か新鮮で複雑だな。見たことないところ、初めて訪れるところでありながら、ある程度知ってるって)

 

 言ったことのない観光地の情報をパンフレットや映像で知ってるのとはちょっと違う感じだが、うん。

 

「っ」

 

 着地はあれこれ考え終わる前だった。

 

「流石瞬間移動呪も……」

「カアアッ」

「カアカアッ」

「カアーッ」

 

 ただ、最後まで言い終えるより早く、俺は言葉を失い、同時に何羽ものカラスが喧しく鳴きながら飛び去って行った。たどり着いた城下町の入り口はあちこちが破壊され、ドラゴンと人の骸があちこちに散らばっていたのだ、カラスはこれに群がるためにやってきていたのだろう。

 

「そう……か」

 

 超竜軍団のカール攻撃。ゲリラ戦をやらかしたAへおそらく軍団長のバランがしびれを切らしたのだ。激戦の後があちこちに見受けられ、それでいて城下町の奥の方からは火の手が上がっている様子もなく、奥の小高い丘の上に見えるお城は殆ど損壊していないような気がする。

 

「犠牲は出たけど、防衛はなったと」

 

 バランがどうしているのかは不明だが、流石にAの独力で倒せるような相手ではない。想定以上の被害が出たから立て直すために引き上げたとかだろうか。

 

(再侵攻に居合わせるとかできれば勘弁してほしいんだけど)

 

 そして俺はため息を一つ残すと城下町から遠ざかる。モシャスをかけ直すために。

 




次回、一話「お誘いの答え」に続くメラ。

 いよいよキルバーンへ主人公が答えを返す?
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