ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「おれは……」
しばらく考えてから、口を開くと俺は答えた、少し待ってもらうか、場所を指定して貰ってそこに向かう形にしたいと。
「おや、理由を聞いてもいいかね?」
「そう大した理由じゃないよ。ただの忘れ物を取りに行くって言うのと、いくらドレスコードがないって言っても、招待されてゆくのに武器を持ってくのはどうかなってさ」
言いつつ俺は肩をすくめた。そう、俺はこともあろうに合体できるかどうかを試した場所に覇者の剣を忘れてきてしまっていたのだ。
(色々あった上にモシャスかけ直したりしたとは言え、何超貴重品かつ借り物二回も忘れてんだよ、俺)
穴があったら入りたいレベルのやらかしだ。
(バランも凌いだしもったいない気もするけど、覇者の剣はロモスに返しに行って原作の流れに沿わせようかとも一時は考えてたんだよな)
そもそもバランと戦うことになった場合の備えとして借りてきたので、このままずっと所有するつもりはなかった。
(原作では、ハドラーの手にこの剣が渡るのがダイの相棒にして最強の武器が作られるきっかけだったわけだし)
ただ、バランに勝ってしまった今、覇者の剣を返すことにどれだけの意味があるのかはちょっと疑問な気もするけれど。
(とは言え大魔王のところに剣持ってって奪われましたなんてなったら目も当てられないしなぁ)
言伝ついでにホルキンスさんにでも預けて来ようか。それとも。
「フフッ、なるほどねェ。バーンさまは寛大なお方だから武器をもってても構わないと思うけど……」
「礼には礼を、気を使ってもらったんだから、おれもね」
「まァ、キミがそうしたいならボクがどうこう言うのは野暮だね。それで、少し待つという方ならどれぐらい待てばいいかね?」
「武器を預けていくらか話して戻ってくるぐらいだから、大した時間はかからないよ」
俺はキルバーンの問いに答えてから、ただと続けた。
「ただ?」
「武器を預けた訳だからさ、そこを攻撃されるとおれは困るんだよね。武器を取りに行ったら預けた相手がどこにもいなかった、とか」
「なるほど武器を預けた場所が廃墟になってちゃちょっと困るよねェ、キミは」
「そう」
何のことはない、招待に応じるのと引き換えに鬼岩城での攻撃をやめさせようとただそれだけのことだ。
(その後に関しては結構行き当たりばったりになるし、相手の話、出方次第だけど……)
俺が沈黙したままキルバーンの反応を待てば、キルバーンはそうだねと言って。
「キミの希望はバーンさまにお伝えしておくよ。ボクはただの使い魔、メッセンジャーでカールへの攻撃をどうこうできるような権限は持ってないからね」
「お願いするよ。それじゃ、また」
頷いた俺は速足に歩き出す。とにかく忘れたままの覇者の剣をそのままにはしておけない。
「あった」
鞘に入れて木に立てかけてあったそれを回収すると、俺はホルキンスさんが見送ってくれたあの民家に向かって走り出した。
(合体検証でそれなりに時間を食ったからな。まだ居てくれてるといいけど)
逸る心をおさえるよう胸に覇者の剣を持たない方の手を胸に当て。
「ホルキンスさーん」
「どうした?」
声を張り上げて民家に向かっていけば、幸いにも中からホルキンスさんが姿を見せ。
「良かった。実は、言い忘れてたことと、お願いがあって――」
俺は話した、魔王軍の再攻撃があるかもしれないという危惧と、大魔王が俺に会いたがって使者を出してきたという話を。
「たぶんですけど、おれが招待に応じれば、ここをすぐに再攻撃することはないと思うんです」
「君は、どこまで……すまん、カールの為に単身で敵地にっ」
「止してください。大魔王の顔が見られるチャンスで、ただの興味本位かもしれませんよ? そういう訳で、この剣をホルキンスさんに預けていきます。もし、おれが戻らなかったら、この剣を返してことの経緯をロモスの王様に伝え、申し訳ないけどおれが詫びていたとも伝えてください。お借りしたのに直接返せなくて、と」
なんだかものすごく重く受け止められて心が痛かったのでお道化てみるが、きっと無意味かもしれない。
「それから、剣を返したらおれのことは忘れてください。もちろん、帰ってくるつもりなので無意味かもしれませんけどね。それじゃ」
なんだかいたたまれなくなって、俺は言うことだけ一方的に言って踵を返し、走り出す。
(これでいい、これでいいんだ)
あそこでお誘いを断れば、ことあるごとにあの死神に狙われそうだし、断るって選択肢はなかったはずだ。
(幸い偽ポップを含めて分体は沢山いるし、俺はイレギュラーだからさ)
再合流が遠のいても問題はないはずだ。俺は自分に言い聞かせつつ走り続けた。
どう考えても単身死にに行くムーブで勘違いもの予定のタグを回収しようとする卑劣な作者がいるらしい。
次回、二話「出発」に続くメラ。