ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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二話「出発」

「……やあ、思ったより早かったね。もういいのかい?」

 

 戻ってくると、そこには何事もない様子でこちらに尋ねてくる死神が居た。

 

「うん」

 

 正直に言うなら他の俺の誰かに現状を伝えておきたかったが、そう都合よく訪ねてくるような別の俺もいないだろうし、いつ来るかわからない別の俺を待つのがちょっとと言う様な時間で終わるとも思えない。

 

「それで、こちらのお願いの方は?」

「勿論お伝えしたとも。お答えもいただいているよ。キミが預けた武器を受け取りに行くまでカールは攻撃しない、それでいいんだろう?」

「そう、良かった」

 

 俺の言い分を大魔王がどう受け止めたかはわからないが、言葉通りなら鬼岩城がカールを攻撃することもなくなったと見ていいだろう。

 

「ただ、キミが深手を負わせて撃退したバラン君だけはこちらからもまだ連絡がつかないんだ。連絡が付き次第攻撃中止の命令が送られるようだけどねェ」

「あー」

 

 まぁ、あの状況では仕方ないというべきか、よくそんな手のうちまで暴露するなと呆れるべきか。

 

「こちらとしては不本意だけどさ、超竜軍団はボロボロだしバラン君の傷も一日二日で治るようなもんじゃないんだろう? だから、ボクとしても命令が届かなかったバラン君が今すぐカールをもう一度攻めるとは思えないんだけど」

「確かにね。そして、ここまでして貰った以上、こっちも応えなきゃいけないと思うけど、その大魔王の元にはどうやって向かうの?」

 

 移動呪文系だとは思いつつ尋ねてみれば、キルバーンはそれならと言いつつ懐に手を突っ込んだ。

 

「合流呪文、リリルーラと言うのがあってね。本来ははぐれた味方と合流する為の呪文だけど、これを使えば目印にした仲間のところまで一瞬で移動できるのさ」

「リリルーラ」

「まあ、今回はキミも居るわけだから念の為に触媒を使うけど、この呪文の良いところはルーラと違って自分の知らない場所でも物理的に侵入できない密室の様な場所でも移動できるところだね」

「なるほど」

 

 原作にあった呪文であり、俺も覚えたい呪文の一つだったが、瞬間移動呪文と言いつつもルーラが物凄い速さで空を飛んでゆく呪文だとすれば、こちらはテレポートで目当ての人物の近くに移動する呪文と言うことか。

 

(よく考えてる。完全なテレポートなら大魔王の元までどう行けばいいかなって知られずに済むわけだし)

 

 そして、気づく。これって話の流れによっては右も左もわからない敵地に放り込まれた状況からの脱出ゲームになるのでは、と。

 

「じゃあ、心の準備はいいかね?」

「あ、うん」

 

 尋ねられて我に返りつつの返事は半分くらい生返事になったが、いいえと言う訳にもいかない。

 

「ウッフフフフッ、しかしボクもお役目を達成できそうで一安心だよ。ではバーンさまの元へご案な~い!!」

「っ」

 

 瞬きするほどの時間しかなかった。気が付けば一瞬で周囲の景色は変わり、最初に目に飛び込んできたのは御簾に包まれた玉座のシルエット。御簾の左右は長さもまばらな水晶が鍾乳石の様に天に伸びており、頭上には大きな一対の角を持つ顔をあしらったステンドグラスがある。

 

「ここは――」

 

 原作でハドラー達が大魔王バーンに謁見をしていた場所じゃないだろうか。

 

「御簾の向こうに玉座の影が見えるから、もうおわかりだとは思うけどあの御簾の向こうにおわす方こそバーンさまさ。ハドラー君達が戻ってきたらここで謁見の予定があってね」

「なるほど、それで本来は魔王軍の幹部との謁見の為にここに居た、と」

 

 相手の元にテレポートする呪文だからこそ顔合わせの場所がここになったということか。

 

「あとは、キミの答えが少し前までわからなかったこともあるんだけど。時間を置いて後日ってことだったら、相応に歓迎の準備だってできてたはずさ」

「あー、まぁ、そこはおれの方の都合に合わせてくれたわけだから、感謝こそすれ非難するつもりはないよ」

 

 一応身体能力や特技をコピーできるのだからダイの格好なら飲み食いしても大丈夫だとは思うものの、流石に大魔王を前にしてご馳走を遠慮なく食べれるメンタルの持ち合わせは俺には無い。そうしてキルバーンと話していた時だった。

 

「ふむ、なればよい」

 

 御簾の向こうから声がしたのは。

 

「これはご無礼を」

「よい、客人との会話中ではひかえることもできまい。キルバーンも大義であった」

 

 死神の詫びへ御簾越しの人影は軽く手を振り、むしろ労ってからさてと前置きしてこちらへ視線を向ける。

 

(って言うか、アレどうなってんだろ)

 

 シルエットの目の部分の影が切り取られたように消失し、目を形どっているのだ。普通なら人影にこんな目など出来ない筈だが。

 

「よくぞ余の招待へ応じてくれた。おまえとは一度話がしたいと思っていたのだ」

「おれと?」

「いかにも」

 

 何故と言う問いを口に出すのは今更な気はしたが、それでも疑問の色を声に帯びさせれば、人影は鷹揚に頷く。

 

「この余もあのバランにだけは一目置いていた。それを全力を出さない状態とは言え、脆弱なメラゴーストでありながら打ち破る。そのような存在が現れようとは、全く予想だにできなかったのだ」

「バランに……けど、全力を出さないって――」

 

 原作知識でバランに切り札があることは知っていたが、普通に考えればそれは俺が知りえない知識だ。俺が驚いた演技をすれば、大魔王は知らなかったのかと口にし。

 

「なにか奥の手を持ってるかもとは思った。カールの騎士団長と戦ってた時には使ってこなかった力を使ってきたし。けど、あの時はおれも平静じゃなかったから」

 

 感情的に動いた結果、勝ったのだと、敢えて言っておく。

 

「成り行きと? だがそれでも良い。その力は余の軍団長たちの幾人かを上回るものだ。実際に余の軍団長のうち、クロコダインを倒したのもおまえだ。ヒュンケルとフレイザードは勇者ダイに倒されたが、戦ったのがおまえであっても敗れたであろうな」

「っ」

 

 ヒュンケルの方は実際に勝ちましたとは流石に言えない。言える空気じゃなかった。

 




次回、三話「お約束のアレ」に続くメラ

備忘録:ダイへの勧誘は19巻
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