ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「その成長は、余の想像をはるかに超えておったわ……」
大魔王は言う。余の部下にもメラゴーストを配下に持つ者は居たと。
「おまえが特別なのか、そちらのメラゴースト達がおまえの域まで強くなることはなかった。ただ、あのメラゴースト達も余の知るメラゴーストとは別物だったようだが」
「別物……」
「策を弄し、軍団長に献じ支える。せいぜい群れを成して数を頼みに粗末なメラを集めて敵を倒さんとするだけのメラゴーストにできるようなことではない」
俺が単語を反芻すれば大魔王は言う。どうやら、分体も俺もただのメラゴーストではなかったらしい。もっとも、俺は他の例を知らないので比較対象にしづらいのだが。
「だがそのメラゴーストの居た二つの軍団はどちらも滅びた。余が直属としていればこの結末も避けられたやもしれんが、もはや言ってもせんなきことだ」
つまり、場合によってはBやC達がバーンの直属になった未来もあったかもしれないということか。
「おまえに近しい強さを身に着けられたか、余としては興味があった。もっとも、おまえは聞けば勇者アバンに師事を受けたというではないか。部下として使うのと、弟子として育てるのは全くの別物。成長の違いがそこにあるとするのであれば、さしづめ『大魔王の弟子』か」
「弟子?!」
「ただし、おまえほど強ければ別の遇し方もある」
想定外の言葉が飛び出してきて目を見開く俺に、大魔王は言った。
「……余の部下にならんか……?」
ある意味想定していた言葉だ。
「驚かんようだな」
「ある程度、予想できたから。ヒュンケルとか人間まで軍団長にしている大魔王だもん。人間でさえスカウトするなら、モンスターのおれにそう聞いて来るのは、ね」
だから、俺も答えは用意していた、ただ。
「むろん、何もなしに部下になれとは言わん。相応の代価をやろう。そうよな、例えば、バランとの戦いで散ったおまえの半身、あのメラゴーストを蘇らせることに全力で協力してやる、と言ったら……」
「っ」
その先は俺の予想を超えていた。
「ハドラーには新たな肉体を与え、クロコダインを生き返らせたのももう知っておろう? メラゴーストそのままでとも、確実にとも確約は出来ん。だが、出来ることはしようではないか」
余としても部下のメラゴーストが増えるのは好ましいことだからなと大盤振る舞いの理由を明かし、言葉を止めて大魔王の視線が俺をさす。
「残念だけど……」
「断るというか」
「その条件じゃ、生き返ったA5に殴られちゃうから」
それに、蘇生なら可能性ではあるものの残されているのだ。僧侶の修行に出した分体の一人と言う可能性が。
(俺みたいに僧侶の呪文を覚えて行くなら、蘇生呪文まで契約、会得する可能性はある)
可能性が途絶えていないのに、安易に飛びつくことなんて出来なかった。それは修行に励む僧侶の俺の努力を否定することでもあるのだ、だから。
「そう――」
「別に、条件がある」
大魔王がそうかと言いきる前にこちらから切り出した。
「条件?」
「うん。その条件は――」
俺は考えて居た。原作を知っているからこそ、こうなったらああなるみたいなことを幾つか。そして、うろ覚えなところも多いが、大まかな流れくらいは覚えているのだ。
(俺が原作に沿うように話を持って行こうとした最大の理由は、大魔王の所有する複数の黒核晶)
一つで大陸一個消し飛ばす凄まじい爆弾を複数有す大魔王バーンは、勇者一行VS魔王軍の戦いの雲行きが怪しくなればこの世界の大陸ごと勇者一行も大地も人間たちも全て消し飛ばして終わりにしてしまえるのだ。
(ダイ達側が優勢になりすぎれば、間違いなくバーンは戦いを放棄して全てを吹き飛ばす)
だからこそ、勝つか負けるかがギリギリな綱渡り状態の原作に近い形に保たなければいけなかったのだが。
(バランの撃退と俺のパワーアップがまず過ぎた)
大魔王は今、たぶん爆弾のスイッチに指をかけてるような状況だろう。
(俺への勧誘は、消し飛ばす前に声だけかけておくか、といったものかもしれない)
つまり、俺はNOと言えない状況に既に追い込まれているのだ。
(俺がダイ一行から離反すれば、パワーバランスは大きく大魔王側に傾く)
大魔王の指を爆破スイッチから離すには俺の離反は不可避。だから、俺にできるのは、条件を出してせめて俺自身を高く買わせることしかなかったのだ。
と言う訳で、もう察していた方も多いと思われますが、話の持って行き方次第で主人公、魔王軍入りします。
ちなみにA5が散ったことに触れた感想の一部に返信してないのも、この辺りが理由だったり。(生き返る可能性が残されてることに触れるとネタばれですから)
次回、四話「やれるだけのことを」に続くメラ。