ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「待て」
だが、大魔王にはそうでもなかったらしい。
「間もなくこの場に余の魔軍司令と軍団長たちがやって来る。せっかくだ、会ってゆくがよい」
「え」
「お主が余の部下になるかもしれぬのであれば、余計な行き違いは避けたい」
動きを止めたところに予想外の言葉をかけられて俺は固まるが、気にした様子もなくバーンは説明する。俺がバランの元に向かうおり、俺が大魔王の部下になることを知らねばこれを阻止しようとする者が出るやもしれず、それを回避するためだと。
「今こうしておまえと話し合ったことは、余とそこのキルバーンを除けば誰も知らぬ」
「ハドラー君達からすればキミへの認識は敵のまま。ことがうまく行って戻ってくるにしてもそれじゃ色々拙いよねェ」
「あー、バッタリ出くわして戦いにならないようにここで顔合わせして説明しておこう、と」
「その通りだ」
死神の補足説明もあって趣旨を呑み込んだ俺が確認すれば大魔王は肯定を返し。
「とはいえ、勇者ダイの姿でそのまま立っているのも拙かろう。ハドラー達が姿を見せ余が紹介するまでそこに身を潜めているがよい」
「あ、うん」
確かにこの場に敵と目する存在がいれば侵入者と早合点して襲ってくる者が居たとしても驚きはしない。俺は言われるままに示された場所に向かって歩き出しつつも、思う。
(これ……バーンって俺を紹介して部下の面々が驚くの見て楽しむつもりだよな)
単に勘違いからのぶつかり合いを避けるため以外の理由があると邪推してしまったとしても仕方ないんじゃないかと思うのだが。
(俺を含めて何人もが不本意な初顔合わせになりそう、かなぁ)
思わず天井を仰げば、柄はさておき見事なステンドグラスがあり、俺は暫くそのステンドグラスを眺めていた。
『あ』
もっとも、変身呪文の効果時間が尽きるまでの間で、ぽふんと煙を出して元に戻ってしまった俺はもう一度モシャスの呪文をかけなおす。
(うーん、今の感覚だとバランは問題なくコピーできそうかな。ただ、やっぱり大魔王は老人形態でも厳しい……あの薄布で直接姿を見れてないのも原因の一つかもしれないけれど)
暇な時間で考察する俺にはどちらが原因かは判断が付きかね。
(さっき、あの場で戦いを仕掛けていたとしたら、勝率は五分五分くらいだと思ってたけど、もっと低かったのかも)
別に仕掛けるつもりはなかった。五分五分では賭けとして分が悪すぎるからだ。
(せめてバランの竜魔人がコピーできて炎竜魔人になれでもしなきゃな)
一応大魔王戦用に秘匿してる切り札が現状一つあるのだが、先ほどの五分はそれを使った上での計算。
(ピースさえそろえば切り札があと二つや三つには増えるんだけど)
ピースの一つは魔王軍に入らなければ会得はほぼ不可能。魔王軍入りしても会得の為には相手の協力が不可欠と言うそこそこの難易度を有していたりする。
(やっぱ、切り札とか奥の手は複数持ってたいよな)
そして出来れば秘匿しておけるのが好ましいのだが、下手をすると次にバランと戦うことになったとき、手元の唯一の切り札をきらざるを得ない可能性もある。
(バランが竜魔人になった上で戦場の付近に一般人が居るケース、例えばカールが再襲撃にあったとかかな)
竜魔人は一度なったら敵を殲滅するまで止まらない、狂戦士のようなものでもあったと記憶している。よって、それをこっちまでコピーした場合、周りの被害を考えず戦ってしまう恐れがあるからだ。
(バランが手段を選ばないなら、可能性はある)
相手だけ竜魔人で、こちらは周りの一般人になるだけ被害を出さないため竜魔人にはならず戦うとしたら、どう考えても無理ゲー。切り札が用意できてなければ、ほぼ詰んでいたと思う。
(やっぱり、そうなってくると再襲撃される前に居所を突き止めてこっちから出向く必要がある訳だけど)
手助けできないと大魔王が言った以上、使い魔の目を借りてバランを探すのも無理だろう。
(これ、分体に繋ぎをとって手の空いてる分体総出で探してもらうしかなさそうだよな。一応ルーラでどっちの方面に向かったかは心当たりあるけど、あれから時間も経過してるし)
原作のバランが確か自分の滅ぼしたアルキード王国だかから最寄りの岬で傷を癒していたという描写があった気がするし、ダイの母親であるソアラと言うアルキード王国の姫と出会ったのもアルキード王国かその近くに竜の騎士が傷を癒すための場所があってそこに向かう途中で倒れて拾われたとか書かれていた気がする。
(このあたり微妙にうろ覚えなんだけど、そうなってくると、滅んで今は海になってる元アルキード王国へ近い場所に飛んだか、滅んでることを失念して海に飛んだか、あの時結構な重症だったからルーラが失敗して故郷とか印象深いところに飛んだか)
考えられるのはこの三種のどれかくらいか。
(分体総出なら何とか見つけられそうな気もする)
もっとも、それはバランがまだ生きて居たらだが。
(最悪なのは、三つの内の海ポチャした上、泳ぐ力も残ってなくて溺れ死にましたってパターンだけど)
一応この場合、探し回ってもバランは見つからない。竜の騎士が死ぬとマザードラゴンと呼ばれる竜が竜の騎士の魂だったか亡骸だったかを回収するともされてた気がするので、死体がどこにもないかもしれないのだ。
(この場合、竜の騎士の為の剣の所有権がダイに移動して、ダイの元にあの剣が現れるかもしれないから、それが唯一の指標か)
とはいえ、魔王軍入りの内定が半分決まりかけたようなこの状態でどんな顔をしてダイの様子を見に行けというのか。
(それ以前に他の俺から袋叩きにされそうだけどね)
今のところ俺を殴っていったのは、偽ポップだけだったと思う。あと何人から、俺は殴られるのだろうか。
「静粛に……!!」
そんなことを考えて居た折、割と近いところからポップに似た声色で誰かが言った。
「ただ今より偉大なる大魔王バーンさまが御目見えになる。ひかえよ」
どうやら考えに浸るうちに、ハドラーや軍団長達がこの間に集まっていたらしい。
(危ない危ない。ってことは、あの声はミストバーンの声か)
状況次第で何百年も黙ったままと言われる割には結構しゃべってるよなという感想を抱きつつ、俺は意識を自身が隠れた水晶群の向こうへと向けた。
帰るどころか引き留められてあってゆけと言われたでござる。
次回、六話「顔芸」に続くメラ。
本来今話が顔芸回の予定だったんだけど、一話伸びました。