ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「思ったんだけどさ」
死神に送られてカールの近くまで戻ってきたところで、俺は口を開いた。
「何かね?」
「リリルーラって思い浮かべた味方と合流する呪文なんだろ? それを使ったらバランがどこに居るか知らなくてもバランの居場所に飛べるんじゃないの?」
送られる中で便利だなあの呪文と思っていたからの発想に、キルバーンの動きが固まった。
「……ひょっとして、気づかなかったとか?」
「さァ、どうだろうねェ」
とぼけて見せるものの、一瞬の硬直が雄弁に語ってる気がするんだけど。
「まあいいや。手助けはしないって話だから、そっちがバランの居場所を突き止めてもおれに教えちゃ駄目だろうし」
結局のところ、俺は俺で探すしかない訳で。
「はぁ」
探すとなると、どうあっても他の分体の力を人手を借りるより他にない。
(原作だとダイとの戦いで消耗してたのをベンガーナの南、旧アルキード王国最寄りの岬で癒してたって描写があったし)
探すとなると元々アルキード王国のあった場所に近い海岸線からだろうか。
(こういう時分裂出来ればって思うけど)
ないモノねだりしたって何の意味もない。
「……それじゃ、おれもバランを探しに出発するよ。お世話になりました、と言っていいのかどうかもわからないけど」
「フフフッ、バーンさまのところに連れていったボクだからこそ、健闘を祈るくらいは言ってもいいと思うんだけどねェ」
それはもう口にしてしまっているじゃんと言うツッコミはおそらく野暮なんだろう。
(それに、キルバーンの応援か)
どう考えても面白がってるだけの様な気がしてならない。キルバーンの本当の上司はバランに倒され、封印された冥竜ヴェルザーだか冥竜王ヴェルザーだかといったバーンと魔界を二分したもう一方の勢力の長なのだ。
(キルバーンに忠誠心があるなら、主人を倒して封印したバランは何より憎い相手の筈……いや、それならさっきの健闘を祈るもあながち嘘でない可能性もあるのか)
その場合、俺がバランを殺すことを期待してだろうが。
「ルーラッ!」
A5の呪文も使えるおかげで今の俺は本来呪文の使えないヒュンケルやクロコダインにモシャスしていても瞬間移動呪文が使える。
(問題なのは、モシャス状態だと常に炎の闘気を纏っちゃうことだよな)
人間やダイに姿を変えても、これでは事情を知ってる人がいるカール以外に足を踏み入れた途端、大騒ぎになる。だから、俺がまず最初に向かったのは、町でも村でもなく。
「っと」
着地して前方に視線を戻すと、あったのは木こり小屋。そう、カールにたどり着く前に立ち寄った村の外れを少し行った先にあった小屋だ。
「もっと人気のなさそうな移動先複数覚えておかないと、後々苦労しそうだよな」
それは今後の課題だが、ここに立ち寄ったのにも理由はある。
「ここなら、ルーラの移動先にしてることを知ってる俺も居る筈」
例を挙げると偽ポップとかだが、だからこそここに書置きのようなモノを残せば連絡は取れるはずだ。
(魔王軍に見られることも鑑みると、詳細は書けないから、会いたいってのと頼みたいことがあることぐらいか)
少々まどろっこしいが、直接ルーラで乗り込んで騒ぎになったら元も子もない。魔王軍から見れば俺は近々味方になるかもしれない存在ではあるが、ハドラーなんかは俺の寝返りを疑わしく思ってるだろう。
(自身の地位を脅かすかもしれない訳だしな。怪しいところがなかろうと疑惑をでっち上げてでも俺の魔王軍入りは阻止したいはず)
そんな状況でノコノコ人間側の拠点や町、しかも勇者一行とゆかりのある場所に向かったことが知られれば、これ幸いと攻撃材料にするに決まっている。
(だから、こっちから呼び出すか、人気のない場所に居る俺を見つけて秘かに接触するしかない、と)
炎の闘気がこの秘かにの部分難易度をむちゃくちゃ跳ね上げてるのだが、それよりなにより、他の俺に会うというのは殴られるのがほぼ決まってるので、気が進まない。
「とりあえず書置きが終わったら、モシャスで変身して空を飛ぶか。確かデルムリン島でひくいどりを見かけた気がするから、あれにモシャスすれば空は飛べるし、炎の闘気も些少は誤魔化せるはず」
あとは空を飛んでベンガーナ方向に迂回しつつデルムリン島を目指せばいい。
(魔王軍に見つかっても途中までならバラン捜索の為っていい訳ができるし)
それ故の迂回だ。一応旧アルキード王国に近い海岸線の上もいくらか飛ぶつもりだが。
(ま、ピンポイントにバランを発見するとかそんな都合のいいことないだろうし)
空の旅が少しは気晴らしになればいいなと考えつつモシャスの効果が切れた俺はひくいどりの姿へと変わって空へ飛び立つのだった。
尚、ひくいどりが居るのは新アニメ版です。
次回、九話「めらめら、ぼくわるいカイザーフェニックスじゃないよ」に続くメラ。