ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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九話「めらめら、ぼくわるいカイザーフェニックスじゃないよ」

「なんだかいいな」

 

 人の言葉が口に出せたら、俺はそう言っていたと思う。空は晴れ、眼下には美しい自然の景色が広がる中を飛んでいるのだ。

 

(これでごくまれに破壊された人工物とかなぎ倒された木々とかが目に入って来なければな……)

 

 まだカールが国として治めているであろうエリアを出ていないこともあってか、バランの率いてきたドラゴン達が残した破壊の爪痕があがった俺のテンションを下降させるが、魔王軍に所属しようとしている俺にはどうすることも出来ず。

 

「今でも分裂が出来れば一人置いて行ってそれで済むのに」

 

 なんて思ってしまうのは、今まで分裂した自分に頼りすぎた弊害だろうか。

 

(実際、バラン探すのも頼ろうとしてこうしてデルムリン島に向かってる訳だしな)

 

 ザボエラのような相応に力か技術を持つ存在は潜入を許してしまうものの、師匠の残した結界内は魔王軍の耳目を気にせず何かするには持ってこいだった。

 

(って、よく考えたら俺、師匠の結界今でも通れるのかな?)

 

 もし、邪悪を退ける結界が魔王軍に所属しようとしている立場の俺を邪悪とみなして跳ねのけたら、予定は大きく狂う。ザボエラの様に島の住民に気づかれず潜入するような技術は俺にはない。

 

(ハドラー程じゃないけど、強引な突破なら理屈の上では可能だけど……って、何考えてるんだ、俺!)

 

 魔王軍に所属するのは、そもそも大魔王が大陸を黒の核晶で吹っ飛ばすのを阻止するため。

 

(邪悪な意図なんてないのだから師匠の結界が拒むはずがないのに……はぁ)

 

 変な方に考えすぎだ、そう自分に言おうとし。

 

(あ)

 

 ふと俺は気づく。邪悪を退ける結界に拒まれず入ってゆくところを魔王軍に目撃されたら拙いという全く逆の問題に。

 

(危なかった、気づかなかったらまたやらかすとこだった)

 

 本気で魔王軍に所属する気がない明確な証拠を見られてしまったら、あのないはずの胃に悪そうな大魔王との会話をなんでしたのかがわからなくなる。

 

(どうしよう、これじゃデルムリン島に向かう訳にも……というか、ダイ達って今どこにいるんだろ?)

 

 もう当てになるか微妙な原作のタイムテーブルだと、ベンガーナへ買い物か、それとも竜の騎士について知るためテランに向かったもしくは滞在中だろうか。

 

(確かバラン戦の翌日あたり雨が降ってた描写があったから、テラン滞在二日目ってことはないと思うけど)

 

 それなら雨雲が目視出来ている筈だし、雨が天敵の俺ものんびり飛んでなどいられない。

 

(テランか、寄り道してみるとか? 竜の騎士にまつわる神殿があるからバランがいるかと思ったみたいな言い訳はできる筈)

 

 問題は下手するとダイ達と鉢合わせする危険性があることに加え、雨が降ってくるかもしれないということだ。

 

(原作の雨はダイとバランが雷撃呪文使ってたのが原因ってことも考えられるけど)

 

 雨の件を除いてもリスクは大きい。

 

(ただ、ダイ一行なら確実に俺の分体はついてるだろうし、連絡を取るなら確実なんだよな)

 

 透明呪文で姿を消せば、魔王軍の使い魔にも目撃されないであろうし。

 

(本来はこれにモシャスを混ぜて村人のフリして接触とか出来たんだけど)

 

 炎の闘気を纏った村人の姿でごまかせる相手がいるなら、ぜひとも会ってみたい。

 

(あかん)

 

 そもそも透明化呪文は効果が短いわりに魔法力の消費がでかく、燃費が悪い呪文なのだ。常時使用なんてした日にはあっという間にこっちが枯渇する。

 

(これは諦め……ん?)

 

 そんな折だった、前方の空を何かがこちらに向かって飛んでくるのが見えたのは。

 

(あれはクロコダインが飛ぶときに自分を掴んで飛ばせていた鳥の魔物?!)

 

 見覚えのある体色は、俺もカールに向かう時モシャスで変身していたのだから見間違いようはない。

 

(けど、何で単身で……あ、ひょっとして鬼岩城の足跡を追っていったヒュンケルを――)

 

 追いかけているのだとすれば、こちらに向かって飛んでくるのも不思議はない。

 

(うん? けど、カールは健在だから……あ゛)

 

 これって下手をするとヒュンケルがホルキンスに会ってしまうのではないだろうか。

 

(そして、俺が大魔王に招待されて出向いて戻らなかったと聞く、と)

 

 ヒュンケルにはクロコダインの様に自分を掴んで飛んでくれる配下の魔物も居なければ瞬間移動呪文も使えない。

 

(移動は徒歩だからすぐにダイ達に伝わるってわけじゃないけど、これ拙くない?)

 

 下手すれば俺を助けるためだと言って大魔王の本拠地を探し回り始めかねない。

 

(拙い!)

 

 これはどうあってもあの鳥の魔物を捕まえて、事情を話して協力を仰ぐ必要がある。あれが俺の分体ならだが。

 

(よし、さっそ――)

 

 早速接触しよう、そう思った俺だったが、鳥の魔物は俺に気づくと、いきなり進路を変更する。

 

(え゛)

 

 何故だと思った。

 

(俺から遠ざかる要素なんて……)

 

 そこまで考えて、思い至る。あの鳥の魔物、俺が炎の闘気を纏ったことをまだ知らない分体なのではないかと。

 

(何か見たことない闘気を帯びたモンスターが近づいてくる、か)

 

 そりゃ逃げるだろう、が。

 

(待ってぇぇ! 俺、悪いカイザーフェニックスじゃないよぉぉぉッ!)

 

 こっちだって逃がすわけにもいかなかった。故に、多分両者にとって不本意な大空の追いかけっこが始まってしまうのだった。

 




情報の行き違いって大変だなぁ。(白目)

ピンポイントにバランを発見すると思った? 残念、別の問題発生だよ。

次回、十話「波打ち際でもない追いかけっこ」に続くメラ。
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