ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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十話「波打ち際でもない追いかけっこ」

「喋れないのが、こんなにめんどくさいなんて」

 

 話せたらそう言っていたと思う。空は青い。ところどころに浮かぶ白い雲よりは下を、俺ともう一羽鳥の魔物が飛ぶ。まさに空中の追いかけっこだ。

 

(っ、流石っていうべきか)

 

 獣王が自身の移動に使っているだけあって、推定鳥の魔物に変身した俺はシャレにならないくらい速い。何かを掴んで運んでいるわけでもないのだ。

 

(運んでるモノがないってのはこっちも同じで、炎の闘気がステータスを外付けで強化してるはずなのに)

 

 両方登場するゲームの方だとガルーダの方がひくいどりよりモンスターとしての格が上なのだ。せめて素早さを上昇させる補助呪文が使えれば、状況をひっくり返せるかもしれないが、あれは僧侶の呪文だから使えない。

 

(けど)

 

 それでも追いつくことは可能だ。なぜなら。

 

『あ』

 

 ぽふんと煙を上げて前を行く鳥の魔物がメラゴーストに変わる。

 

(貰ったぁっ!)

 

 そう、俺が狙っていたのはモシャスの効果時間切れだ。モシャスが切れれば、メラゴーストは飛べないし、呪文をかけ直す間は慣性こそあるだろうが自然落下になる。

 

(届く、これなら)

 

 そう思ったところでぽふんと俺からも煙が上がり。

 

『あ゛』

 

 足で掴もうとしていたからか、下半身の先端を相手に向けるような格好でメラゴーストに戻った俺も落下を始める。もしこの時あちらの俺がこっちを見ていればこちらの正体もメラゴーストと気付いただろう、だが。

 

『モシャス』

 

 後ろを見る余裕もなくモシャスをかけ直したあちらは再び飛び始め。

 

『くそっ、モシャス!』

 

 俺もモシャスをかけ直した上で更に呪文を唱える。いや、厳密に言うなら唱えるのは炎の闘気の方が、だ。

 

『モシャスッ!』

 

 炎の闘気が俺から分離し、炎で出来た相手と同じ魔物を形作る。

 

(挟み撃ちだ! こんなことに時間をかけられない――)

 

 加えてこの方法なら、炎の闘気の方のモシャスが若干後で解けるため、先ほどのような事にもならないだろう。

 

◇◆◇

 

『まさか、必死で逃げてた相手がAだったとか……』

 

 結果的に作戦はうまくいった。いきなり追手が二羽に増えての動揺もあって逃げてた分体を確保した俺が炎の闘気に抑え込ませたままモシャスの効果時間切れでメラゴーストに戻ると、追跡者の正体を知った分体の俺は脱力し。

 

『それなんだけどさ、俺が追いかけてたのにも訳があって』

 

 この分体には一刻も早く本物のヒュンケル、本物ンケルと合流し、カール入りを阻止してもらいたかったからこそすぐに事情を説明すると。

 

『とりあえず殴るな?』

 

 暫く額に手を当てようとするポーズを取ろうとしていた分体は笑顔で言った。

 

『へぶっ』

 

 痛い。たぶん許可なんて求めてのことではなく、あれは宣告だったんだろうが。

 

『何先走ってんだよ、お前! 俺が、俺達がどんだけ苦労し、て!』

 

 ガスガス殴ってくる、先走りって言うのがどういうことかはわからなかったものの、しわ寄せがあったのは間違いないから俺は敢えて拳を受け。

 

『レムオル、念のために場所を変えるぞ』

『え』

 

 呆ける俺に分体は言う。あれだけ派手に空で追いかけっこしたら魔王軍の目にもとまっているかもしれないだろうと。

 

『あ』

 

 もっともだった。だが、高速で飛翔していたからこそ今の俺の着地点には魔王軍の使い魔がまだ来ていないだろうと判断しての透明化か。尚、この呪文は効果対象が1パーティーの為、俺の姿もすでに透明になっている。

 

『もっともな話だった』

 

 なんで気づかなかったんだろうと思いつつも、俺は従い。

 

『そもそもヒュンケルがそのままカールへってのも早合点だ。ヒュンケルは鬼岩城の足跡をたどっていったんだろ? その上でお前がカールへの攻撃を止めさせたんだったら、鬼岩城は発見されての交戦を避けるためにカールを迂回するはずだ。たどったヒュンケルがどうしてカールへ直接行くって言うんだ?』

『あ゛』

 

 話が再開したのは、移動した先でのこと。投げられた指摘に俺は固まり。

 

『まあ、海に途絶えた足跡の目撃者捜しにカールへ立ち寄る可能性は否定できないけどな。お前がカールに向かうって言ってたなら、ついでに様子を見ていこうとなるかもしれない。だが、原作と違ってホルキンスが殺されず、弟もカールも無事、バランは負傷してる今の状況だと、ヒュンケルが竜の紋章になっているホルキンスの傷を見て慌ててダイの元に引き返すって展開もなくなる。代わりにお前が戦ったことをどこかで耳にすれば、最終的にホルキンスへ面会を申し込むことはあるだろうが』

『……おれの想定より報告に向かうのは後になる訳か』

 

 更に続いた分体の言いたいことを理解して呟けば、そういうことだと頷きが返る。

 

『で、だ。ダイがおまえを助けに行こうと言い出すかもしれないのを止めるのは、不可能じゃない。が、その上で』

 

 どうするつもりだと分体は聞いてきた。

 




そりゃ分体も殴るわ。

次回、十一話「問いへの答え」に続くメラ。
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