ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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最終話「仕事始め」

「改名か……して、いかなる名にするつもりだ?」

 

 大魔王の問いに、そうですねと俺は口にし。

 

「トゥース、トゥース・ゴ・アルウェとでもしようかと」

 

 挙げたのは、メラゴーストを逆さ読みにしてもじったモノ。

 

「今までの名のいずれかを使っては、すぐにもおれの正体を気取られる可能性がありますから」

「何故」

 

 補足の説明をすれば、そこでハドラーが声を上げる。

 

「何故気取られるのを避けようとする?!」

 

 ハドラーからすれば、改名するのは後ろ暗いところがあってのことだろうと俺への糾弾理由にするつもりなのだろうが、こっちにはちゃんとした理由がある。

 

「勇者一行とおれはそれなりに付き合いがあり、故に弱点の一部を知られてるから、正体が知れてそこをつかれないための予防だよ」

「じゃ、弱点だと?!」

「そう。だから――」

 

 ハドラーへ答えた俺はバーンに向き直り、乞う。姿を隠せ、弱点を消せる防具が欲しいと。

 

「ほう、防具と申すか」

「はい。おれがメラゴーストであることから容易に想像がつくかもしれませんけど、雨が苦手で……引火せず、俺が濡れないモノがあればありがたいなと」

「あっ」

 

 弱点を明かした俺へ声を上げたのは誰だったか。一応モシャスで変身すれば防げる弱点ではあるが、弱点は弱点だ。

 

「ああ、確かに火の身体なら雨は困るよねェ」

「そう、だというのに勇者一行には雨雲を呼ぶ呪文の使い手が居るから」

 

 納得がいったと言う態の死神におれはそう応じ。

 

「なるほどな、お主の言は至極もっとも。……そうよな、マントかローブの一つでもなくては格好もつくまい。許す、この後武器庫へ案内させる故、そこで調達するがよい」

「ありがとうございます」

 

 太っ腹なバーンの言へ頭を下げる。

 

(とりあえず、これでダイ達と顔を合わせる羽目になったとしても、当面は謎の強敵で乗り切れるはず)

 

 自ら弱点を明かすことと引き換えに得たものだが、そもそもメラゴーストだから雨が弱点なんてのは誰だって思いつくことだ。隠しておくよりむしろ自分からさらけ出して心を許してる態を装った方がまだ有益だろう。

 

(それに弱点を明かすことで、敵対した時の攻撃もそちら方面に誘導できるだろうし)

 

 頭脳労働は俺に向いてない気もするが、ここからは前にもまして綱渡りになる。上手くやっていくしかない。

 

「では、防具を拝領し次第、初仕事とさせてもらいますね。とは言っても、軍の現状とか何もわかってない状態なので……」

 

 そこまで行ってから俺が目を向けたのは、つい先ほどまで魔軍司令の地位に居た男、ハドラーだ。

 

「俺は現状の把握に努め、勇者一行の方にはバラン……殿を差し向ける予定です」

「何だと、だが――」

 

 原作でもバランとダイを会わせないように策を弄していたハドラーは立ち上がりかけ。

 

「ええと、一軍団では戦力的に不安とか? 大丈夫、今回は威力偵察程度に済ませるつもりで、本格的にぶつけるつもりはないから」

 

 敢えてハドラーの胸中に気づかず誤解するふりをしつつ、俺は説明する。これも現状把握の一端であると。

 

「勇者一行の戦闘力を図って、こちらの現状を理解してから動こうと思います。おれの方も準備期間は絶対必要ですし」

 

 その間にバランに勇者一行の戦力を図ってきてもらうという訳だ。

 

「ま、待てメラゴースト! 時間が必要と言うならば、この場は大魔王さまの信用回復のためにオレが……!!」

「えっ……おれ魔王軍のことハドラー、どのに聞かなきゃいけないって思ってるんだけど、前任者だし」

「うぐっ?!」

 

 話の流れに焦った様子のハドラーだが、俺が指摘すると苦いモノを呑み込んだような表情になり。

 

「そう言う訳だからさ、バラン……殿、勇者一行の方はよろしくね」

「うむ」

 

 魔王軍の面々を殿呼びは慣れないが、この役職に居る以上は仕方のないことで。

 

「ぬぐぐぐぐ、ぐぅっ」

 

 頷いたバランが踵を返すのを見送ってから振り向くと、ハドラーがすごい顔をしていた。語彙が豊富なら文章的に表現できたんだろうけど、そうじゃない俺には百面相ぐらいしか言いようがなく。

 

「あ、時間節約の為に武器庫までの移動に同行してもらって、その間に色々この軍のこと聞いておきたいんだけど」

 

 ちょっとかわいそうになってきたのはきっと気のせいだろう。やることが山積みの俺にハドラーを気遣う余裕なんてなく。

 

「ハドラー」

「っ、ハッ」

 

 さしもの元魔王も大魔王には逆らえなかった。俯いた顔は何か言いたげな表情だったが、口を挟む者はおらず。

 

「……案内する」

 

 かわりに俺へ声をかけた人物が一人。ここまで言葉を一言も発さなかったミストバーンがそれだけ言って動き出す。

 

(あー、そう言えば原作でフレイザードにも軍最強の鎧を渡したりしてたのがミストバーンだったっけ)

 

 なる程、案内担当としては当然の人選だった。ただ、もう一人の同行者が不満と不本意の固まりのようなハドラーだったことで、武器庫までの道のりがすっごく気まずいモノになったのは言うまでもない。

 




引き継ぎは大事。古事記にも書いてありそう。

次回、エピローグ「???」に続くメラ。
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