ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

14 / 256
お昼の分を前倒し投稿。


十三話「海を越えて」

「うーん」

 

 修行、移動、修行、野営、大体このサイクルを繰り返し俺達は森の南下を続けていた。先に俺のやらかしたメラ以外の呪文を知っていた件については相変わらず棚上げ状態のまま。俺が打ち明けてくれるのを待っているのか、ちゃんと意思疎通ができるようになるのが先だと判断されたのかはわからない。

 

「さて、もう少しで森を抜けますよ」

 

 そして今は移動の部分に当たるのだが、先を行く二人の後をふよふよついていきながら俺は悩んでいた。

 

(師匠に打ち明けるか否か、そして打ち明けるならどの段階までをか……全部ってのは信じてもらえるかもあるけど、原作知識を獲た師匠の動きによっては俺の原作知識が殆ど死ぬし、下手に原作を改変されると原作では色々綱渡りで何とかなったラスボスの、大魔王の撃破も叶わなくなる恐れがあるわけで)

 

 ならば、この世界で暮らしていた村人か何かだったが、気が付いたらメラゴーストになっていたって方向で打ち明けるべきか。正直に言ってこのパターンも厳しい部分がある。

 

(二次創作でもいいけど小説とか書いてると気づくことなんだけど、作り話って意外に難しいんだよな)

 

 例えば、この世界の村人だったとして、職業は何だったのか。どこの出身で、食べ物的な意味での好物は何か。これだけ質問されただけで、俺は答えに詰まる。

 

(漫画やアニメで見られた人々の営みって一部分だから、文化レベルって奴がはっきりわかんないし、職業はそれについての専門レベルの質問とかしてきそうだもんなぁ、師匠は)

 

 確かアバンは学者の家系だって言っていた気がするので、知識量は俺をはるかに凌駕する。この世界の現実と俺の作り話の生活の文明にズレが、例えば俺の作り話の暮らしをするにはあと百年前後文明が発展してないと無理だなんて事になってたらすぐ気づいて矛盾を指摘してくると思う。

 

(割と酷いポカをやらかした自分の作り話が通じるかって言ったら、無理だよな)

 

 それで原作知識抜きで異世界出身です、と答えた場合、今度は魔法の儀式を嬉々として試みていたことなどが仇になる。異世界人で知識が皆無なら、いくつもの呪文と契約できたのが不自然だからだ。

 

(物語の中に出てきた魔法を使えないか試してみたんですっていい訳は可能だけど)

 

 わかっている、ここまで考えたことで異世界出身で物語の魔法を試してみたというのか一番粗がないってことは。

 

(物語として挙げるのは他のドラクエのナンバリングから選べばいい、ここまではいい。ただ)

 

 ただ、俺の話を元にしてアバンが原作にない呪文を会得したりしてしまったらどうしよう。

 

(ちっぽけな変化がまわりまわって大きな波紋になる、バタフライエフェクトだっけ? ただでさえ俺って異物が弟子入りして原作が若干変わってしまってるって言うのに)

 

 俺が原作知識を生かして生き延びることを最優先するなら、余計な改変は起こさない方がいい。起こしてはいけない。

 

(そのツケを払えるどころか生き抜ける気もしないのが現状の俺の強さだもんなぁ)

 

 今できるのはメラの呪文、そして修行の成果で単体の防御力を大きく上げるスカラの呪文、そして氷のつぶてで単体を攻撃するヒャドの呪文が使えるようにはなっているが、今後主人公一行が戦うであろう強敵の数々を思い浮かべると誤差の範囲だ。

 

(一応、スカラで守りを高めて耐えつつぴょいんで分裂を狙うって戦法がとれるようにはなったわけなんだけど)

 

 加えて、メラゴーストなのに氷の呪文を使うというのは、相手の意表を突けるのではないだろうか。

 

(まぁ、意表をついても師匠とかには通用しなさそうですけどね)

 

 戦力的な彼我に差がありすぎて視線がつい遠くなる。

 

(と、声には出さずいろいろぼやいてみたけど)

 

 海が近いというなら、決めなくてはならない。現在俺にできる意思疎通はジェスチャーと筆談だけだ。砂浜があれば、地面に文字を書いて伝えられるが海に出てしまえば筆談は出来ない。大きな船に乗るならモンスターの俺は出歩けないからジェスチャーも無理かもしれない。

 

(海が見えたところが、俺の分水嶺だ)

 

 そこまでに決めねばならず。

 

「師匠」

「おや、どうしました?」

 

 声をかけたからこそ、内容がわからずとも何か伝えたいことがあるとはわかってくれたらしい。まだ海が見えていないので俺がしたことは、枝を拾って地面に十文字足らずの字を書いただけだ。

 

「海辺に着いたらお話が」

「……わかりました」

 

 短い沈黙を挟んで師匠は頷き。

 

◇◆◇

 

「しかし、古くなった灯台のモノが手に入るとはラッキーでしたねぇ」

 

 翌日、俺は大きなランタンの中に入って波に揺られていた。迷いに迷って、最終的には異世界出身の人間で気が付いたらメラゴーストであったこと、呪文についてはドラクエⅢのことを物語と知っていて、それを元に再現できないかを試みたということにした。

 

(ドラクエⅢの世界って実在世界の地図を参考にした世界だし)

 

 俺が魔法使いと聞いて連想したのもこのⅢの魔法使いだったので、齟齬も出にくいと思う。

 

(これで……よかったんだよな?)

 

 波に翻弄されて上下に揺れる視界の中で俺は声に出さず自問自答する。だが、未来のことなど今の俺には知りようもないのだ。

 




タイトル詐欺にならないよう海にこぎ出しました。

打ち明けた部分に関しては、回想シーンで次回ということで。

十四話「告白」に続くメラ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。