ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
『確かに燃えないや、これは』
そう返すべきだろうか。ミストバーンの示した一角にあったのは、無数の鎧だった。どれもが金属製で、確かに燃えそうにはない。
(と言うか、暗黒闘気で操るタイプの鎧なんじゃないだろうか、あれ)
その中に原作で1/2のフレイザードと合体した鎧があったような気がしたが、敢えて見なかったことにする。
(そう言えば最強の鎧とは言ってたけど、ワンオフというか一つしかないとも言ってなかったっけ)
加えて言うなら、ミストバーンは最強の鎧と言っていたような気がする。
(鎧とカテゴリを限らなかったらもっと強いモノもあったりするとか?)
思い返してみると、ダイの大冒険の世界の防具は総じて脆いような気がする。たぶん、技の威力を強く見せる演出のような要素もあったのかもしれないが、ダイの防具とかヒュンケルの鎧とかクロコダインの鎧とか何度も損壊してるイメージが浮かぶのだ。
(まぁ、神の金属って呼ばれてた気がするオリハルコンで出来てる魔法生命体がバカバカぶっ壊される世界で、防具に壊れないことを望む方が間違ってるのかもしれないけど)
そう言う意味で考えるなら電撃呪文以外の攻撃呪文を防げるヒュンケルや1/2フレイザードの着用していた鎧こそ正解なのかもしれず。
(ミストバーンが鎧を示したのもその辺を考えてのモノだったりするのかな?)
メラゴーストはメラ系呪文以外の殆どの呪文に耐性がない。例外はこの世界でお見かけしないドルマ系の呪文くらいだが、弱点の多いメラゴーストに呪文無効化の防具は非常にありがたいと思う。
『けど、メラゴーストって非力だからさ、重そうな鎧は装備できそうにないんだよね』
モシャスでダイを始めとした近接戦闘が可能な人物を写し取れば話は別になってくるんだけれど。だから、俺としては鎧の中から一つを選んでこれにするとは言えず。
『ローブとか魔法使い向きの防具はない?』
もう一つ注文を付けると、ミストバーンが次に示したのはいくつかのローブ。
『ええと』
その中に今ミストバーンが着ているモノに似た衣があって、俺は思わずミストバーンの方を振り返る。
(ペアルックしたい、とかは流石にないよな、うん)
原作知識があるからこそミストバーンが衣の中身をさらせないのを俺は知っている。
(流れ呪文とかであっさり衣が燃えて正体を晒しちゃったら拙いもんな)
同系統のローブに火炎耐性が備わってても不思議はなく。
(呪文無効化防具にはちょっと後ろ髪引かれるけど)
正体を隠すならミストバーンのつけている衣に近いタイプの防具の方が良いのかもしれない。
(あっちは正体隠すのを主体に置いた防具だろうし)
非力な俺としてもやはり鎧は着用が厳しそうに思えるのだから。
『それじゃ、あれを貰ってゆくね』
そう断りを入れて、目をつけた衣の一つへ近寄ろうとした時だった。
『あれ?』
「今度は何だ?」
『いや、何か誰かに呼ばれたような気がして――』
突然動きを止めたからか問うてきたハドラーに答えると俺は周囲を見回し。
『あ』
俺が目を止めたのは、奇妙な物体だった。近いモノを挙げるなら、ブーケ、つまり花束か。先端に貴石をあしらった短い棒状の物体を金属の様な光沢を持つ薄いものがまるで花束を包む包装のように取り巻いた形を作っているのだ。
『これは?』
「衣の魔杖」
『魔杖? ひょっとしてヒュンケルの――』
鎧の魔剣の兄弟武器かと思い名を口にするとミストバーンの肩が微かに跳ねた。
『あ、えっと……』
離反した弟子のことを口の端に載せたのは拙かったかなと思うけれど、今更引っ込められず。興味を示した手前やっぱりなしにしようともできない。
『鎧化』
手に取りヒュンケルが鎧を着用した時のことを思い出してキーワードを口にすれば、包装の様な部分がほどけて俺にまとわりつき、金属の光沢のあるローブへと変わってゆく。
『やっぱり……あ』
そして遅れて気が付いたが、この防具は自動で主に装着される。
(つまり、サイズ調整とかいらないってことじゃないか)
モシャスで様々な体型の人物に変わる可能性のある俺にとって、これほど重宝する防具は他にない。
(しかも、兄弟装備の特徴から鑑みるに炎も耐えて燃えないだろうし)
『気にいった、おれが貰っても大丈夫なら、これにするよ』
こうして俺はモシャス時を除けば、生まれて初めて全裸を脱出することに成功したのだった。
力不足は無念な限りですが、こうでもしないとメラゴダインと通常の小柄な姿の双方で問題なく着れそうな防具が思いつかなかったのです。
次回、番外24「新たな敵(ポップ視点)」に続くメラ。