ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「いやだ!! アバン先生の生命を奪った魔王軍の手下なんかに……死んでもなるもんかあっ!!!」
ダイの叫びが湖畔に響く。
「そうだ! ふざけんじゃねえっ!!!」
そして、おれも叫んでいた。
「先生の仇の魔王軍に入る理由がどこにあるってんだ!!」
同じ竜の騎士なんてだけで、先生の仇の手下になる理由にゃならねえ。
「そもそも、いくら同族だからってダイを自由にできる権利なんかねえはずだ!!」
納得がいかねえ、その思いで続けて俺は叫んで。
「……権利なら……ある!」
「な、に?」
返ってきた答えに耳を疑った。驚きながら、どんな理由があるってんだ、とも思った。
「親が子供をどう扱おうと勝手のはず……!!」
だが、それ以上にトンデモナイ発言がそいつの口から、バランの口から飛び出して。
「……なんて?」
姫さんも耳を疑ったんだろう、こっちを見るがおれを見られてもどうしようもねえ。
「今、なんて言ったの……!!?」
頭を振るとバランの方に向き直って問う姫さんに、あいつは答えた。
「この子は私の息子だと言ったのだ。本当の名は……ディーノ!」
不気味なほど静まり返るって言うのはこういうことを言うんだろうなって割とどうでもいいことを一瞬考えちまうほどの驚きにすぐ言葉が出なかった。
「……う、そ……だ」
ダイの口からかすれた声が漏れ。
「……息子、ダイ君がバランの……!!?」
「てっ、てめえがダイの父親だってのか……!!?」
そんな、そんなバカな話があるはずねえ。
「デタラメ言ってんじゃねえよ!! ダイは怪物島のデルムリン島に流れ付いた孤児だって聞いたぜ!!」
ダイの口からも聞いたことだし、あいつの家族って言や、あの島のモンスター達だった。
「同じ種族だからって……何か証拠でもあんのかよっ……!!」
「その子の額の紋章が何よりの証拠。この地上に私以外で竜の紋章を持つ可能性があるのは、唯一人。11年前に生き別れた我が子ディーノだけだ!!」
「っ」
失敗した、反射的にそう思う。証拠を出せと言ってすんなり証拠を口に出されるなんて。
「……じゃあ、竜の騎士一族ってあなたの家系しかいないの? 仲間も、兄弟も……!!?」
そして反論を考えてる間に口を開いてバランの野郎に尋ねたのは、姫さんだった。言いたくないのか、言う気がないのか、バランの野郎はだんまりを決め込んでたが。
「……そうよ! お母さんは……!? ダイ君を産んだお母さんはどこにいるの!!?」
何か思い至った顔で姫さんが質問を続けるとバランの表情が動いて。
「……母親か。……たしかに、この子にはどことなく母親の面影がある」
こんな表現したかあねえが、バランの瞳が優しい色を帯びたのをおれは見た。そいつはまぎれもなく家族に向けるような目で。
「母さんに……」
ダイがポツリと呟いてちらりとバランを見る。気になるんだろう、そいつあ責められねぇ。
「バラン……!」
「……貴様ら人間には関係のないことだ!」
ただ、姫さんの声で我に返ったバランの野郎は頭を振ってからダイに視線を戻す。
「ディーノ、どうあっても私の元に来る気はないのだな?」
「当然だ!」
「……そうか、やむをえんな」
確認の言葉をダイが跳ねのけ、バランがそう言ったところでおれは察した。
(戦いになるっ)
こいつの言葉が本当でダイの父親だとしたら弱ぇはずがねえ。そもそも魔王軍の軍団長って時点で弱えはずなんてないんだけどよ。
「ダイ、来るぜ」
「うん」
おれの言葉にダイが応じた直後のこと。
「できれば傷つけたくなかったが、力の差を知れば些少なりとも気も変わるだろう」
「そんなこと……そんなことあるもんかあっ!」
ダイが剣を逆手に持って地を蹴る。
(アバンストラッシュ!)
構えでわかる。だけど、バランの野郎は背中の剣を抜くでも避けるでもなく突っ立ち。
「「なっ」」
おれとダイの声が重なった。
「冗談だろ?!」
父親だから手加減したとかそんなことはなかったはずだ。にもかかわらずダイのアバンストラッシュが炸裂したはずのバランは平然としてて。
「ア、アバンストラッシュが……全然効かない……!?」
「ダイ、後ろに飛べぇっ!」
バランの手が立ち尽くすダイの腕に伸びるのが見えて俺は叫ぶ。
「っ」
間一髪だった。ダイは慌てて飛びずさって。
「ダイ、もっと下がれ! 今度はおれが――」
バランへ杖を向ける。
「……身のほどを知らぬ奴と言うのは哀れだな……怪我をしたくなければどいていろ」
「どくかよおっ!!」
視界の中、バランの野郎の近くにもうダイはいねえ。巻き込む恐れがないなら、何の問題も無かった。
(剣が駄目なら呪文だ!)
ダイのアバンストラッシュを受けて平然としてたやつだ、いくらおれの最大呪文だって倒せるたあ思えねえ。
(それでも、些少のダメージくらいは――)
受けるはずと俺は呪文を唱える。
「大地に眠る力強き精霊たちよ……いまこそ我が声に耳を傾けたまえ……重圧呪文ッ!!!!」
呪文によってバランの野郎の周りの地面が砕け、沈み込み。
「よし。ダイ、隙ができ……っ?!」
隙ができたところを攻撃だと言おうとした言葉は、途中で途切れた。
「なん、大魔導士マトリフ直伝の大呪文が……おれの最大呪文が……足止め程度にしかなってねえ?!」
砕け、凹んだ地面をゆっくりではあるが普通に歩いて来るそいつの姿におれの顔は思わず引きつったのだった。
原作より温めなバランですが、強さは健在。どうするポップ?!
次回、四話「分体を探しに」に続くメラ。