ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「正体も隠せる上にモシャスにも対応してて――」
自分にとっては一番の装備であると口にしてから、俺は大魔王へ文官たちとの顔つなぎなどの為、この場を去る旨を伝える。
「軍団長とか、幹部の面々への顔見せは済みましたし」
軍団レベルで行動を起こすなら、必要となる物資などについてその辺りを管轄する部署への意思疎通も必要になってくるはずだ。
「おお、それでしたら、ワシもご一緒しますじゃ」
そう主張したところで声をかけて来たのは、妖魔司教ザボエラだった。
(ああ、そっか。ザボエラの率いる妖魔士団は確か悪魔系ときとうしとか術士系のモンスターとかで構成されてたもんな)
おれの想像する文官の一部はザボエラの配下が担っているのだろう。杖を置いて代わりにデスクワークをしている術士系モンスターを想像すると、なるほどしっくりくる。
(まあ、それだけだと軍団ごとに動くときに支障が出るから、どの軍団でもある程度のことは出来るようになってたんだろうけど)
原作の不死騎士団だと、マミーかミイラ男らしき魔物がダイ達に倒された人骨の剣士の骨を回収している描写があったことだし。
(まあ、氷炎魔団は例外だろうけど。あそこのモンスター、俺みたいなのを含めて食事も装備も不要だもんな)
せいぜい必要になる物資があるとすれば、侵略予定地域の地図だとかそう言ったモノに限られると思う。
(逆に言うならハドラーの親衛隊だっけ? 武器を持ったモンスターなんかは武器が破損した時の代わりとか要るだろうし、生物なら食い物もいるよな……たぶん)
現地調達と言う考えもあるだろうが、原作で魔王軍が物資を略奪してるところは記憶になく。
(それはそれとして、ザボエラの方から声をかけて来てくれたのはありがたいかも)
原作では割といいところなしで終わった軍団長だが、性格面を考慮しなければザボエラも有能なのだ。ハドラーを超魔生物に改造して強化したのもザボエラとその息子あってのことだった筈だし。
(クロコダインを生き返らせた蘇生液もたぶんザボエラが管理してたモノだろうしなぁ)
毒と薬は表裏一体。ザボエラは体内であまたの毒を合成できる毒のスペシャリストでもあったはずだが、それはつまり癒し手としてもスペシャリストになれるスペックを持ち合わせていたということでもある。
(バーンが買っていたって言うザボエラ自身の頭脳を含めて、原作では有効活用できずに終わってる面が多かった気がするけど)
ザボエラの持つ能力や作り出したモノは使いようで大きく化ける可能性があるのだ。
(利己心と出世欲をついてうまく転がせることが出来れば――)
俺の欲するモノも手に入るかもしれない。流石にA5の蘇生みたいなモノを任せる気にはならないけれど。
「助かるよ、ザボエラ殿。ええと、過去にあったことはお互い水に流して仲良くやってゆく、ってことでいいかな?」
申し出も取り入るためのものだろうが、その辺りはこっちも欲しいモノの為に利用するつもりなので、そういう意味でもお互い様かもしれない。
「ヒョ? そ、その通りですじゃ」
ただ、俺の好意的な対応はザボエラにとって想定外だったのだろう、一瞬間の抜けた様な顔をしたが、すぐに我に返ると頷き、小走りで俺を追い抜く。
「文官ならばワシの部下も多い。ワシの方からもトゥースさまのことを伝えておきますじゃ」
一見すると殊勝な物言いでそう言って走り去ってゆくが、その実部下と口裏合わせのための先行とも考えられる。
(まぁ、原作知識で本性は知ってるし、相応に美味しい思いをさせておけば裏切りはしないだろうからな、ああいうタイプって)
むしろミストバーンやハドラーと比べれば何十倍も相手にするのが楽な相手だろう。
(そも、俺って新参者だし、つい先日まで敵側だったから信用されている筈もない)
例外はバランだが、バランにしてもバーンが俺達を騙しているという言については半信半疑ぐらいだろうと思っている。割と素直にこちらの言うことに従ってくれているのは、その内容が自身にとっても悪いものでないからに他ならない。
(そうなってくれるようにダイへの勧誘へ許可出したりしてたわけだし)
とりあえず当面は魔王軍内での居場所作りも仕事の一つだろう。
(とはいうものの……やっぱり、ハドラーとミストバーンが問題だよな)
ハドラーからすれば俺は魔軍司令の座を奪った相手。ミストバーンは大魔王の忠臣。俺を好意的にみる理由がどっちにもないのだ。
(前途多難だな)
胸中で零しつ、俺は既に視界から消えたザボエラを追いかけ。
◇◆◇
「……疲れた」
顔合わせが終わって一人になると、思わずそう漏らしていた。
(これでようやく分体探しに行けるって言うのに……)
思い出すと精神をゴリゴリ削られる気がした。
「あれ、ここに勤めてるの不死騎団だっけ?」
なんて勘違いするほど生気のない文官がよたよた歩いてる部署が合ったりしたのだ。
「魔界に帰れない……娘の誕生日もうすぐなのに」
「息子に顔を忘れられちまう」
うつろな表情でカレンダーらしきものをちらっと見た文官のそれは前世の会社員をほうふつとさせていた。
「死ねぇ、勇者どもっ! 私らが、どんな、思いで、予算を、組んだとっ!」
書類をダイ達に見立てて狂乱しながらペンを突き立てる魔族がいた。その魔族は既にダイ達によって壊滅させられた軍団の担当だったと後で聞いた。
(裏方の努力の上に軍団の運営って成り立ってたんだなあ)
これからやることがあるというのに、俺の目はどこか遠くを見ていた。
次回、番外26「とてつもなく高い壁(ダイ視点)」に続くメラ。