ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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番外26「とてつもなく高い壁(ダイ視点)」

「……この程度の呪文で私がどうにかなるとでも思ったか……?」

 

 額に紋章を浮かべ平然とポップの呪文の中を歩いて来るバランを見て、おれは思わずポップの名を呼んでた。

 

(ただ歩いて来る、それだけじゃない!)

 

 何か仕掛けてくる、そう思ったんだ。

 

「レオナもおれの後ろに――」

 

 それ以上詳しく何かを言ってる時間もなかった。

 

「ムダだッ!」

「うわあああっ……呪文が……やぶられるッ!!!」

「アバン流刀殺法――」

 

 ポップの悲鳴のような声を聞きながら、闘気を発すバラン目掛けて剣を振る。地面を押し潰してたポップの呪文が内側から壊れたのはそのすぐ後だった。

 

(いっけぇぇぇっ!) 

 

 ポップの呪文を破って尚勢いの弱まらない闘気におれの斬撃がぶつかり。

 

「くっ」

 

 切り裂かれながらも押し寄せてくる闘気におれは腕で顔を庇う。

 

「うわあっ」

「きゃあっ」

 

 後ろからポップやレオナの悲鳴が聞こえたけど、驚いたといった感じでそんなに切羽詰まってはいなくて。

 

「ポップ、レオナ、無事かい?」

 

 尋ねる余裕ができたのは闘気の放出が収まってからだった。とはいえ、よそ見なんかできない。目は前を、おれの前を除き大きく地面が抉れた真中に立つバランの方を向いていた。

 

「あ、ああ、何とか。サンキューな、ダイ」

「ありがとうダイ君。けど、とんでもないわね」

 

 二人の返事に少しだけ安心したけど、レオナの言う様にとんでもないやつだ。

 

「ポップ、気付いてるかい?」

「うん? 何がだよ、ダイ」

「あいつ……バランだけど、さっきから一度も背中の剣を抜いてない」

「あっ?!」

 

 おれの言いたいことが解かったんだろう、ポップが驚いて。

 

「まだ、全然本気じゃないんだ」

「は、はは……嘘だろ。軍団長って言や、ヒュンケルの野郎やクロコダインのオッサンと同格のはず」

「うん。だけど、二人には悪いけど……」

 

 こいつは、バランはヒュンケルやクロコダインより強い。

 

「そろそろ解かっただろう。未熟なおまえ達になすすべなどないことが。おまえと私ではその力において雲泥の差があるのだぞ!!」

「っ」

 

 そんなことは解かっている。おれは、バランに剣すら抜かせてないんだ。

 

「でも、まだおれには……最後の武器がある!!」

「最後の武器だと……!!?」

 

 思い出すのは一つの言葉。

 

「勇者にも一つだけほかの奴には真似できない最強の武器がある……!」

 

(……そうだ、マトリフさんも言ってた。それに真似と言えば……)

 

 フレイザードとの戦いのあと、メラゴースト君から分裂したメラゴーストに聞いたことがあった。なんでモシャスの呪文で敵や味方を真似ようと思ったのかって。

 

『真似るってのは学ぶの語源、あれ逆だったかな? とにかく、上手い人の動きを真似たりすることで上達するって言うのがあってさ。例えば絵なんかでも、上手いなって思った人の絵を側に置いて、そっくりに書けるように何度も練習するのとかが上達の近道だったりするんだけど、これって戦いとかにも使えるんじゃって思ったのがきっかけかな? 例えばヒュンケルとダイは同じ師匠の剣を使うよね? だから片方の動きを覚えたらもう一方の姿に変身してても同じ技が使えるんじゃないか、とかね。ヒュンケルは前に完ぺきなアバンストラッシュは使えないみたいなことを言ってたけどさ、そこを空裂斬を会得したダイの技術で補えたら、ヒュンケルの姿でも完全な形のアバンストラッシュを放てる筈だし――』

 

 その答えに凄いことを考えてたんだなって驚いて、こっそりお願いしたことがあった。

 

(バランに同じわざを出して通用するとは思えない、だから――)

 

 あと押しをするため、おれは自分に語りかける。

 

(……たのむ、おれの体の中に眠っている竜の力よ! 目を覚ましてくれ!!)

 

 こんなところで、手も足も出ないままじゃ終われない。

 

「むっ!!?」

「おおおおおおーッ!!!」

 

 剣の柄を握りしめ叫んで。

 

「だッ、ダイも紋章を出したあっ!!」

 

 ポップの声を聞きながら、剣をかざす。

 

「電撃呪文ーッ!!!」

 

 空で唸り出した黒い雲から雷が剣に落ち、おれはそのまま構えをとる。

 

「ライデインスクライドォッ!」

「な、ダイが……ヒュンケルの野郎の技を?!」

 

 ポップの驚く声が聞こえるけど、しょうがない。ヒュンケルにモシャスしたあのメラゴーストにこっそり教えてもらったものなんだから。知ってるのも教えてくれたメラゴーストだけだろう、ただ。

 

「っ、まさかディーノまでこれを」

「え」

 

 バランはまるで他に誰かが使ったのを見たかのような口ぶりで背の剣に手をかけた。

 




バラン、うっかりやらかす。

次回、五話「久しぶりの気がする外出」に続くメラ。
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