ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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七話「代価を払って」

 

『杖に気をとられてうやむやになってくれたら』

 

 そんな願いは儚く散り。今、俺は地面に横たわっていた。

 

『う、ぐ』

 

 全身が痛い。分体達は容赦なく俺を袋叩きにして、その結果が現状である。

 

(あいつら、本当に容赦なかった……)

 

 にもかかわらず、俺をボコボコにしたのは、分体の一部でしかないという悪夢。つまり、他の分体と出会えばそいつらも似た行動をとるかもしれず。

 

「で、Aが勝手に魔王軍入りした件ですが、どうしましょうか?」

「それだな……」

 

 加害者達は俺を放置して真剣な表情で話し合っていた。背を向ける形なので、俺が知覚できるのは音声のみだが、モシャスがまだ解けていないせいで、師匠の言を受けてハドラーが唸るというシュールな光景がそちらでは繰り広げられているらしい。

 

「まず、魔王軍を抜けさせるのは悪手だな」

「大魔王を怒らせるのは拙いからな。となるとAは大魔王のところに送り返すことになる訳だが、知らない間にバランに勝つ程パワーアップしてたAを魔王軍に戻すと戦力バランスが大きく魔王軍に傾く」

「だね。にもかかわらずAって俺達の何人かに部下として魔王軍入りしろとか寝言を言う訳だけど」

 

 寒気を覚えそうな冷たいマァムの声色で分体の一人がもう何発か殴っとく、と聞き。

 

「いや、こいつを殴りたい俺は他にも居るんだから、俺達だけがこれ以上うっぷん晴らしするってのもな」

「あー。それもそうか。偽マァムの魔法力も有限だもんね。回復呪文かけられなくなったら、他の俺が話を聞きつけてやって来ても回復待ちしなきゃいけないか」

「ああ。で、その寝言だけどどうする? 魔王軍の本拠地を歩き回れるってのは結構大きいし、働きによってはAみたいにロン・ベルク作の装備が手に入る可能性もある訳だが……」

 

 話が俺を殴るかどうかから俺の要請の内容に移ったことで少しだけほっとしつつ、俺は横たわったまま話し合いに耳を傾ける。

 

「ロン・ベルクの武器か。まぁ、ロン・ベルクの作に限らず、原作のダイ達ってゲームならまずやるであろうお宝漁りを全くせずただ大魔王を討つ為だけにバーンパレスに乗りこんで行ったからな。原作に出てきてない宝物庫とかに凄いお宝があるってことは十分考えられる」

「あー、それはあるかもな。って、ここで物欲に靡くようじゃこれ以上Aを殴れねえ。我慢だ、我慢するんだおれッ!」

「とりあえず、そこのくねくねしてるポップもどきは放置するとして。Aの言ってたバランに見せる大魔王の背信の証拠探しについてはやるなら相応に人手が必要なのは確かと言うか……Aが勝手にバランに話をつけちゃったから、これ今更投げ出すわけにもいかない感じだよね?」

 

 Aが勝手にのくんだりで刺すような視線を感じたが、まあ勝手に話をつけたというのは事実なので何も言えず。言ったが最後、また袋叩きに遭うことぐらいはいくら俺でもわかっている。

 

「そうですね。しかし、こう、姿が変わってるのに口調が素のままだと一部の方は違和感がベリーハンパないと言いますか……」

「いや、おれは被らないの優先したからザボエラなのであって、『キィーッヒッヒッヒ』とか笑いたいわけじゃないし」

 

 故に話が脱線してもツッコミを入れるわけにもいかず。

 

「だーっ! そこ、脱線してんじゃねえ!」

「その通りだ。Aの話ではバランをダイ達に嗾けたらしいしな。万が一にそなえてオレ達の何人かはテランに向かった方がいいかもしれん」

「まあ、Aと違ってバランがポカするたあ思えねえがよ、俺もそこのワニ公……メラゴダインにゃ賛成だ」

「誰がメラゴダインだ!」

 

 偽ポップの指摘に頷いたメラゴダインの言に同意しつつ弄ったのは、声からすると偽フレイザードと言ったところか。

 

「おまえ達、コントなら他所でやれ。それで、テランには誰が行く? こうなってしまってはAにも何人か同行せざるを得んだろうが」

「んー、難しいところだよなぁ」

 

 偽ヒュンケルの声に偽ダイが唸って。

 

「……なぁ、だったら今の姿で割り振らねえか? 勇者一行に化けてるメンツがテランに行って、魔王軍の奴らに変身してる奴らがAについてく。あ、メラゴダインと偽ンケルについては当人の判断に任せる感じな」

 

 提案したのは偽ポップだった。

 

「むぅ、今から話し合いで決めてはさらに時間がかかるということか。一理あるな。オレはそれでいい」

「他の奴らにも知らせないといけないし時間も有限か。オレもそれでいいぜ」

 

 殴られるという代償を払った甲斐はあったのだろう。こうして何人かの分体が俺についてきてくれることが決まり。

 

(一件落着って言いたいとこだけど、これバーンパレスに戻る組とテランに向かう組で別れる感じの話の流れになってるよね)

 

 このままバランの様子を見に行けなくなったことに気が付いたときにはもう遅く、加えて今の俺に発言権などあろうはずもない。

 

「A、ルーラを。魔王軍の本拠地に向かえるのはAだけなのだからな」

「カーッカッカッ、紹介の方もたのむぜ」

「はぁ……モシャスが解けたらね」

 

 流石にハドラーとかの格好の分体達をそのままバーンパレスに連れていけるはずもない。嘆息しつつ応じると、俺は変身呪文の効果時間が切れるのを待つのだった。

 




何このカオス。

次回、番外27「抜かれた剣(ポップ視点)」に続くメラ。
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