ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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八話「ただいま」

 

『物事って予定通りに行くとは限らない訳だけどさ』

 

 一応、分体達に協力をとりつけて連れてくることはできたのだ。全くの失敗ではないし、文官を助けるべき人材や直属の部下を確保するという目的については達成できているのだが、死の大地に瞬間移動呪文で降り立った俺の口からため息が出ることは防げなかった。

 

『どうしたトゥース様?』

『トゥース様が進んでくれないと俺らどっち行っていいのかわからないんだけど』

 

 一応、俺の部下と言う名目なので、様付で魔軍司令としての名を呼んでくれてはいるが、どうも何だか馬鹿にされてるような気がしてならず。

 

『はぁ』

 

 もう一度ため息をついて俺は帰還用に唯一知らされたバーンパレスの入り口に向かう。当然原作で海中に有った正式な入り口ではなく、裏口に当たる場所で原作にも登場しなかった場所だ。

 

『ルーラじゃ、飛べるのはこの死の大地の外側までだもんな』

 

 直接ルーラで乗りこめないような構造だが、合流呪文が使えればあっさり内部にテレポート出来るため、魔王軍の幹部が不便を感じることはないのだと思う。

 

『リリルーラ、か』

 

 魔軍司令と言う立場を貰ってるし、移動に不便だからと訴えれば頼めば契約させてもらえそうな気もするのだが、問題はこの呪文が味方と合流する呪文なのだ。逆に言うと合流したい相手を味方と認めて居なければ相手の元に移動できない可能性がある。合流できなくて実は大魔王に従う気なんてありませんでしたとバレたら目も当てられない。

 

『うーん』

 

 バーンパレスに分体を一人確実に置いて、その俺を目印にすればいいのかもしれないが、もし魔王軍の誰かが俺を呼んでいて、リリルーラでこっちに来てくれなんて言われる状況になることもバーンパレスの広さを鑑みればあっても不思議はない。

 

『当面は後回しでいいか』

 

 そんなことよりまずは文官達との顔合わせだ。人員が増えると聞けば、あの文官達だって喜んでくれる筈で。

 

「は? メラゴースト?」

 

 期待しつつパレスの中を進み、文官達の仕事場にたどり着いた俺を待っていたのは、何考えてるんだコイツと言わんがばかりの視線だった。

 

「魔軍司令閣下、こんなことは百も承知でしょうが、ここは書類を扱う場所です。火の元連れてきてどうするんですか! 書類が燃えるでしょうに!」

『ああ』

 

 とても好意的とは思えない視線の理由は、火気厳禁の場所に人魂を連れてきたことへの落胆と呆れだったらしい。

 

『それなら、問題ない』

『『モシャス』』

 

 俺が振り返れば、意図を察した分体達は一斉に変身呪文を唱え。

 

「な」

『こうしておまえ達に変身すれば書類も燃えない。まあ、モシャスしなおすための部屋は要るだろうが、メラゴーストだからな。分裂することで足りなければ人手もさらに増やすことが』

「し、失礼しましたっ!」

 

 出来る、と続けるつもりの俺の前で文官の一人が深々と頭を下げ。

 

「浅慮をお許しください。私、魔軍司令閣下に一生ついていきます」

「僕もです。無限の人員、なんて素晴らしい! 魔軍司令閣下万歳! トゥース様万歳!」

「うおおおっ、帰れる! 魔界に帰れるっ! ありがとうトゥース様っ!」

 

 手のひら返しがすごいというべきか何と言うべきか。居合わせた文官達は一人の例外もなく俺に忠誠を誓い。

 

『えーと』

 

 いいのかなと少しだけ思う。俺を崇拝せんがばかりに見る文官の中にザボエラの配下らしき術士系のモンスターが散見されたのだ。まあ、上司がわが身本位で人格的に問題しかないことを鑑みれば、ここで乗り換えようと思ったとしても不思議はないのだけれど。

 

『とりあえず、そう言う訳だから分裂して彼らを手伝ってもらえる?』

「わかりました」

「あー、うん。ちょっとだけ気の毒になったし、了解」

 

 俺が要請すると連れてきた分体の二人が頷き。

 

『悪いけどバーンさまにも紹介しないといけないから全員は置いてけない。この二人に増えてもらうから、仕事の方はこの二人と相談して進めていってくれるかな?』

「はっ」

「承知いたしました」

 

 すぐさま応じた文官二人に後は頼むよと言い残し、俺は残りの分体を連れてその場を後にする。

 

『けど、いつ気づくかな?』

 

 俺の分体は未だ合体能力の方も有している。故に、他の分体の経験や記憶を合体を介して吸い上げ自分のモノにできるのだ。僧侶や武闘家の修行をさせた個体を合体させてスーパーメラゴーストを作ろうとしたのと同じ要領で、どんな書類仕事もこなせるスーパー文官メラゴーストを誕生させることが理論上可能なのだ。

 

『まあ、気づいたころには仕事も楽に片付くようになってるよね』

 

 彼らがダイ達と敵対してる陣営にあることを考えると、良いこととは言えないようにも思えるかもしれないが、俺が魔王軍を裏で支える場所を掌握してしまうのだとすれば、そうでもない。先に文官が言っていたように俺達は火の元でもあるのだ。例えば、魔王軍を支えるのに必要な重要書類が全て灰になったら。

 

『例外もあるけど、生き物は食物を必要とするから、補給とか兵站ってバカにできないし……ちゃんと支えてあげないと』

 

 表向きは彼らを案じることを口にしながら俺はパレスを行く。報告の為、大魔王の元へと。

 




次回、九話「その名は鏡面衆」に続くメラ。
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