ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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九話「その名は鏡面衆」

 

『ただいま戻りました』

 

 謁見の間にたどり着いた俺は、薄布の向こうにバーンが出て来てからそう告げると自身の分体を数人直属の部下として連れ帰ったことを報告する。

 

「ぶっ、分体」

『うん。そうだけど、何か疑問でもあるのかい? あ』

 

 ただ、俺の分体だと告げたあたりでハドラーが声を上げたので問い返し、一瞬遅れて取り乱した理由に俺は気づく。

 

「そっか……えっと、ごめん」

 

 ハドラーは俺の呪文で脇腹に大穴を開けられたことがあるのだ。そんな俺の分体が複数ともなれば、その反応も無理はない。だから俺は頭を下げ。

 

『けど、バーンさまには紹介しておかないといけないから』

 

 それでも断りを入れ、ちらりと大魔王の方を窺い。

 

「許す。余もおまえの分体ともなれば興味がある」

『ありがとうございます。ええと、入ってきていいって』

 

 薄布の向こうで大魔王が頷くのを確認してから俺は部屋の入り口で待たせていた分体達に声をかける。

 

『『はっ、失礼します』』

 

 元俺であるからか、声を揃えふよふよとわずかに浮きながら入ってきたのは三人のメラゴースト。

 

「ぬうっ」

「ほ、本当にメラゴーストじゃ……いや、トゥースさまのお言葉を疑ったわけではないが」

 

 苦い記憶でも頭によぎったのかハドラーが顔をこわばらせ、驚きを顔に浮かべたザボエラが弁解めいた言葉を続ける。

 

『まあ、メラゴーストが戦力として役に立つのかを疑うのは仕方ないよね。だけど』

『『モシャス!』』

 

 ザボエラの言を受ける形で俺が視線をやれば、メラゴースト達は一斉に変身呪文を唱え、ぽふんと生じた煙に包まれた。

 

「な」

「あ、ああああっ?!」

 

 目を見張るハドラー、仰け反るザボエラ。薄れゆく煙の中に浮かび上がるシルエットでおおよそ察したのであろう。

 

「明るく卑怯にえげつなく……シロコダイン!」

 

 拳を天に突きあげポーズをとるのはクロコダインそっくりに変身した一人。

 

「語尾の『にゅん』はチャームポイント、ニュンケル、にゅん!」

 

 ほっぺに一本立てた人差し指を当て首を傾げたのは、ヒュンケルそっくりに変身した固体、っていうか何てポーズさせてんだ、おまえは。

 

「カーッカッカッカ! ハードなプレイが大好物、プレイハード!」

 

 最後に哄笑をあげたフレイザードそっくりに変身した一人もポーズを決め。

 

「「我ら、トゥース様直属部隊――鏡面衆!!!」にゅん」

 

 三人声を重ね、いや一人語尾を忠実に守ってるせいで重なり切らなかったというか、何と言うか。

 

「ふ、ふざけるな! なんだ貴様らは!!」

 

 地獄の様な沈黙を破ったのは激昂したハドラーの怒声だった。まあ、無理もないと思う。と言うか、俺もコレは知らされておらず、今、壮絶に遠くを見ているわけだが。

 

「鏡面衆、モシャスを用い、戦況に応じて必要な戦力を臨機応変に用意し支えるトゥース様配下のメラゴーストだ」

「今回はわかりやすいように欠けてる軍団長を選んでみたッて訳ですぜ」

 

 いや、わざわざ離反したり死亡した軍団長をチョイスした意図は解かる。解かるが、ハドラーが言いたいのはそう言うことではないだろう。

 

「失礼を」

「……許す」

 

 それでも流石にこれはないんじゃないかと大魔王に謝罪するが、あっさり許され。

 

「そのふざけた挙動、それは本来の三人とは違うということを余らに見せるためのものであろう」

「ご明察恐れ入ります。我ら、姿と能力は写し取りこそすれ、中身は別物。よって、オリジナル同士のそりが合わず共同作戦に向かなかった軍団長同士の共闘と言った、本人ではありえない行動を可能としているところが売りの一つでもあります」

 

 頭を下げたシロコダインとやらが視線で促すと、ヒュンケルとフレイザードのそっくりさんが頷き合って手を握り。

 

「冷たっ」

 

 その直後にヒュンケルのそっくりさんの方が手を離して飛びあがる。まあ、鎧来てないヒュンケルの身体でフレイザードの氷の手に触れれば当然なのだろうが。

 

「あ、悪ぃ」

「だ、大丈夫にょん。だって――」

 

 空気が凍る中、ニュンケルとやらは二人は仲良しだからと主張し。

 

「こ、こやつら、黙ってみておればふざけにふざけ」

「良いではないか、ハドラー」

 

 ブチ切れて飛びかからんがばかりのハドラーを声で制したのはバーンだった。

 

「は? ですが」

「考えても見よ、軍団長の半数が欠け減退していた我が軍の戦力があっと言う間に埋まったのだぞ」

「あ」

 

 大魔王の指摘に今ようやく思い至ったと言う様にハドラーが声とともに顔を上げ。

 

「おまえはこの者達の表面に気をとられ、その本質を理解していなかった。この者達はメラゴースト。つまり、軍団長に匹敵する力を持ちながら、分裂して数が増やせるのだ」

「まさ」

「そうだな、トゥースよ」

 

 やはり大魔王はあっさり一番重要な部分に気が付いたらしい。指摘され、それでも信じたくないのか油の切れたブリキ人形の様にぎこちない動きでハドラーがこちらを見てくるが、流石に大魔王の前で嘘は言えない。

 

「はい。とはいっても分裂できるかは運次第ですけど」

「よい。欠けた軍団長を埋める逸材が余の部下に加わっただけでも評価するには充分。それに分裂したおまえの部下だけで全てを終わらせてしまってはハドラーも面白くなかろう」

「え」

 

 当面は今の数のままで良いと言われた俺は、文官側に派遣した面々を既に増やし始めたことをどう説明しようかと胸中で頭を抱えるのだった。

 




鏡面衆、彼らに酷いは褒め言葉。

次回、番外29「バラン、去る(ポップ視点)」に続くメラ。
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