ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「あー、あー、ハァイ♪ あなたが噂の勇者ダイちゃんね」
そしてバランのフリは拙いと最終的に判断した俺が選んだのは、新魔軍司令と言う肩書のおネェきゃらであった。発声練習からそれっぽいキャラづくりに続けてみるも、うん。
「不評だったら次は別のキャラで行こうかしらぁん。こう、百の表情をもつ魔軍司令的な感じで――」
壊されたら仮面をつけかえてく死神だっているのだ。魔軍司令がキャラを変えていったって問題はないだろう、たぶん。
「うふふ、このキャラを気にいってくれるといいけどぉ、勇者ダイちゃん」
『我がオリジナルながらどうしてそうなったってツッコミを入れたいがな、俺は』
分体の無粋な発言が聞こえた気もするが、そこはスルーだ。
「何言ってるのよぉん? ダイちゃんの代わりに戦うの貴方なんでしょぉん」
『うぐっ』
ようやく気が付いたのか強張った顔をする分体に俺は笑顔で親指を立てる。
「発案者のおまえには付き合ってもらうぞ、ある意味地獄の底までな」
『いや、どういう地獄だ!?』
悪ノリと言うか現実逃避と言うか。いずれにしても賽は投げられて。
「貴方以外との戦闘はめんどくさそうだからぁん、合図はそっちでお願いねぇん。特にマトリフとの戦闘は嫌。下手したら死ぬ」
『っ、俺が単独でいるところに遭遇、ダイ達が駆けつけて来たら顔見世だけして撤退するってことだな』
「そうそう♪ 修行中の遭遇とかがベストねぇん。ブラッディスクライドをぶっ放してくれれば目印になるかしらぁん?」
『いや、先日それはダイも使っていたからな。むしろ見通しの良い場所で――』
湖に向かってアバンストラッシュの練習をするというので、それを目印にすることとし、俺達は一旦別れた。
◇◆◇
「さてと、後は行き違いになった分体ちゃん達が戻ってこないかも気になるところだけどぉん」
とりあえず、さっきの偽ヒュンケルとのやらせ戦闘をする前に、複数のケースを想定しておく。
「ケース1、予定通りで誰も来ない」
これが一番ベストな展開だが、まぁ楽観視するのは危険だろう。
「ケース2、バラン来訪」
今の俺もバランにモシャスしてるので、これに関しては竜の紋章の波長会話で現状を伝え、一度一緒に撤退してもらって作戦会議すればいいから問題はない。
「ケース3、ハドラーとバラン来訪」
三つ巴の可能性もあり、爆弾内包したハドラーの処置がメンドクサイと言う意味でも一番厄介なケースに近いのがこれだろう。
「これの派生で、ケース3´なんてのも考えられるのよねぇん。ダイちゃん達の本体にハドラーが襲来して、アタシと偽ヒュンケルの戦いの方にバランが来るとか」
逆にこっちにハドラーが来るパターンも可能性の上ではあるが、こっちで戦ってるのがヒュンケルだけだと見たならハドラーはダイ達の方に向かう筈だ。ハドラーが一番避けたいのは、バランがダイを仲間に引き込むか倒して手柄を上げることだろうから。もっとも、こっちに来たのがバランであれば紋章の内緒話で戦わずに済ませることが可能なので、その場合の危険はバランへの事情説明が終わる前にハドラーが爆発するという事態ぐらいだ。
「で、ケース4がハドラー来訪ねぇん」
これに関してはハドラーの暴走と言う形なので、俺が出ていって咎めた上で、今はバランに任せているから退けとでも言えばいい。逆らうなら戦うことも視野に入れるが。
「その前にミストバーンかキルバーンが来るかしらぁん」
ハドラーが暴走したとなれば、充分あると思う。
「問題はその上でミストバーンがバーンさまのお言葉を持ってきたケースよねぇん『ここはハドラーに任せよ』って」
ダイ説得の可能性が残されてるかもしれない段階でハドラーの保身を優先するような決定を大魔王がするとは思えないが、想定外の事態にテンパる俺としては一応、考えておくべきだろう。
「うーん」
もしミストバーンがハドラーの黒の核晶を爆発させるつもりなら、俺はこれを防いで魔王軍から離反する。一緒に爆破しようとするなら離反したって当然だし、ミストバーンが俺を退避させようとした場合はハドラーを見捨てる気なのかと聞き、退避を拒否すればいい。
「よし、とりあえず想定されるケースはそんなところよねぇん」
おおよその可能性を考慮し終えた俺は偽ヒュンケルの合図を待ち。
「あ、あれね」
湖面を斬り裂きあがる水しぶきを確認したのは、暫く後のこと。
「ハァイ♪ あなたが裏切り者のヒュンケルちゃんね?」
「悪いな、生憎偽物だ」
湖を回りこむようにして偽ヒュンケルの元にたどりつけば。分体は不適に笑んで身構える。
「俺の本物を裏切者と言うからには、おまえは魔王軍だな?」
「ええ。新魔軍司令でトゥースって言うのぉん♪ 短い間でしょうけど、覚えておいてねぇん♪」
お道化つつ俺は両手で印を組むと、挨拶代わりに呪文を唱える。
「ベギラゴぉン♪」
「アバン流刀殺法、海破斬ッ!」
放たれた極大の閃熱を偽ヒュンケルはあっさり両断して見せ。
「まあ、挨拶代わりなら」
「おい! 何だ今のっ?!」
当然よねと続ける前に、忙しい足音と共に現れた人物が絶句する。
「「な」」
奇しくも驚きの声が被るあたり、偽ヒュンケルにも想定外だったのだろう。想像より早いタイミングで、見る限りポップだけが現場に来ちゃったのだった。
バランだと思った? 残念ポップ君でした。
次回、番外31「新しい敵(ポップ視点)」に続くメラ。