ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「それじゃ行こっか」
死にかねないから相手をするのは嫌と言って舌先が乾かぬうちにマトリフの相手を買って出る形になったが、現状やむを得ないと俺は胸中で自己弁護しつつバランに声をかけた。
「さっきのベギラゴンでダイ達は集まってきてるはず。ほぼ間違いなく多対一の戦いになるよ?」
多対二としないのは、原作であればイレギュラーとなるマトリフと分体のうちマトリフだけを受け持つと宣言したからであり。同時に原作知識で知っている側近三人は使わないのかと言う遠回しな問いでもあった。
「前に戦ったままなら、問題はない」
「そう」
答えるバランに応じつつ、そう言えばとこの世界での一戦目の経緯を思い出す。原作と違い、バランが手加減していた上に早々に切り上げたことで、バランがダメージを負う事態が発生していなかったことを。そりゃ、ダイ達の評価が下方修正される筈だと密かに納得し。
「ならどこまでやるかを含めてバランに任せるよ。戦いが終わったとか、今回はこの辺りにして離脱するって時は一声かけてね? おれ、元々後衛だから集団に袋叩きにされるのは勘弁してもらいたいし」
「ふっ、私に勝った身で良く言う。だが、承知した」
軽口を交わしつつ来た道を戻る途中で一度だけ足を止めてモシャスをかけなおしたが、それ以外に立ち止まる理由もなく。
「ハァイ♪ お待たせぇ……って、アラ。全員集合って感じねぇん」
先の戦場にたどり着けば、ポップと分体は当然として、ダイとレオナ姫、そしてクロコダインに大魔導士マトリフが居て、更に少し離れた場所には占い師の老婆とその見習いの少女の姿までがあった。
「あ、あいつだ! ダイ、アレが新魔軍司令のトゥースって奴だ!」
「あいつが……」
指さすポップをちらりと見てからダイがこちらに視線を向け。
「あらぁん、覚えてくれたのね、嬉しいわぁん♪ け・ど、今日ダイちゃん達が戦うのはこっちのバラン殿だからお間違えなくぅ?」
「だっ、ダイちゃん?!」
俺の呼び方にダイが面食らったような顔をするも、そう言うキャラなのでご容赦願いたいと声に出さず弁解の言葉を紡ぐ。
「あ、ただしぃ、そっちのおじいちゃんだけはアタシの相手をして貰おうかしらぁん?」
「ほう、オレをご指名たぁね」
「だって貴方、人間界最強の大魔導士なんでしょぉん?」
微かに眉を動かしたマトリフに確認の形の問いを投げ、だから色々興味があるのよぉと続ける。
「興味、ねぇ」
「ホラ、アタシも呪文の使い手として、種族問わず熟練者の技とかッて参考になるしぃ、後学の為にいろいろ見ておきたいって思っても不思議はないじゃない?」
「はっ、勉強熱心なことだ。そこの弟子にも爪の垢を煎じて飲ませてえくらいだぜ」
「アラ、ありがと♪」
軽口を叩き合ってみるが、対峙してみてよくわかる。隙が無かった。言葉を交わしつつ仕掛けるタイミングを計っていることが強敵との戦いを経てきたことで、俺にもわかる、だから。
「褒めてくれたお礼って訳じゃないけど、このまま見つめ合ってるだけでもアタシは構わないわよぉん? そのお年で戦いはきつイでしょん?」
「はっ、安っちい挑発だな」
「んー、そうじゃなくて割と本気の提案なんだけどぉ。アタシ、今回の戦いバラン殿に一任してるから、おじいちゃんがあっちに加わらないなら、別に手出しするつもりもないのよねぇん」
鼻で笑われてもとり合わず、見てるだけならこっちもらくで良いしぃと続け。
「そっか」
「アラ、わかってくれた?」
「いんや、つまり……オレとは戦いたくねえってことだろ? そこまで評価してもらって棒立ちしてんのは男がすたるってもんだ」
「え゛」
ニヤリと笑うマトリフを見て、俺は失敗を悟る。そう言えばこの老人、サディストだった。こっちが戦いを避けようなんてすれば、乗じてくるのは当然で。
「さてと、メラ系の呪文は効果がねえってあいつは言ってたな……」
「わお、きっちり報告されてるとか」
俺が引きつった笑みを浮かべて半歩退く間に、空に向けたマトリフの左右の掌に光球が生じる。
「いっ」
「正解だよ、喰らいな」
極大呪文は両手が必要となれば、あれはイオラだろうと当たりをつければ、マトリフはそれらを容赦なく投げてきて。
「爆発オチなんて最低―ッ!」
叫ぶ俺は呪文の直撃で爆炎に包まれた、もっとも。
「……なーんちゃって」
「ちっ、イオラも効かねえのか」
衣の魔杖と竜闘気の呪文耐性は伊達ではなく、お道化つつも俺は距離を詰める。遠距離は拙い。マトリフ最強の呪文である極大消滅呪文だけは使わせるわけにはいかなかった。
「瞬間移動呪文!」
「っ」
距離を詰めてつかまえたと言いたいところだったが、近接戦闘の間合いに入るよりも早くマトリフはルーラを用いて距離をとり。
「仕方ないわねぇん、お返しよぉん」
今度はこちらから二発のイオラを放つ。
「師匠っ!」
「黙ってろ! イオラッ!」
どこかから聞こえるポップの叫び声を一喝したマトリフは俺のイオラを自身のそれで相殺し。
「あー、まぁ、そうなるわよねぇん。本当に厄介だわぁん」
「そりゃ、こっちのセリフだ」
顔の半分を掌で覆って嘆いたふりをすれば、すぐさま反論されるのだった。
何で私はマトリフと主人公のバトルなんて書いてるんでしょうね。
次回、十六話「舐めプの代償」に続くメラ。