ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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今話はちょっと短めです。


十六話「舐めプの代償」

 

「もうっ、参ったわねぇん」

 

 大魔導士と言えど、相手はスタミナに難のある老人。普通に考えれば長期戦に持ち込むのが好ましいのだが、ここまでにモシャスや透明化呪文そして二発の極大閃熱呪文といろいろ使って結構魔法力を消費してる俺の方も実を言うと長期戦は拙かったりするのだ。その辺りまでマトリフが見抜いてるかどうかはわからないのだが。

 

「ふ~ん、参った? どうした降参か?」

「そう言う意味で言ったわけじゃないわぁん。そも、こっちは有効打一発も喰らってないでしょ?」

 

 それを言うならマトリフの方もそうではあるのだが、俺には二重の呪文に関する備えがある。原作知識を照らし合わせれば、警戒すべき呪文は一つだけ。なら、守勢に回って魔法力を温存するのも一つの手ではあるのだが。

 

「確かにな。だが、読めたぜ、てめえの正体」

「え゛」

 

 マトリフの口から飛び出してきた言葉は、思わず固まってしまうほどに予想外過ぎた。

 

「そいつの正体ぃ?!」

「よそ見してんじゃねえ、バカ弟子!」

「へ? うわあっ」

 

 離れた方からポップの驚きの声が聞こえたかと思えば、マトリフの叱責の後に悲鳴が上がった。こちらに気をとられてそこをバランにつかれ攻撃でもされたんだろうか。無事だといいけど、今はそれどころじゃない。

 

「や、やぁねぇん。不用意なことを言うからお弟子さんがピンチじゃないの」

「声が震えてんぞ。しっかし、ホンの一言でここまで動揺するたぁな。どうやらオレの読みもあながち外れじゃねえらしい」

「うぐっ」

 

 マトリフにニヤリと笑われて薄布の奥にある俺の顔が引きつる。ヤバい。けど、どこで、どこまで感づかれたかが俺にはわからない。

 

「呪文が効かねえ理由についてオレなりに考えてみたのよ。最初はそのローブが呪文を防いでんじゃねえかって思ったわけだ。元魔王軍に居た奴が呪文の効かない鎧ってのをつけてたからな」

「だ、だったら、このローブもそういうモノかもしれないじゃない?」

「まあな。だからカマをかけたのよ。正体って単語で動揺するかどうかってな」

「あ゛」

 

 わざわざご丁寧に指摘されて俺は自分の失敗に気付かされた。

 

「身長に声色……二人並んで出てきたのは失敗だったな。竜闘気って言ったか? そいつの効果は弟子に聞いてらぁ。わざわざナヨナヨしたモノ言いしてはいるが、その声音はあっちのバランって奴と変わらねえ」

「うっ」

 

 気付いている。この大魔導士、俺がバランにモシャスしてることをあっさり見抜いているッ。どうすればいい、このままでは。

 

「つまり、てめえが本物のバランだ」

「えっ」

 

 焦りに焦っていた俺の目は点になった。

 

「ありゃ? 良い線行ってると思ったんだがな」

「ええーっと」

 

 ポリポリ頬をかいて目をそらす大魔導士に俺がなんと言おうか言葉に迷っていた時だった。

 

「ぐおおおっ」

「え」

 

 俺は目の前を通り過ぎて言ったモノを目で追ってから、二度見した。

 

「ばっ、バラン?!」

 

 それはどう見てもダイ達の相手を任せた男であり。

 

「ぐ、ぬう」

 

 起き上がるバランの頭部からは血が流れ顔を汚していた。

 

「えっ、あ」

 

 何故と考えて、すぐ思い至った。原作の一戦目でもバランはダイとクロコダインの同時攻撃で手傷を負ったのだ。そこに今回は俺の分体が居る上、原作では手を出すなとクロコダインに言われて加勢してなかったポップまで何らかの形で攻撃に加わったのではないだろうか。しかも、バランとの戦いはこれで二度目。短いながらも先の戦いの経験を生かし勇者一行が来る再戦に向けてパワーアップを図っていたとしたら。

 

「代償か……」

 

 ダイ達を甘く見て、殺したり大けがを負わせないように加減していたバランの所謂舐めプによる代償があの負傷なのだろう。

 

「大丈夫かしらぁん、バラン殿? どうする、まだ続ける?」

「無論だ。些少傷を負っただけで引き下がるつもりなど私には無い」

「そ、そう」

 

 正体が云々と言われてる今、乗じて逃げられるかと思ったがバランはまだやる気の様であり。

 

「もうっ、参ったわねぇん」

 

 ため息と共にさっきと同じ言葉が俺の口から洩れたのだった。

 




次回、十七話「知らなかったのか、逃げたい時ほど割と逃げられない」に続くメラ。
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