ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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十七話「知らなかったのか、逃げたい時ほどと逃げられない」

「とりあえず、場所を移しましょ?」

 

 ここでマトリフに推理の続きをされるのもありがたくないが、バランが飛んできたということは戦場が思った以上にこっちに近づいてきていたということでもある。

 

「バラン殿は呪文が効かないけど、そっちのお弟子さんはそうでもないでしょぉん? 呪文合戦に巻きこんじゃったら問題なのはそっちだけだけど、こっちも横槍入れたって非難されるかもしれないしぃ」

 

 こっちがダイ達を捲き込むことを厭う理由をでっち上げつつ尋ねれば、短い思考の時間を挟んで良いぜと言う返事が大魔導士から返ってきて、俺は密かにほっとする。

 

「おっけー♪ それじゃ、向こうに行きましょ」

 

 言いつつ示すのは、今いる場所よりも湖や民家から離れた場所だ。それでいてきっちりバランやダイ達の戦いが確認できるぐらいには離れていない場所をチョイスし、歩き出しながらこのあとバランがどう動くかを考える。原作なら、仲間との結束が厄介だと見て、竜の紋章の共鳴を利用してダイの記憶を奪ったはずだが。

 

「あ」

 

 そこで、ようやく気づく。もしあのバランにその気が有ったとしても、今ここにはその共鳴の影響を受けてしまうかもしれない者が他にもいることに。そう、俺だ。

 

「どうしたよ?」

「何でもないわ、こっちのことよ」

 

 唐突に声を漏らした俺をマトリフが訝しむも、そもそもバランが記憶抹消を試みなければいいだけの話であり。問題はそんなことより、この戦いをどう持って行くかだろう。撤退はバランの判断次第だから、あちらが戦いを切り上げるまでは目の前の大魔導士を押さえておく必要があり、その上でかけなおすモシャスや離脱の為のルーラ分の魔法力は残しておかないといけないのだ。いくらA5と俺で今の俺が二人分の魔法力を有していると言えど魔法力は無限じゃない。

 

「さてと、はじめましょうか。んー、魔法使い的には邪道だけどぉ」

 

 作戦を呪文節約とするなら、バランの身体能力を生かして肉弾戦を挑むべきだ。杖には申し訳ないと思いつつも、俺は空の手を握り固め、地を蹴った。

 

「でやあっ」

「おっと」

 

 竜の騎士の身体能力ならば当たると踏んだパンチが、それまでマトリフが居た場所を貫く。

 

「流石にそう簡単に当たってはくれないのねぇ」

「当然だぜ。いつもは後ろにいるからって敵が斬り込んでくることなんざ往々にある」

「まぁ、確かに厄介な奴から先に片付けるってのは結構な人が思うことよねぇん。そんなとき、一撃で倒されてたら話にならない、ってことかしら?」

 

 俺もゲームでは嫌な特殊攻撃だとか蘇生呪文だとか持ってるモンスターはだいたい真っ先に潰していたので、おそらく口にした例に俺自身も入るとは思う。ただ、現実にはこうしてあっさり無力化されてくれない相手が居るのだ。

 

「正解って言っといてやるよ。ただ、てめえにとっちゃ、オレが厄介だから隔離したんだろうが、そいつあ失敗だったな」

「あら? 失敗? まあ確かにこっちの呪文に巻き込むことのまずさ加減ではそちらの方が上だったでしょうし、貴方にとって都合のいいことになったのは確かよねぇん」

 

 首を傾げて見せつつも、その失敗に嫌な心当たりのあった俺は炎の闘気の方で念の為に呪文を唱え始める。敵味方共に味方を巻き込まずに済むという状況でこの大魔導士に一番されたくないことと言ったら、衣の魔杖でも竜闘気でも防げない呪文を当てられることに他ならないのだから。

 

「ただ、アタシもまだダイちゃんやバラン殿だけじゃなくてバーンさまにも見せてない奥の手ってのがあるのよねぇん」

 

 ブラフではなく事実を口にし、俺はマトリフをけん制する。この状況をあくまの目玉にでも見られていようものなら、マトリフと後のポップの最強呪文がこの時点で魔王軍に知られてしまうからだ、だから。

 

「マホカンタって知ってるかしら?」

「っ」

 

 俺の独言にマトリフの肩がピクリと震えた。

 

「てめえ」

「意趣返しって訳じゃないけれど、おじいちゃんの抑えを買って出たのも勝算あってのことなのよねぇ。本当なら使えることは伏せておいて、不意打ち気味に呪文をお返しすることもできるんだけど」

「じゃあ、なぜそうしねえ」

 

 肩をすくめた俺にマトリフが問うので、俺はご存じでしょと言った。

 

「マホカンタの呪文でどれぐらい呪文を反射できるかは、術者の技量によるって」

 

 原作では大魔王はほぼ100%の反射率を誇っているとかあった気がするが、逆に言うなら大魔王以外は確実に反射できるとは言いかねるわけで。

 

「成程な、オレの呪文を完全に返せる保証がねえから先に口にしたってわけだ」

「そうねぇん。アタシ、賭けって好きじゃないのよぉん。割とギャンブルには弱いから」

 

 あくまで防げるかどうかわからず冒険する気はないという態で話すが、実際はうっかり反射してしまってマトリフが死ぬことを避けたいから以外の理由はなかった。

 




もっと伏せておくつもりだった奥の手をばらさざるを得なくなった主人公、どうなる?

次回、十八話「奴が来る」に続くメラ。
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