ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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十八話「奴が来る」

「そこまでだ!」

 

 唐突に第三者の声がしたのは、俺の牽制によってマトリフの動きが止まってすぐのことだった。

 

「今バランって口にしたよな?」

 

 現れた男はそう俺に問うてきた、頭には槌頭の合体した兜と言うネタ装備を装着して。

 

「だれだてめえは?」

「ああ、俺か。俺はマイボ、アルキードのどたまかなづち使い、マイボだ!」

 

 唐突な乱入者にマトリフが問えば、自分を示してそのオッサンは名乗る。

 

「居なくなったあいつを探してたら、前にこの辺りで戦いがあったって聞いてな。何か手がかりでもないかと思ってたら案の定って奴だな」

 

 得意げに胸を張るオッサンを見つつ、俺は胸中でどういうタイミングで出てきてんだと絶叫していた。たしかこのオッサンは俺が深手を負わせたバランを助けて改心させる一端になった男だったと思う。バランから直接聞いたわけではないけど、命の恩人であるはずだし、バランが方針変更したのもその後だから間違ってはいない筈だ。

 

「あぁ、どうしてこう」

 

 バランの恩人だから手荒なことは出来ないが、タイミングが悪すぎる。

 

「本当に、本当に不本意だけれど……一時休戦と行きましょ」

「なんだ、てめえ、こいつと知り合いか?」

「こっちにも事情があるのよ」

 

 ハドラーが乱入してくるならまだ予想の範疇だった。だが、このオッサンが現れたのは想定外。位置的にこのオッサンの漁村がテランの南西の海岸沿いにあること、バランがこのオッサンを呪文で眠らせて抜け出てきたこと、一度前にバランがこのテランで戦ってること、情報を繋ぎ合わせれば予想できていたかもしれない訳で。

 

「完全にアタシのポカよね、これ」

「おい、どうなんだ?」

 

 思わず遠い目をしてしまう俺にオッサンが再び問うてくるが。

 

「あのね、今取り込み中なの! 少なくともそっちのおじいちゃんが休戦に同意してくれなきゃ、お話するのは無理!」

「そ、そうなのか」

 

 びしっとマトリフを示すと納得した辺り、思わず素直かとツッコミたくなるが、堪えて俺もマトリフの方を見て。

 

「ちっ、しゃあねえ。まあ、休憩できるって考えりゃ悪くはねえか。ただし、そのお話とやらはオレも聞かせてもらっていいんだろうな?」

「ダメって言っても聞かないでしょ? はぁ」

 

 本当にどうしてこうなったと言いたくなるような状況だが、流石にこの上で独断専行したハドラーが襲来するみたいなカオスがカオスを呼ぶことはもうないだろう。ないと言って欲しい。

 

「それで、バランと口にしたかだったわね?」

「ああ」

「したわよ」

 

 俺はあっさり認めると、マトリフをもう一度示す。

 

「嘘は言ってないわよぉん。ここで嘘言っても真ん前で聞いてたおじいちゃんがここに居るんだもの。流石に誤魔化しようもないわ」

 

 ついでに言うなら、バランはどこかと問えば、事情を聞いたうえで納得できればマトリフはバランの居場所まで話しそうな気がする。いや、それ以前にここはバランとダイ達の戦いも見られる程度にしかもう一方の戦場とはなれていないのだ。放っておけばこのオッサンがバランに気づくのは時間の問題か。

 

「ただし、それは誰にも見せてないことがあるって話の補足で口に出しただけ、それ以上でも以下でもないし、こっちは取り込み中だったから納得したらお引き取り頂きたいんだけどぉん?」

 

 できればこれで帰ってくれるといいなとわずかな望みとともに口にしてみるも。

 

「おう、そうか邪魔したな……ってなる訳ないだろ!」

 

 返ってきたのは見事なノリツッコミ。

 

「事情はまだわかってねえが、ここはテランからそう離れてなかったはずだ! そんなところで戦わせるわけにはいかねえ!!」

「ええと、一応そのテランで戦いを始めるわけにはいかないからここまで場所を移してきたんだけど」

「え」

 

 言うべきか迷ったが、一応こっちも気を使ってますよ的なことを明かしてみれば、オッサンは驚きつつ確認するようにマトリフの方を見て。

 

「そいつは初耳だが、戦いに他者を巻き込まねえように場所を変えたってんなら確かだぜ」

 

 実際、場所を変えてここに居るのだ。マトリフもこっちを一瞥してから頷きを返し、微妙な空気が場に漂う。

 

「……なんか白けちゃったわねぇん。戦うなって言うならもうそれでもいいわよ。そっちのお爺ちゃんも戦わずにこっちに居てくれるなら」

 

 めんどくさくなった態を装って休戦の延期を俺は仄めかす。

 

「そうすればお引き取り頂けるんでしょ?」

 

 正直もう想定外はいっぱいいっぱいだったので、確認するようマイボと名乗ったオッサンに視線を向け。

 

「って、ちょ」

 

 そこで気づいた、オッサンの横方向から何かが突っ込んで来てることに。

 

「だああっ、面倒なっ! マホカンタ!」

 

 念のために待機させておいた炎の闘気の呪文で光り輝く透明な壁を前方に展開しつつ飛び出した俺はオッサンを掴むとマトリフの方に放り投げ。

 

「竜闘気全開ッ!」

 

 纏う二重の闘気を全開で防御に回しつつスカラの呪文で更に守りを高めたうえで防御態勢をとる。オッサンを投げつけられたマトリフがカエルの潰れたような声を発した気もしたが、気にしてる場合じゃない。

 

「ぐっ」

 

 直後に襲ってきたのは、二重の闘気の渦に雷を纏った斬撃の余波。

 

「ふ、ざ、けん、なぁああああっ!」

 

 その組み合わせは、どう考えてもライデインストラッシュにブラッディスクライド、そして獣王痛恨撃を合わせたモノ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、どこ狙ってんのよ、あの連中ッ!」

 

 防御重ねがけのおかげでモシャスすら解けずに済んだが、正直無茶苦茶焦った。あれがオッサンに当たってたらひとたまりもなかっただろう。

 

「う、ぐ……そうは言うがてめえも大概だな。あれを喰らって無傷とはよ」

「全力で防御したんだから当然でしょ? それぐらいできなきゃ肩書が泣くわよ」

 

 マイボの下で呻きつつマトリフが言うが、俺だって不本意だった。

 




次回、十九話「流石に怒っても許されるでしょ」に続くメラ。
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