ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「何だったんだよ、本当に」
おれ達のバランへのリベンジは、中途半端な形で終わっちまったらしい。待てと呼び止めたトゥースって奴はあのバランと一緒に瞬間移動呪文でどこかへ飛び去り、残されたのは戦いであれた周囲と傷だらけのダイ、クロコダインのおっさん、モシャスの解けたメラ公の分体とそれに魔法力が底に近いおれと姫さん。
「って、そうだ、師匠は――」
あのトゥースってやつはおれ達の攻撃に巻き込みそうになった人間を師匠に預けてきたって言ってたが、魔王軍のやつの言うことだ。おれは我に返ると急いであのトゥースってやつが歩いてきた方に走り出し。
「師匠っ! あぁっ?!」
そこで見た。パプニカの武器屋で見た変な武器を被ったオッサンに背負われてこっちに来る師匠の姿を。
「師匠、どう」
「騒ぐな、こいつの下敷きになってちょっと腰をな。大したことはねえが、こいつが背負わせてくれってうるせえんでこうなってる」
自分を背負うおっさんを示してそう説明した師匠は、それよりもとこっちに目をやってきいてきた。
「あいつらはどうしたよ?」
と。
「去ってったぜ、『戦うなら周囲のこともちょっとは考えろ』ってすごい剣幕で怒って」
「そうか。ある意味助かったのかもな」
「助かった?」
俺の話を聞いて何か考えつつ口を開いた師匠の言葉をオウム返しに問うと、師匠の口から飛び出してきたのは、驚くべき事実。
「は? ダイとメラ公の分体とクロコダインのおっさんの技を全部喰らって無傷ぅ?!」
「正確にゃ、あのバランってのを狙ったその余波なんだろ? もっとも余波で無くてもあっさり耐えたかもしれねえがな」
「師匠、それってどういう――」
尋ねるおれに師匠は語ってくれた。ダイ達の技をどう防いだのかを。
「反射呪文に竜闘気、それに炎みたいな闘気の三重の防御……」
「竜闘気ってなぁ、呪文が効かねえとバランが言ってたらしいな? だが、あいつは効かねえどころか反射して跳ね返してきやがる。加えて二重の闘気による防御だ」
すさまじい防御能力だってのは、聞いただけでもわかる。
「け、けどよ……竜闘気って、竜の騎士ってのはあのバランって奴と、例外としてのダイの二人だけなんだろ? 何で、あいつが竜闘気を使えるんだよ?」
「モシャスだ」
納得のいかねえおれに師匠が言ったのは一つの呪文の名。メラ公達が使っているからなじみ深い呪文の名だった。
「あいつは、モシャスでバランに変身した上で、何がしらかの手段を使って、その実力を更に強化してやがる。実質、パワーアップした上反射呪文が使えるバランみたいなやつだ」
「うげぇっ?!」
最初に戦った時、とんでもねえ強さだったあのバランをパワーアップさせたやつ、言われておれの顔は引きつった。二度目の戦いで修行の成果もあって、何とかダメージを負わせそれなりに追い込んだ実感はあるが、あくまでバランの場合の話だ。
「そんなやつどうやって戦やいいんだよ!?」
「はぁ、ちったあ頭を使え、バカ野郎」
思わず弱音を吐けば、呆れた様子で師匠はこっちを見ながらため息をつく。初対面のおっさんに背負われて居なければ、頭を叩かれていたかもしれねえ。
「無敵だとでも思ったか? だったら、オレはどうして無事だと思う? あいつも本気じゃなかったみてえだが、それでも申し訳程度にはやり合った」
「っ?! じゃあ、師匠はあいつとどう戦えばいいのかわかんのか!」
「さあな」
「でっ」
期待させておいてそっぽを向かれ、思わずずっこけたおれは地面に手をついて身を起こし。
「し、師匠」
「何でも聞いたら答えが返ってくると思うのは甘すぎだぜ。ちったあ頭を使えっていったばっかりだろうが」
「うぐっ」
睨みながら言ってくる言葉はもっともで、俺は何も言えず。
「今回はあっちが勝手に去ってったが、もう来ねえってこたあねえだろう。今はオレが居る、だが、オレのいねえ時にあいつらみてえな強敵と出くわしたら、そいつから聞くつもりかよ? てめえとどう戦ったらいいですか、ってな」
「っ」
返す返す言葉もなかった、が。
「もっとしっかり敵を見とけ。洞察力を鍛えろ。あいつは割と脇が甘え。カマかけたらあっさり自分から口を滑らせるような野郎だったしな」
「は?」
続けた師匠の言葉の中にあったのはとんでもねえ爆弾だった。
「口を滑らせたぁ?!」
「モシャスを使ってると確信したのもそいつが決め手だしな、ただし……この先を話すのはてめえがあいつとの戦い方ってのを考えついてからだ」
「な、なんで……」
「なんでもかんでもねえ。オレは一から十まで説明してやる程甘かあねえんだ! これ以上聞きてえなら、あいつとの戦い方について考えて来い」
それ以上取り付く島もなく、おれは胸の中をモヤモヤさせたままダイ達の元に向かって歩き出す。
「ポップ、それでマトリフさんと巻き込まれたって人は?」
ダイにそう尋ねられて慌てて師匠の下にもう一回引き返すことになったことは秘密にしておきてえ。
次回、最終話「反省会」に続くメラ。
そろそろ次の章に行くタイミングメラよ。