ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「っ、ふぅ……」
到着するなり安堵の息が漏れたのは、俺がなんやかんや言いつつも緊張していたからだと思う。敵の形でダイ達と顔合わせするのも初めてなら、できれば避けたかったはずのマトリフとの戦いもあり、加えて想定外の人物の乱入。正直お腹いっぱいだ。
「とりあえず、ダイちゃんたちが前に戦った時より強くなってるのは確かみたいねぇん。っと、もうこのキャラはいいっけ」
キャラを戻すのさえ忘れるほどに精神面で疲弊してたんだろう、俺も。
「それで、バランはどうする?」
今回は来なかったかもしれないが、ハドラーが乱入してくることも考えられるが、バランからするとあのマイボとか言うオッサンがダイ達の側にいては戦いづらいというのもあると思う。何らかの対策を用意しなければ戦うこともままならない筈だ。
「一応あの、マイボって人を参戦させない方法ならおれに心当たりはあるけど」
「なにっ?!」
視線でどうやってと問うてきたので、俺は分体を使うと答えた。
「鏡面衆って名でおれの直属の部下になってるメラゴースト達をバランへモシャスさせておびき出す。もっとも実力面でバランより弱いと思うから」
写し取れるのは姿だけだが、誘引するだけなら十分だろう。
「問題は実力の伴わない偽バランにダイ達が攻撃を仕掛けたりしないかって不安だけど、そこはおれ自身が足止めするなり分断させる形かな?」
「なるほどな、モシャスを使った分体を囮とするのか」
「そう、あの人呪文への耐性はそんなに強くなさそうだから、催眠呪文とかで眠らせてルーラで遠方まで運んでしまえばたぶん暫く戻ってこられないだろうし」
流石にルーラの使い手と言うこともないだろうから、戦っている間の時間くらいは稼げるだろう。
「それで、マイボって人はどうにかなるとして、後はダイ達だけど……割と手傷負ってたよね? 説得のためとは言え、手加減したままでまだ戦えそう?」
俺として気になるのは、そっちだった。原作では容赦なく殺す気で戦ったり記憶を奪ったりしたことでポップは一度死に、蘇生とパワーアップ効果のあるバランの血を飲んで蘇ってパワーアップを果たし、ダイも失った記憶を取り戻すと同時に拳に竜の騎士の力を一点集中する力を得、自身の力に耐えられないことでパプニカのナイフやヒュンケルの剣を壊しつつもバランに勝利した。死闘だったことでなした大幅なパワーアップが現状では望めないのだ。それどころか、中途半端に強化されたダイ達に手加減をするが故に追い込まれつつあった訳で。
「無論だ」
「そう。けど、このままってのもなあ」
成果が出なければハドラー辺りは騒ぐだろうし、大魔王も手ぬるいのではないかと責めてくることだってあるかもしれない。
「うーん、いっそのことパプニカでも強襲してとりあえずテランからダイ達を引きはがす、とかかな」
「何?」
「いや、ね。テランを守る組とパプニカを救援する組に勇者一行がわかれれば、戦力も半減するし、どっちかにはあのマイボって人もついてこなくなるからさ。マイボって人の居ない方をバランに担当してもらえばいいかなって。今思いついたんだけど」
よくよく考えると、このままではテランの勇者一行に本物ンケルまで合流してしまいかねない。
「って、あれ?」
「どうした?」
「いや、そう言えばさっきの戦いで本物のヒュンケルを見なかったな、ってね」
原作だと二回目のバランとの戦い前に合流していたヒュンケルだが、途中で引き返させたはずのヒュンケルがこのタイミングで合流していないのは時間的に見ておかしい。
「っ、まさか!」
思い出すのは、ハドラーが結局姿を見せなかったこと。もしや、ダイ達一行ではなく単独で動いているヒュンケルの方を狙いに行ったのだとしたら、合流できていないことに説明がつく。
「トゥース?」
「バラン、ごめん。ちょっと気になることができちゃって……モシャス!」
魔法力が心もとないなんて言ってられなかった。俺は鳥の魔物に変じると空へと飛び立つ。気のせいであってくれよと思いながらも。
「クエッ」
ただ、慌てるあまり少々の失念もあって。あっと声を漏らすかわりに口からは鳴き声が出て。
「ルーラッ」
呪文を唱えたのは、纏った闘気の方。向かう先は死の大地。ハドラーが独断で出撃したかどうかを確認するにも本拠地に瞬間移動呪文で飛んだ方が早く、捜索するにしても人手が居る。更に状況次第では悪魔の目玉を使うこともできるかもしれない。俺が行き先を変えたのは、それが理由だった。
次回、エピローグ「予期せぬ出会い(ヒュンケル視点)」に続くメラ。