ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「朝、か」
目が覚めると、窓の向こうの空が白み始めていた。クロコダインはダイ達と合流できただろうかとふいに思う。バルジ島でフレイザードとハドラーを倒し、残る軍団長はザボエラとミストバーン、そしてバランのみ。
「次は誰が差し向けられるか……そういえばバルジ島にバランは姿を見せなかったが――」
他の軍団長が勢ぞろいしていたのにもかかわらず姿を見せなかった超竜軍団長のことをオレは思い出す。魔王軍にあって尊敬できる二人の軍団長の一人であり、そして今は敵同士。いつ戦うことになってもおかしくはないだろう。
「まさかこんな風に思う日が来るとはな。いや」
あの時メラゴーストに負けて囚われの身となって居なければ、それより先にダイ達の仲間となったクロコダインと戦っていたかもしれないのだから今更か。
「クロコダイン……それに」
Aと名乗って居たメラゴースト。思い返すとあの二人にはずいぶん世話になったと思う。溶岩に沈む地底魔城から助け出されたこと、誤解による恨みから道を違っていたオレを正道に戻すべく話してくれたこと。
「あの借りもいつかは返さねばな」
共に大魔王と戦い続ける日々の中でか、大魔王を討って平和になった未来でかはわからない。ただ、オレは無言のまま壁に立てかけてあった鎧の魔剣をとると、部屋を後にする。これからも戦いは続く、腕を鈍らせるなど言語道断、より強くならなければならなかった。
「流石に早朝に村の者を起こすわけにはいかんしな」
本来なら、鎧を着こんだり大岩か何かを担いで走り込みをしたいところだったが、ここではそうもいかん、もっとも。
「団長、俺達不死族は良いですけど、大きな音を出されると赤ん坊が」
人と暮らすことの違いをそう言って再認識させてくれたのは、不死騎団時代の部下であるメラゴースト達だった。父と地底魔城で暮らしていたころは血肉をそなえた魔物も多数いたが、あの頃は師の弟子でもなく、ロープをくくりつけた岩を引きずりながら走るなどと言うこととも無縁だったのだ。ついでに言うなら、あの頃はこの鎧の魔剣もオレのもとにはなかった。
「ふむ」
ひとまず素振りと重量のあるモノを使わない運動で済ませて、音の出そうな修行はその後、周囲の地形を把握がてら村から少し離れたところで行うべきなのだろうな。
「始めるか」
空こそ白み始めてそれなりに経つが、村人が起き出してくる様子はまだない。オレは剣を抜くと、まずアバン流刀殺法の型を順に繰り出す。師をアバンを敵と思いつつ弟子として連れられていた昔も、谷川に落ちミストバーンに拾われた後も、ブラッディースクライドを編み出した後も、そして今も。これだけは変わらない。思いこそ別でも、これが剣士としてのオレの原点なのだ。
「アバン流刀殺法――」
ただ、流派のアバンを口にする時の気持ちこそ違えど、切っ先はブラさず。
「次だ」
型をおさらいするのは同じでも、そこから一歩進んで前方に仮想の敵を思い浮かべる。想像するのは、敵味方関係のない強者。あのメラゴーストであったり、ダイであったり、ハドラー、そして師であったり。
「くっ」
しかし、想像の中でモシャスを駆使し数多の姿をとるメラゴーストは中でもタチの悪い相手だった。モシャスと呪文を聞いただけでは何になるか想像がつかず、クロコダインに変化されたときはいつかのブレスを警戒し、後方に飛んだところを獣王痛恨撃の闘気で撃墜された。ならばと形のないモノを斬る海破斬でブレスごと斬ろうとしようものならあのブラッディースクライドさえしのいだ謎の防御で防がれ、カウンターに斧の一撃を喰らう羽目になる。
「想像だというのに」
本当に厄介な相手だ、つくづく思う。味方でいてくれる分には心強いが。
「味方でいる分?」
オレは何を考えて居るのか、あいつがアバンの使徒である弟弟子が敵に回ることなどないに決まっているというのに。
「いや、武術大会のようなものがあれば話は別か」
例えば、強力な武器を賞品にした武術大会であれば、ダイの武器を調達する名目でお互い気づかず選手登録していた場合、ぶつかることもあるかもしれん。もっともその場合、あいつは一つの姿を固定で戦わねばならんだろうが。
「あいつと全力で、か……面白いかもしれんな」
もしそんな時があったなら、今度こそ遅れはとらん。兄弟子としての小さな意地から胸中で漏らし。
「っ、誰だ!」
気配を感じて振り返ると、浮かび上がったのは頭の上に円柱をくくりつけた人間とでも言うべき奇妙なシルエット。
「悪ぃ、習練中ってとこか」
片手を上げて謝りつつ近寄ってきた男は、どたまかなづち使いのマイボと名乗ったのだった。
現れた謎のどたまかなづち使いマイボとは?!
次回、番外36「あの時の言葉(ホルキンス視点)」に続くメラ。