ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「ふああっ、ヒュンケル兄ちゃん、おはよう」
眠そうに目をこすりつつ起きてきたマイナンにオレはおはようと返した。マイボと一旦別れて戻ったマイナンの家も、こうしてマイナンが起き出してきたことで家人全員が起きてきたことになる。
「ヒュンケル兄ちゃんは朝早いね」
「ああ」
マイナンの声に応じつつ普通の子供からするとオレの起床は早いのだななどと不意に思う。もっとも、オレが比較対象にできそうなのは自分と弟弟子であるダイ達ぐらいなので、特殊な例過ぎて比較対象として不適当なのだろうが。
「今日は魔物を目撃したという場所に足を運ぶつもりだ。道案内する人間の都合がついたと早朝出会ったあの門番が教えてくれてな」
門番をしていた男ではなく件の魔物を見たという狩人が道案内をしてくれるらしいが、不案内な森の中を彷徨うことにはならなそうというのは実際ありがたい。
「へえ、そうなんだ」
「狩人にとっては魔物を刺激したり遭遇することを考慮してのことだとは言え、狩に出かけられない状況は問題だろうからな」
糧と収入を得る手段を断たれてしまっているのだ。そんな不本意ながらすることのない狩人がローテーションをしつつ今は昼夜村の入り口で見張りをしている様だが、このままでは死活問題になることはほかならぬ狩人たちが一番理解していたのだろう。案内はあちらから申し出てきたらしいが、裏を返せばそれだけ危機感を持っているということでもある。
「昼前には出発して夕暮れ前には成果の如何にかかわらず戻ってくる予定でいる。それまでは村の護りは残る狩人と隣村の助っ人が担ってくれる手はずになっている」
「隣村? ってことは」
「ああ、マイボと名乗って居た」
村人からすればあの男も自分たちよりはるかに強い存在で、オレとマイボの二人ともが村を離れるのはよろしくないと村人たちは、主に狩人たちは考えたらしい。
「マイボさんかあ」
「不満か?」
「ううん、そんなことはないけど」
ぼやいたマイナンはオレの問いに頭を振るが、そもそもマイボが留守を守ることになったのにも理由はある。相手は鳥の魔物らしいのだが、マイボに遠距離への攻撃手段はあの兜と一体化した武器を投げつけるか拾った石を投げるくらいしか持ち合わせていないらしいのだ。実のところ有効な攻撃手段に乏しいから遭遇の可能性の少なそうな防衛に割り振られた、そうオレは見ている。
「うーん、わかってるんだけどなぁ、こう……」
「ところで、座らないのか?」
「えっ、あ、うんちょっとお尻」
何か納得のいかない様子でブツブツ呟くまま食卓の椅子にも座らないマイナンの様子を不思議に思って尋ねれば、マイナンは驚いた様子でこっちを見てから慌てて手を振り。
「お尻?」
「っ、な、何でもないよ! 今日は立って朝ご飯を食べたい、そんな気分なだけ!」
「……そうか」
よくわからない気分ではあったが、必死な様子に追及はしない方が良いのだろうと見て、マイナンの家を出たのはそれから少し後、朝食と身支度を終えた後のことだった。
◇◆◇
「よっ、あんたが旅の剣士様かい。あっしはカシーヴ。もっぱら罠で獲物を捕らえる狩人でさあ」
案内役の狩人は、引き合わされるとそう名乗って軽く頭を下げた。
「あっしの罠はロープを使ったモノなんで燃えてる鳥の魔物相手じゃどうにもなんねえ、そう言う意味でもそのお力、期待してやすぜ」
「ああ」
頷きを返しつつちらりと見れば、なる程カシーヴと言う男はロープを束ねたモノとこのロープの切断などの単目的に使うと思われる大ぶりの山刀くらいしか装備しておらず、矢筒も弓も持ってはいなかった。
「それじゃ、出発しやしょうか。旅の剣士様を長々この村にお引止めする訳にゃいきやせんし、あっしらもこのまま猟に出られねえ日が続いちゃ飢えちまいやさあ」
「そうだな。解決できるなら早いに越したことはなかろう」
オレとしても早急に解決し、あのメラゴーストの分体を探しに戻るかダイ達の元に戻るかしたいところなのだから。
「ああ、先に言っておきやすが、森の中にゃあっしの仕掛けた罠がまだいくつか残ってやす。先に大まかな位置を伝えておきやすんで、モンスターとやり合ったとかであっしとはぐれた時はご注意くだせえ」
「わかった」
「とはいってもロープの罠なんで剣士様の剣ならスパッと斬っちまえばそれで終わりだと思いやすがね。戦闘中で、一秒の遅滞が命に係わるってこともあるかもしれやせんし」
言いつつカシーヴが明かした罠の位置は村の北側に集中していた。そもそも目撃地点の周囲がカシーヴの狩場だったらしい。
カシーヴの名前の由来は手ごわいシミュレーションのハンター、ではなく、他の狩人同様にカレンダーの企業名から来てます。(株式会社の「かぶし」をアナグラムしてもじったもの)
次回、番外39「森の中を(ヒュンケル視点)」に続くメラ。