ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「ちっ、こんなとこまで出てきてやがる」
宙づりにされたネズミの魔物を睨んでカシーヴが吐き捨てた。
「こんなとこまでと言うことは、普段はこの辺りには居ないのか?」
「へい。モンスターどもも最近凶暴にゃあなっちゃいますが、それでもあっしらが狩れる分は村に近寄らねえように駆除してますんで、数が減ったのか狂ったように凶暴になってても人間の怖さを理解できるようになったのか、この辺りで魔物を見ることはなかったはずなんでさぁ」
「なる程」
だが、件の魔物を刺激することを恐れて狩人が出歩かなくなったため、魔物たちが生息域を伸ばし始めたということだろう。
「もっとも、あっしの罠がそのまんま森の奥の方にしかけたまんまだったのは怪我の功名でさあ。あいつがかかってなかったら遭遇するまで気づかなかったかもしれやせん」
「ふむ、それでこの辺りに出そうな魔物はあれ以外に何が居る?」
「あれ以外ですかい? 手足の生えたでっけえキノコ、オレンジ色のスライムみたいなやつに鳥と水牛を足して割ったみたいなやつと、ああ、サソリと蜂を混ぜたような虫の魔物もいやすぜ」
虫の奴はもっと森の奥の方にしか出ないとも捕捉しつつカシーヴは語り。
「ならばここからはその魔物にも備えていかねばならんな」
遭遇戦をさらに警戒しオレたちが森を進めば、警戒しておいて正解だったというべきだろう。
「ぴぎっ」
茂みから飛び出してきたカシーヴの言うところのオレンジ色のスライムみたいなやつが両断されて地面に転がる。
「スライムベスだな。ロープに引っ掛かるような身体の構造をしてないこいつは罠にはかかりようもないか」
もっとも、その程度の魔物であればカシーヴも山刀を武器に倒してしまえるのだろう。一瞥したカシーヴに動じた様子はなく。
「そこか、海破斬ッ!」
気配を感じて剣を振るえば、断ち切れた茂みから真っ二つになったお化けキノコが現れ、倒れ伏す。
「この短時間に二匹か」
「すいやせん。たぶん、この近くにあるあっしの罠が原因でさあね、たぶん何かの魔物がかかってて、鳴き声につられて魔物が集まってきてんだと思いやす」
「ふむ」
そう言う意味では最初のネズミの魔物のところも同じような状況になっていたこともありえたということか。そのままオレ達は森を進み。
「ふんっ」
「ブモア」
「あ、剣士様ちょっといいですかい?」
どうと突っ込んできた暴れうしどりを斬り捨てたところでカシーヴがオレを呼び止めた。
「どうした?」
「へい、この魔物なんですがね、こいつを木に吊るして血抜きをしてぇんでさあ」
「血抜きと言うことは、食うのか?」
「ここんとこ獲物を持ち帰れてねえんで、それも出来たらしてえとこではありやすが、一番の狙いはそっちじゃありやせん。こいつを餌にあの鳥の魔物をおびき出せないかと思いやして」
なんでもカシーヴは他の鳥の魔物を追いかけていたところも目にしたらしく、肉食なら木に吊るした暴れうしどりの死体に寄ってくるのではないかと思ったらしい。
「しかし、それは魔物を刺激することにならないか?」
「懸念はごもっとも。ですんで、吊るすのはここじゃなくてあっしが問題の魔物を目撃した場所にするつもりでさあ」
「そうか。だが、その目撃地点は近いのか? この死体、相応に重さはあるぞ?」
一応納得してオレがもはやピクリともしない暴れうしどりに目を落とせば、カシーヴは問題ありやせんと自分の胸を拳で叩いた。
「こう見えて腕力にゃ自信がありやす。そもそも仕留めた獲物を持ち帰るところまでが狩人ですぜ。流石に二頭三頭となりゃお手上げ、剣士様にもおすがりしたかもしれやせんがね、一頭ならっ、ぐ、うぐぐ、よっと」
ざっとこんなもんでさあね、と身体を暴れうしどりの下に潜り込ませたカシーヴは背負う様にもちあげて見せ。
「さ、剣士……様。いき……やしょう」
「ああ。無理はするなよ」
「へいっ……大、丈夫でさあ」
軽々とと言う訳ではないものの、時々言葉を途切れさせつつも歩き出したカシーヴと共にオレは更に森の深くへ足を踏み入れるのだった
次回、番外40「モンスター現れず」に続くメラ。